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第七話 壊れちゃった女神の気持ち(当社比)



「……!」



 その竜を見て、私は気づきます。

この竜こそが、今回の討伐対象である事に。

確か、任務を記した紙にそんな事が書いてあったような……



「生理的にご法度。愛した人は三年前のロース?」



 倫太郎さんはそう言いながらも盾を構えます。

……多分、盾より魔術で攻めた方が良いと思うんですけど。



「ふん、己惚れるな、人間。お主らなぞ早々に片づけるのみよ」



 対する竜も私達を見て、形だけ構えました。

恐らく、本気ではないのでしょう。となれば……



「倫太郎さん。まずは、あの竜を何とかしましょう。そして胸戻してください」


「前者は承認。後者はあなたのクリアランスでは実行する権限がありません」


「もう! 大きい胸の何がいいんですか! 最っ低!」



 そう言うと同時に動いたのは竜の方でした。竜はその長い尾をこちらに向かって叩きつけてきます。

それを、それぞれ左右に跳んで私たちは躱します。



「大体、あたいのこと、あなた信じてくれなかったじゃない! 魔術使えるって! 言ったのに!」


「え!? いきなり何でオネェ口調なんですか!?」


「だからそれは罪の証よ! あたいの愛と憎しみ、受け取るがいいわ! べゃ!」


「そんな! 理不尽極まりないですよ!」


「ごちゃごちゃ騒がしい!」



 躱しながらの会話に腹を立てた竜は、今度は地面を薙ぎ払うように尾を振るいます。

私は何とか躱せましたが、倫太郎さんは躱しきれずに盾で受け止めたようです。



「ピィメ!」



 しかし、衝撃までは殺しきれなかったようで、倫太郎さんは弾き飛ばされ、そのまま倫太郎さんは手前の木に叩きつけられてしまいました。



「っ! 倫太郎さん!」


「まずは一匹」



 私が急いで駆け寄ると、倫太郎さんの息はありました。

怪我も、あんな強く叩きつけられたのに全く傷ついていません。

 しかし、倫太郎さんは両手をついて俯き、肩を震わせています。

ま、まさか内臓にダメージが……!?



「ぼ、ぼくの……」


「だ、大丈夫ですか? 痛くないですか?」


「ぼ、ぼくの……」


「倫太郎さん! しっかりしてください!」


「良いぞ、別れの時間くらいはくれてやる。死ぬまで側にいると良い」



 竜はそう言ってこちらをただ見ているだけです。

これはチャンスではありますが、倫太郎さんが死んでしまっては……!!

急いで回復しようと杖を握りしめますが、突然倫太郎さんが立ち上がって叫びました。



「ぼ、僕の、無敵の盾がァアアアアアア!!」


「……はい?」



 よく見ると、倫太郎さんの傍らには真っ二つに折れ曲がった大盾がありました。

ああ、エンチャントしても耐えきれなかったんですね……心配して損しました。



「ぼ、僕の……盾が……」


「倫太郎さん……」


「盾の一つ如き壊されただけで、何と騒々しい。やはり、人間とは分かり合えんな」


「う、うぅ……」



 倫太郎さんはふらふらと立ち上がりながら、無事だったもう片方の盾をしっかりと抱えて竜の前へと歩いていきます。

な、何をする気なんでしょう……



「……」


「ふん、恨むのなら我が聖域に入ってきた己が愚かさをうら」


「みんなきえてなくなれ~!!!」



 倫太郎さんは竜の言葉を遮り、両の手を広げてそう叫びます。

すると、



「!?」


「ッ! な、何じゃこの魔力は……!?」



 倫太郎さんの身体から大量の魔力が放出され、その魔力の奔流で辺りに凄まじい風が巻き起こります。

い、一体何を……!!



「ちょわぁあああああああああ!!」



 倫太郎さんの叫びに合わせて次第に魔力が収束していきます。

あ、あんな膨大な魔力……! ま、まさか、さっきと一緒の爆発!?

ま、まずいですよ!



「きぃぇええええええええええええええ!!!」



 倫太郎さんの叫びが最高潮になると同時に、倫太郎さんを中心として光のドームが広がり始めました。

そしてその光は、森を覆いつくし――――――



「……」


「……」


「……」


「……?」


「……??」


「……」


「……あ、あれ?」



――――――何も、起きていませんでした。



「……ハッタリ?」


「……い、いやはや、驚かせおって。いったい何事かと……!!」



 竜も一瞬安堵していたようですが、何かに気付いたように上空を見上げます。



「……! こ、これは……!」


「オ~ッシマイッ↑! お~っしまいっ↓! oh,shimai↑!」


「な、何という事じゃ! おいそこの女!」


「!?」



 安堵している私に、突如竜が話しかけてきます。

その様子は非常に慌てており、何やら必死そうです。



「何をしている!? どうする気だ!? 相方を鎮めろ!」


「え? な、私?」


「あやつ、星を落としおった! あんなものがここまで落ちてきてはこの星はおしまいじゃ!」


「え、えぇ!?」



 私は竜の言葉を聞いて半信半疑で私の魔術を使います。

通称『千里眼』と呼ばれる魔術の一種で、その魔術ははるか遠くを見通すのに使われます。

この魔術を用いて、先ほど竜が見ていた方向に目をやります。

……あ、なんか見えてきましたよ。これは……天体、ですねぇ……

あ~、なるほど。この向きなら確かにこの星に来ますね。

大きさも、ざっとこの星の五倍くらいはありますから、ぶつかったらこの星は跡形もなくなるでしょうね。

はっはっはっはっはっは…………














はぁああああああああああああ!?!!?!?!?!!?!?!?!



