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無能コンクエスト〜無能と呼ばれた男が世界を征服します〜  作者: 秋月玉
三章(上) ミッテミルガン共和国編
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第78話 舞


 山の中腹あたりに洞窟があり、そこが盗賊団のアジトだった。

 

「ここでいいんだな」


「はい!そうです!ちゃんと教えたんだから見逃してもらえるんだよな」


「それはあの洞窟が罠じゃないことが確認出来てからだ」


「嘘じゃねぇよ!」


 フィーアが捕らえた男盗賊は叫ぶように続けた。

 これが演技であの洞窟の中が罠で仲間に知らせるために叫んでいるとしたら大した演技力だ。


「フィーア、念のためにそいつを盾にしてお前が先頭を歩け」


「かしこまりました」


 フィーアを先頭にアインスが続き、最後尾は俺と人形にした女だ。

 ツヴァイとドライは馬車の見張りだ。


 それで人形にしたこいつの名前だが、名前を名乗っていた気がするが、覚える気が無かったので忘れてしまった。

 人形一号でいいだろ。


 男盗賊によると、アジトの中には数人だけだ。

 リーダーはさっき襲って来た中にいたようでもう死んでしまった。

 

 男盗賊は絶対に俺に抵抗など出来ないと知っている。

 だから俺の命令に従うしかないんだ。

 俺の言う通りにならないなら死ぬしか選択肢がないからだ。


 結果から言うと、男盗賊の言葉は真実のみで嘘はなかった。

 約束通りちゃんと逃してやった。

 ただ、アジトにいた奴等は全員殺したけどな。

 襲いかかってきたんだ。

 当然の結果だな。


「アマル!」


「カーサ!生きてたのね。主様とターナは?」


「ラホシ様とターナも問題なく生きてるわ」


 人形一号は仲間と抱き合いながらお互いが生きていた喜びを分かち合っていた。


 カーサと呼ばれた女は頭から小さな曲がった角が生えていた。多分山羊の獣人だ。

 人形一号よりも背が高く、体は引き締まっているが、筋肉質ということはなく、美人アスリートという感じだ。

 セミロングの黄色の髪に吊り上がった鋭い目が見た人を冷たく怖がらせるようだ。

 胸は人形一号よりかは大きいが特に目立ってはいない。 

 フィーアの劣化版だな。


「そちらの人達は?」


「私達を盗賊から助けてくれた人達よ。今は……私の新しい主よ」


「あたらしいって……あんた!自分が何した分かってるの!一緒に誓ったラホシ様への忠誠はどこへ行ったのよ!」


「分かってるわ……でも、仕方なかったのよ。そうしていなかったら……」


「そいつは自分とお前らを助けるために俺のモノになったんだ。あの状況じゃあ賢い選択だったと思うぜ」


「貴方は?」


「失礼な奴だな。人に名前を聞く時は自分から名乗るのが礼儀だと教わらなかったのか?」


「貴方が名乗ったら教えてあげるわ」


「じゃあいい、特に覚える気もなかったからな」


「はぁ⁉︎」


「このお方はゼント様といって私の新しい主様です」


 人形一号が焦って俺と失礼女の間に入った。

 俺がこの失礼女を殺してしまわないか不安だったのだろう。

 約束がなければそうしてた可能性はあった。


「そしてこいつが俺の玩具で人形一号だ」


 俺は人形一号を指差した。


「玩具?人形?あなたは何を言っているの?」


 失礼女は俺の言葉が理解出来ないようだ。

 バカなんだなと思った。


「アマルはあなたの奴隷になったということ?」


「こいつに俺の奴隷になる価値なんてない。だから人形なんだよ失礼女」


「…………」


 失礼女は数歩後ろに下がった。

 その目は理解出来ないものを見るような目で言葉も出ないようだった。


「ご主人様。奥のからその人達の仲間を連れて参りました」


 アインスとフィーアが二人の少女を連れて来た。


 一人はドライの同じくらいの年齢で失礼女と同じ黄色く長い髪で顔を幼くしたような感じだ。

 多分失礼女の妹なんだろ。可哀想にな。


 もう一人は高級そうな和服を着た長い黒髪の少女だ。

 顔からして俺と同じくらいの年齢だろうが、身長は155cmぐらいで小さい。

 髪は黒色で腰まで届くほどに伸ばしていて、先の方で一つにまとめている。

 胸は服の構造上目立たないようになっているせいで分かりづらいが、大きいというは分かる。

 異世界に来て俺以外の黒髪に会うのは初めてだし、和服がこの世界にあるなんて知らなかった。

 

 黒髪女が姿を表すと、人形一号と失礼女は跪いて頭を垂れた。


「皆さん無事でなによりです。それとそちらの御人も我等をお救い頂きありがとうございます」


 黒髪女は言葉こそ礼儀正しいが、雰囲気的に偉い奴なんだと伝わってくる。


「おう、俺がわざわざ救ってやったんだ。ありがたく思え」


 ならば魔王として俺も負けてはいられない。

 

