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第八話 狂い咲き(二パーセント) ※視点混合



「……」


「ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」


「あぼぎゃん鳥銃。みーみーむぃーみみみみみみみみみみっみ」


「……これはいったいどういう事だ……?」



 ふむ。倫太郎曰くこの大層な建物は人間の王の所有物で、目の前の女はローザというらしいな。

どうやら、倫太郎はこのローザという女にアウレという女を治療させたいようじゃ。



「……ローザ、じゃな?」


「……いかにも、私はローザだがそちらは? 初めて見る顔だが」


「こめこめミラーバトン。合いびき肉を青く粉砕」


「途中で、こやつ……勇者に助けられての。それでここまでな」



 ふむふむ、ローザは魔術師とな。林太郎もローザの魔術かかった時にはとても驚いたそうじゃ。

こんな事を目の前で堂々と言っても、ローザ本人に分からないならば都合がよい。

そして、ローザはアウレを見たの。



「……ところで、聖女様はどうしてこのように?」


「ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」


「メルヘンチックなナイスガイ。ロマンとラブと、ドックン満足」


「……戦いのさなかに、このようになった。勇者は、その聖女を治してほしいようじゃの」



 なんじゃ、このアウレとかいう女は聖女というものなのかの。

そうわしが言い切った時に、ローザは訝し気にこちらを見よった。

お? なんじゃ? やる気かの?



「……貴方は、どなたか存じないが勇者殿の言葉が分かるのか?」


「……大体(・・)は、の。そんな事より聖女は治せるかの?」


「ひろしのペペロンチーノ」



 そう聞くと、ローザはアウレの体を触り始めよった。

触った手からは薄い光と魔力が漏れておる。恐らく何らかの魔術じゃろう。



「簡単な精神退行だ。催眠と混ぜればすぐ治る。……何があったのか、伺っても?」


「びびで、ばびで、ストッキングの衣にあまみそベースのアメンバーロビー」


「……あー、治った本人から聞いた方が分かりやすいと思うぞ。わしはな」


「……? 分かった。ではすぐにとりかかろうか」



 そう言ってローザはアウレを運んでいったのじゃ。

少し重そうに運んでいったの。力が足りんのか?




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆視点変更◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「……落ち着かれたか、聖女レイラ」


「…………はい…………」


「何があったのか、事情を話してはくれるだろうか?」


「…………………」



 気が付いたら私は、ベッドに寝かされていました。

部屋には私とローザさんしかおらず、どうやら手当をしてくれたのはローザさんのようですね。

一先ずはお礼を言わなくては……



「あの、ありがとうございます。ローザさん」


「礼には及ばない。しかし、何があなたをあんな風にさせたのか、それが気になる。

一体何があったんだ?」



 ……あの森での事を言ってしまってもいいでしょうか。

信じてくれるかどうかも変な話ですしね……星を落とすなんて聞いた事無いですし。

そんな魔術の話だって……



「……」


「いや、言いづらいならあえては聞くまい。しかし、もう一つ聞きたい事がある」


「……? 一体何でしょう?」


「その、こちらも聞きにくいのだが……聖女殿は、その、体型が変わっていないか?

主に、その、胸当たりが……」


「!!」



 その言葉を聞いてすぐさま目を胸へと向けます。

……戻ってない……。ああ、治してくれなかったんだあの人……。



「……こ、これは、ですね……えっと、その、勇者さんが、えっと」


「な、何!? 勇者がそのような事を!?」


「あ、で、でも私が言い出した事で……」


「何!? 聖女殿も、やはり胸の大きさが気になるのか!?」


「え? い、いえ! 違います! 私は、その、ただ魔術を使ってほしいとお願いしただけで

こんな風になるなんて知らなくって……」


「……なるほど、なるほどなるほど」



 そこまで話を聞くと、ローザさんは何か考え事を始めました。

考えがまとまるまでは黙っているつもりでしたが、あまりに長く考えていたのでつい私もしびれを切らしてしまいました。



「あの、ローザさん?」


「!! あ、ああすまない、聖女殿。もし体調が優れないようならば、しばらくここにいるといい。

勇者殿には私から伝えておく」


「い、いえいえ。大丈夫です。なので勇者さんの所に連れて行ってください。お願いします」


「……ただ今回の一件はまだ国王陛下、つまりあなたの御父上には既に話が届いている。旅の続行は、果たしてお許しになるかどうか……」



 そう言ってローザさんは視線を下に落とします。

ああ、私の事を考えていてくださったのですか……申し訳ないようなありがたいような。

でも、私とて女神の端くれ。勇者さんが旅を続けるのならそれをサポートしなくてはいけません。



「……分かりました。お父様には私から話をしておきます。まずは報告に行きますのでその後こちらで合流という事で」


「分かった。ではそのように」



 そうして私とローザさんは部屋の外へと足を運びました。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆視点変更◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「勇者殿、少しいいだろうか?」