「見えたか!? 分かったか!? 早くその男になんとかさせよ!」


「そ、そんなぁ! り、倫太郎さん!」


「この世はね、地獄なんですよ」


「そんな事言わないでくださいよ! ほ、星を落としたんですか!? ほんとにアレを!?」


「おほしさまってしってる? あまぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!」


「えぇぇぇえええええええ!? ど、どうしよう、どうしよう!!」



 こ、このままこの星に天体(あんなもの)が落ちてきたりしたら、この星はなくなっちゃいます!

あ、でもそれならこの世界を救わなくても済むか……! い、いえ! 何を考えてるんですか私は! いいわけありません!

なんとかあの星を止めなきゃ! でも、星を止めるほどの魔術も魔力も……



「しかもあの星、とんでもないほどの魔力で強化されておる……あんなもの、星型の魔弾と同じじゃぞ……!!」


「えぇ!?」


「あの星を防ぐ事はおろか、軌道を曲げる事も、わしでは無理じゃ……」


「えぇぇぇぇええええええ!?」



 嘘だぁ! こんなところで、(そんな)理由で!? この星ごと!? おしまい!?

あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!! 嘘でしょ!? ねぇ!?

これじゃあ、本当に勇者じゃなくて、ただの狂人じゃないですかぁ!!! ねぇ!?!?



「ぷぅあぅぷぷんぷん」


「戻しましょうよ! ねぇ!? 倫太郎さん!! このままじゃこの星無くなっちゃいます!」


「胸は戻さんと言うとるきに」


「もう胸はいいですからぁ! 早く、早く星を……!!」



 焦る私が空を見上げると、うっすらと空に何か見えました。見えてほしくないものが……!!

あ、ああ、今はまだ遠いせいかうっすらですけど、もう見えてきましたよ! 星が! 星が!

空に! ああ、空に!



「ああああああああああああ!!! もうおしまいなんだぁああああああああああ!!!」


「脱糞かな?」


「な、なんて事じゃ……触れてはならぬ者に、触れてしまったのか……わしは……」


「あああああああああああああああああああああ!!!!」


「脱糞だよね?」


「倫太郎さぁぁああああああああああああああああん! なんとかしてぇえええええええええええ!!」



 確かに、徐々に、星はその輪郭がはっきりしてきます。

ああ、近づいてる! 確実に近づいてるよぉ! おしまいだぁ! この星は滅ぶんだぁ!

こんな変な人連れて来たせいで、この星は終わっちゃうんだぁ!



「もう、しょうがないなぁ女神ちゃんはぁ」



 倫太郎さんは突然立ち上がりました。

しかしそんな事知りません。知りません! もう、この世はおしまいなんです!



「空中用ひらりカプセル!」



 倫太郎さんがそう言って空に手を掲げます。

何気なくそれを私は目で追っていました。すると――――――



「!?」



 ゴウッと凄まじい魔力の波がまたもや空気を揺らします。

それと同時に、先ほどまで落ちてこようとしていた星が、まるで時間が巻き戻るかのようにゆっくりと宇宙へと帰っていきます。



「アサバダァ」


「……………………………………」


「な、なんと……」



 次第に星は小さく見えなくなっていき、最後は何事も無かったかのような青空へと戻りました。

呆気にとられる私に、倫太郎さんは呼び掛けてきます。



「おもらし、いくない」


「……?」


「またぐらみてちょ」


「……」



 倫太郎さんが指さしたところを見てみます。

あ、なんだか濡れてるせいで分かりづらいですけど、なんか湯気が立ってますね。

……………………あ、あははは、ははは、は、

もうね、つかれた。もういやなのね。わたし。

もういや。いやなの。しらない、し~らない!

あははは、あははあはははあははははあははは!



「ぽっぷんきゃんでぃ? ……あ~、シュールストレミング?」


「あ、はは……はは……」


「……男、悪いが貴様にわしは関わる気はない。早々に立ち去ってはくれまいか?」


「おっけ~。んぇん」



 りんたろうさんはわたしをかつぎました。

わぁ、からだがういてる! かつがれてるもんね、とうぜんだね!

まるでおそらをとんでるみたい!



「ミントdeバックレ。投稿日前日に」


「……何? わしを討伐? ……好きにせよ。お前がいる世界で安心なぞ有り得んだろうて」


「もももももももももももももももも」


「……殺す気はない? それより、彼女を運ぶのを手伝ってほしい? ……よかろう、もとよりお主がその気になれば無くなる命。好きにせよ」



 すると、りゅうはピカーってひかって、ひとになっちゃいました!

きれいなおんなのひとですね! あおいかみが、まるでおそらのいろみたい!



「回避モーション激寒。あと二歩で五円引き」


「……なるほど、この女を担げと。……何? わしか? メスじゃからな。そうなるじゃろ?」


「モーレツゥ! マイマイカブリのお世話したい」


「……服を着ろ? 目の毒? とはいえ着るものなど持ってはおらん。お主の何かを貸してくれ」


「オッケ~。んぃん」



 そういって、りんたろうさんはてからふくをだしました。

わぁ! まじゅつですね! すごいですね! なんでもつくれちゃうんでしょうね!

りんたろうさんはまじゅつの、てん・さい、ですからね!



「……そんな事も出来るのか……」


「今は昔、イッツァパーティータイムというものありけり」


「……よし、では着たぞ。参ろうか」


「おっけ。んぅん」



 おふたりがたは、まっすぐともりをぬけました!

ぬけたよ! ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい!!

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