「貴方ね!このお方を誰だと思って」


「いい加減にしなさい!魔王様に救っていただいたモノの分際で礼の一言も言わずに失礼な態度ばかり……殺しますよ」


「アインスの言う通りだわ。その恩義の重さも分からないのであれば、命を持って償う必要があるわね」


 アインスとフィーアの我慢の限界がきてしまった。

 この失礼女も俺の玩具になるから我慢していたんだろうが、自分より下の存在が魔王である俺に対して失礼を犯したことに怒っているのだろう。


 アインスもついに殺すと直接的に言うようになって俺は嬉しかった。


「まおう?まさか、オーストセレスに現れたという魔王なの?王女が国を乗っ取るためについた嘘かと思っていたけど……」


「その目でしかと見なさい!このお方こそこの世界を高天の世界へと導く存在である魔王ゼント様です!」


 フィーアがキメ顔で言った。

 隣のアインスが悔しそうな顔をしていた。

 本当は自分が言いたかったんだろう。


 面倒事は嫌だから魔王というのは秘密にしろと言っておいたんだがな。

 後でお仕置きしてやろう。


 フィーアまで高天の世界とか言い出した。

 フィンフに何か吹き込まれたのか?


「魔王……それはちょうど良かったわ。ラホシ様!今こそ先祖から受け継いだ力を使う時です!」


 失礼女は両手をいっぱいに広げて勝ち誇ったような顔をしていた。


「この黒髪女の先祖が何だってんだ?」


「聞いて驚くがいいわ!ラホシ様こそ600年以上前に現れたという魔王を倒した勇者の末裔なのです!」


 へぇー、それは驚いた。

 俺の鑑定スキルだとレベルはアインスよりも低いんだがな。

 勇者しか持てない特別な能力があるのかもな。

 警戒しておくか。


「カーサ」


「ラホシ様!さあ!この魔王を名乗る悪人に勇者の力を見せてやりましょう」


「何度も言っているでしょう。私にそんな力はありません」


「ですが、私を助けていただいたときに奇跡のような力を奮ったではないですか」


「あれは偶然が重なっただけです。ただ運が良かった。それだけです」


「そんな……わたしは……」


「カーサの忠誠は嬉しく思っています。ですが、私にはそれに応えるだけの力はありません」


「…………」


 失礼女は膝から崩れ落ち、先程の勝ち誇った顔は消え失せ、絶望の顔へと変わった。


 何なんだこの茶番劇は?


「私の臣下が大変失礼を致しました。私に出来ることでしたら何でも致します。どうかお許しいただけないでしょうか?」


 黒髪女は土下座の姿勢をとった。

 こいつがどんな立場の人間かなんて知ったことではないが、部下のために頭を下げられることに感心した。


 だが、


「いやだな。俺だけでなく俺の奴隷達も怒らせたんだ。こいつは殺す」


「どうか……どうか平にご容赦を」


 黒髪女は頭をさらに深く地面に擦り付けた。


 人形一号と失礼女の妹も並んで土下座した。


「ゼント様。私からもお願いします。またどんな命令でも致します。ですからどうかお見逃し下さい」


「お願いします。おねえちゃんを殺さないでください」


 俺は人形一号の頭を指を突き立てた。


「お前はまだ自分の立場が理解出来ていないようだな。お前が俺の命令に従うのは当たり前なんだよ。それでお前の願いを聞く代償にはならない」


 俺は横に移動して黒髪女の前に立った。


「お前の願いを叶える方法があると言ったらどうする?」


「それは何でしょうか?無力な私に出来ることなら何でも致します」


「なんでもね……それはお前も俺の人形になって俺を楽しませることだ」


「人形とは、奴隷ではなく別の扱いということでゼント様の物になるということでしょうか?」


「お前はそこの人形一号と違って頭が良いな」


「ありがとうございます。それで人形として私は何をすれば良いのでしょうか?」


「その方法は人形一号が知っている。教えてもらえ。人形一号よりも俺を楽しませることが出来たらお前の願いを叶えてやるよ」


 俺は振り返るとアインスとフィーアにアジトにある金品を集めてツヴァイとドライが待つ馬車に戻れと指示を出した。


 これから少し時間がかかるだろうし、アインスとフィーアが見ても楽しくないだろうからな。


「えぇ⁉︎」


 黒髪女の高い声が聞こえた。

 人形一号からどうすればいいか聞いたか。

 さあ、人形一号よりもスタイルに自信がありそうな黒髪女はどんな姿を俺に魅せてくれるかな。


 黒髪女は服に手を掛けるが動かない。


「別にやらなくてもいいんだぞ。その時は失礼女を殺すだけだ。俺はどっちでもいい」


 黒髪女を歯を食いしばって服を脱いでいく。

 

「手を出すな」


 人形一号と失礼女の妹が手伝おうとしが、そうはさせない。

 こういうのは一人でやらせるから面白いんだ。

 人形一号に命令して失礼女とその妹を連れて馬車に戻らした。 


 時間が掛かったがついに黒髪女が白い下着姿になった。

 異世界の下着は前世よりも色気が落ちるが、黒髪女は清純な雰囲気があって色気があった。

 よく言うつい守ってあげたくなる女だ。

 あげたくなるだけで、実際に守るかどうかは分からないがな。


「どうした?人形一号から聞いているんだろ。早くしろ」


 黒髪女は覚悟を決めて一気に全ての衣服を脱いで裸になった。

 足元は凸凹しているので靴だけは許した。

 