「ぶべぶべ、ごんぼ。今日のミラクルゥゥウウウ!! ルルルッルルルルルッルルルル、ちにぃ!」


「聖女殿は、特に問題なく無事に済んだ。彼女はその後今回の一件を国王陛下に報告に向かわれたから少し遅れる。だが、その前に確かめたい事があってな……」


 アウレを届けた後、わしらの元にローザが来よった。

わしは喉元の首輪(・・・・・)を撫でつつ、ローザに文句を言うてやった。



「そうじゃの、その前にわしも確かめたい事がある。……この首輪はなんなんじゃ? のう、ローザ」


「それは……! 使い魔の証! という事はあなたは魔物……?」


「そうじゃ。さっきそのように言うて、ちょっと首だけ竜にしてみたら首輪をつけられてしもうた。全く取れやせんし、これをつけてからちょくちょく身体が痺れよる。なんじゃこれは」


「……それは、魔物を捕えておくために使う首輪だ。見たところ、主人は勇者殿になっているが……

それと、痺れるのはあなたが勇者の意志に背く行動を行った場合に起こるものだ。何らかの行動が問題があったのだろう」


「なんじゃと?」



 この首輪はそんなものじゃったか……くそう、着けるのを許すでなかった……。



「挙句、こや……勇者はわしを捕えた事を人間の王に褒められとったぞ。なんと気分の良くない……」


「それは……ご愁傷さまとしか言えないな。だが分かってくれ、貴方の力は周りにとっては脅威に映る。ゆえに」


「あー分かっておる分かっておる。……それで、ローザは勇者に何の用事じゃ?」



 そこまで聞くと、ローザは顔を赤くして目を下げよった。

なんじゃ? 勇者に惚れでもしたのかの?



「い、いや、その、勇者殿に確かめたい事があってな?」


「シバかれ気味のモールス信号?」


「なんじゃ、と言っておるの」


「まずは、聖女の身に起こった事なのだが……」


「なんじゃ、本人から聞けばよかろうに。断られでもしたのかの?」


「それはそうだが、それ以外にも……と、とにかく勇者殿と二人で話がしたいんだが……」


「?」


「こや……勇者も理解しておらんようじゃぞ。何の用事かはっきり伝えい。なーに、聞かれとうないならわしは耳でも塞いでいよう」



 そう言って、わしは耳を塞いで後ろを向く。

……ククク、わしは人より耳が良い。ひそひそ話であっても問題なく聞こえるわい……残念じゃったの。

そんな事も知らぬ二人は、一応、物陰に行って話をし始めたの。



「……それでは勇者殿、少しよろしいか?」


「みんなで輪になって虐殺マンボ」


「何故聖女殿があのような感じになられたのか、心当たりは?」


「……すごく、こわいものを、見たから」


「……喋れたのか……その、怖いものとは?」


「多分、あすこにいる竜だと、思うなぁ。ぼかぁ」



 違う! わしじゃのうてあれは落ちてくる星を見たからじゃ!

……と言うてやりたくとも、わしは今は聞こえてないはずじゃからの。

ぐっと飲みこむしかあるまい。



「なるほど、そうだったのか……これからは勇者殿が彼女の主人だ。しっかり手綱を引いてやるんだぞ」


「おぃえっさー」



 ふふふ、そう簡単にこのわしを御しきれると思うなよ? わしはなんせ、湖の守り神ともてはやされて四百年生きた水竜……あ、痺れる痺れる! 今はやらんでいいんじゃぞ!! や、やめんか!



「そ、それと実は……もう一つ用件があってな」


「チクリストーゥライク! あい御中?」


「……実は、聖女殿にかけた魔術を私にもかけてほしいのだが……」


「きみと二人で心躍り血沸き肉躍る椅子取りゲーム?」


「も、もちろんただとは言わない。それなりの報酬を用意しよう。何、こう見えても伝手はいくらでもある。ある程度のものまでなら、用意させてもらおう」


「……」



 ……ほうほう、なるほどの。あやつは聖女に何か魔術をかけておったのか。

そういえば、戦の途中もなんぞ抜かしておったの。胸がどうとかの。

乳でも出るようにしたいのかの?



「どうか、お願いできないだろうか」


「盾」


「……? 盾?」


「盾。大盾。魔法の盾。最高の盾。殴っても落としても酸の中にぶっこんでも何されても壊れない大盾が欲しい」


「む、むぅ。それは難しいな……………そういえば、勇者殿は盾は作られないのか? 懇意にしている鍛冶師はいないのか? もしよければそちらの紹介か、素材の提供ならば……」


「…………!」



 ローザの言葉を半ばまで聞いたこやつは、手元に魔力を集め出したの。

なんじゃ、また星でも落とす気か? この気狂いは。



「……! こ、これは……!!」



 今回はどうやら違うようじゃの。

目を見張るローザの前で、こやつは魔力を集めた手から魔力をゆっくりと解き放ったのじゃ。

すると、魔力の奔流は緑色の光を成して大きな板を形作ったの。

そのまま、しばらくして光が消え去るとそこには先ほどの光がそのまま壁になったかのような大きな緑色の盾が出来上がっとった。



「……! 物質に直接影響する魔術とは……そんな高等なものを事前準備無しで……」


「ありがとう、ローザさん。この恩は決して忘れません。なんでしたっけ? 聖女さんにかけた魔術をかけてほしいんですよね?」


「え? あ、ああ。うん」


「でしたら別室へ。ここでは場所が悪い。出来る事なら、もう一つサイズの大きい服を着てから来る事をお勧めしますよ」


「あ、ああ。すまない、恩に着る」



 そう言いながら二人は別室へと向かったの。

結局、わしはこの後アウレが来るまで一人待ちぼうけを食らっとったというわけじゃの。

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