 俺は肌を晒した黒髪女の体をまじまじと見た。


 穢れを知らない透き通るような白い肌。

 シミなんて一つも見つからない。 

 予想通り着痩せするタイプで細い腕では隠しきれない程の巨乳の持ち主だ。

 腰とお尻と足は細い。

 その分胸部がより際立っていた。

 ツヴァイと似たような体型だが、胸の大きさはツヴァイより小さいがフィーアよりも大きい。 

 これは期待出来そうだ。


「綺麗な体じゃないか」


 黒髪女はしゃがんで小さくなってしまい顔は耳まで真っ赤だ。


「服を脱いだだけで俺を楽しませられると思うなよ。何をすればいいか分かるだろ」


 黒髪女はゆっくり立ち上がると、人形一号のように踊り始めた。


 人形一号の盆踊りみたいなものとは違う舞というのが正しいかもしれない。

 両手には何も持っていないし、飾り付けもない。

 だが、黒髪女の周りが輝いているように見える。

 体に似合っていない大きな胸が揺れているが、卑猥ということはなく、美しかった。

 羞恥心が完全に消えているわけではなさそうだが、舞に集中にして自分だけの世界に入っているようだ。

 普通の男がこの舞を見たら惚れてしまうだろう。

 そう思うぐらい綺麗だった。

 

 七分ぐらい経って舞が終了した。

 けっこう長い時間やっていて、体力的にも精神的にも疲れてそうだ。


「どう、でしたでしょうか?古くから私の家に伝わる舞というものなのですが、楽しんでいただけでしょうか?」


 黒髪女は舞が終わると再び細い腕で体を隠した。


 異世界だから舞というのがなんなのか分かってないのだろう。

 俺もよくは知らない。

 多分、勇者自信かその仲間がやっていて、それが代々伝わって来たのだろう。


「そうだな。すごく楽しめたぞ。お前の願い通り失礼女の命は助けてやる」


「あ、ありがとうございます」


 俺は黒髪女に近付きながら言った。


「俺はお前が気に入った。だからお前を人形ではなく、俺の隷婢れいひとなってもらう」


「れい、ひ……それは……」


「嫌なのか、なら人形一号達が今後どうなってもいいんだな」


「アマル達が!」


「人形一号との約束でお前以外の仲間は全員俺のモノになることは決まっている。今後あいつらがどうなるかはあいつらの態度次第だが、俺は約束を守らない奴は大嫌いだ」


「…………」


 失礼女のことを考えているのだろう。

 今後あいつが俺の言う通りになるかどうかなんて分かりきっている。

 つまり死だ。

 失礼女達を守るためにはどうしなければならないかすぐに分かるはずだ。


「……奴隷では駄目なのですか?」


「駄目だ。お前のことは気に入っているが、アインス達と同じじゃない。アインス達よりも下の身分になってもらう」


「…………」


「安心しろ。俺は自分のモノは大切に扱うと決めている。ただし、相手が俺のモノであることを受け入れている場合だ」


 これは真実だ。

 だから、最初気に入ってはいなかったドライをあんなに愛を込めて大切扱ってやったんだ。


 だが、俺のモノであることを否定した場合は、そいつには俺のモノになる価値はない。

 俺のモノではない。


「分かりました。ゼント様の隷婢れいひになります。その代わりにカーサ達は解放してもらえませんか?あの子達の分まで私が尽くします」


 ふーん、部下の自由のために己を犠牲にするか。

 悪くない。


「いいぜ。ただし、人形一号は既に俺のモノだ。見逃してやるのは失礼女とその妹だけだ」


「アマルも解放してはもらえないのでしょうか?」


「それはお前がどれだけ俺に尽くすかだな。その満足度によってはお前の願いを叶えてやるよ」


「約束していただけますか?」


「約束してやる。俺は約束を必ず守る男だ」


 俺は黒髪女の頭に手を乗せて、奴隷契約スキルを発動させた。

 隷婢(れいひ)には奴隷契約スキルですることができる。


 黒い電流のようなモノが黒髪女の全身を襲い、叫び声を上げさせた。


 黒髪女の額から頭を一周するように鎖の紋様が現れ、額の中心に小さな黒い文字で俺の名前が刻まれた。

 隷婢紋れいひもんは奴隷紋よりも分かりやすい場所に紋が表れる。

 奴隷よりも下の身分であることを周知してもらうためだ。


「これからお前の名前は『ムツキ』だ。分かったな?」


「かしこまりました。よろしくお願いします。ご主人様」


「よろしくな」


 日本人ぽくて一番目の隷婢れいひだから一月むつきでいいだろ。


 勇者の子孫を隷属させるなんて、なんて凶悪な魔王なんだろうな俺は。

 楽しくなってきて笑いが抑えられなかった。


 

読んでくれてありがとうございます。


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感想•レビューや誤字脱字の報告なども受け付けていますので、書いていただけると執筆の励みになります。



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