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無能コンクエスト〜無能と呼ばれた男が世界を征服します〜  作者: 秋月玉
ニ章 オーストセレス王国編
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第63話 皆殺し


 俺はシューネフラウの話を途中で終わらさして、すぐに部屋の窓から飛び出してた。


 光魔法で空を飛んで行く。

 人目とか気にしてる場合ではない。


 向かった先はアインス達が隠れている洞窟だ。

 

 タール村に飛んで行きたい気持ちはあったが、家畜助けには人数が必要だ。

 

 数分で洞窟に到着した。


「おかえりなさいませご主人様……どうかされたのですか?」


 出迎えたアインスは俺の顔からただ事ではない問題が起きたことを悟り、すぐに他の奴隷達を呼び出した。


「飛んで移動するから俺に捕まれ、理由は移動中に話す」


 右手にアインス、左手にフィーア、背中にツヴァイ。

 ドライはアインスが持っている。


 馬達は置いていく。

 馬車ごとは流石に無理だ。


 アインスから第四騎士団のことを聞くとシューネフラウと同じ答えが返ってきた。

 フィーアは俯いてどんな顔をしてるか分からない。

 だが、身体から滲み出るオーラがとんでもないことなのは理解できた。


 俺は夜も暗く道というか、飛ぶ方向が迷いそうになるが、フィーアのおかげでその心配はなかった。


 フィーアのためにも速く、もっと速く。


 そう思っていると、久しぶりにスキルが新しい手に入った。


 名前:ゼント

 レベル:261 up

 年齢:16歳

 性別:男

 種族:人間

 魔法:〈火魔法(上)LV10〉 〈水魔法(上)LV10〉up〈地魔法(上)LV10〉〈闇魔法(上)LV1〉〈光魔法(上)LV6〉up

 スキル:〈剣王LV10〉〈槍士LV8〉〈闘王LV1〉〈投擲LV10〉〈加速LV1〉new〈隠密LV10〉〈自然回復LV10〉〈運搬LV10〉〈奴隷契約〉〈鑑定〉〈アイテムボックス〉

 称号:無能王


 そういえば、速く動きたいと思ったのは初めてかもしれない。

 

 俺は加速スキルを発動させた。


 スピードが少し上がった。

 レベル1だとこんなもんか、という感じだ。


 速すぎてもアインス達の負担になるし、丁度いいか。


 

 数十分飛び続けると、タール村近くの林まで着いた。


 魔力量は4割程減っていた。

 アインス達を抱えながら、飛び続けるのは、流石に疲れたが、この後の雑魚と戦闘ぐらい問題はない。


 タール村から火の手は上がっていなかったが、それが逆に不気味に感じていた。


 近くかは騒ぎ声が聞こえた。

 

 目を向けると、三人の騎士が少女を取り囲んでいるのが見えた。


 俺はすぐに着地した。


「おい、俺の家畜に何をしている」


 俺は騎士団員の頭を掴んで、少女から離した。


 アインス達は俺が指示をする前に動いて、他の騎士を相手取り、もう一人少女を救い出していた。


「ありがとうございます。魔王様」


 俺が助けた少女は土下座の姿勢で涙ながらにお礼を言ってきた。


「村は騎士団によって襲われています。どうか助けてください」


「当然だ。そのために来たんだ」


 俺は前世のアニメで有名ではないが、好きなセリフを言う。


「いくぞ、俺のオマエたち」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




【フィーア】


 私の心は今までに感じたことのない感情が燃えていた。

 暗殺ギルドにいたころには感じたことのない気持ちだ。


 あの頃はただただ目の前のことに夢中だった。

 暗殺技術に性の知識と普通のとはかけ離れた生活だった。


 任務を失敗すれば命はなく、一所懸命にするしかなかった。

 ギルド内での中は悪くはなかったが、穏やかとは遠く、息苦しさも感じていた。


 性についても最初は抵抗を感じてはいたが、徐々に無関心となった。


 暗殺ギルドが騎士団によって壊滅したことは悲しみを感じた。

 命がけで逃してくれたギルド長にも恩義を感じてはいた。


 今、私の前には暗殺ギルドを壊滅させた第四騎士団がいる。

 恨みを晴らしたいという気持ちよりも強く心に感じるものがあった。


(こんな私を優しく向かい入れてくれたタール村の人達を守りたい)


 今まで相手を殺すことしか考えなかった自分が守りたいという気持ちに溢れている。


 ギルド長があの時、何故私を守ってくれたのか、分かった気がする。


 『不殺』 解除

 『糸術士』 解除


 名前:フィーア

 レベル:17

 年齢:18歳

 性別:女

 種族:人間

 魔法:なし

 スキル:〈糸術士LV5(封印)〉〈隠密LV3〉〈記憶探知〉

 称号:ゼントの奴隷

    ゼントの配下




 


 どうして?

 なんで称号がなくなったの?

 いや、今考えるのはそこじゃない。


 これで私は戦える。

 タール村の人達を守ることが出来る。


 でも武器がない。


「ゼント様……」

 

 私は称号と武器のことを伝えた。


「分かった。これを使え」


 ゼント様はアイテムボックスから糸術士専用の武器だった。


「何故ゼント様が?」


「王都で買っておいたんだ。いつか必要になると思ってな。防具は用意していないが、それで出来るだけ敵を殺せ」


「承知いたしました」


 私はこの方の奴隷になれたことを誇りに思った。 

 女神ではなく、魔王様に永久不滅の忠誠を誓った。

 おかげで自分の力で護りたいモノを護ることができる。


 糸術を使うのは久しぶりになる。


 試しに周りにある枝を切り落とした。

 

 腕は多少鈍っているが、問題なく使えた。

 武器の性能も悪くない。


「ちゃんと使えそうだな」


「はい、これでやっと魔王様のお役に立てることが出来ます」


 道中私はただの足手纏いだったが、これからはそうではない。

 魔王様の邪魔になるモノ、その排除に全力を注ぐ。


 まずは、私の故郷と言えるタール村に愚かな行いをした者達を始末する。

 

 

 タール村の入り口に着くと騎士団員が二人いた。


「何だあいつらは?」


「誰でもいいだろ、男は殺して女は俺たちと遊んでもらうだけだ」


「情報収集の間違いだろ」


「そうだったな」


 本当にクズの騎士団ね。


「始末します」


「まて!フィーア‼︎」


 フィーア一番槍の如く疾走して、糸術を使ってまず相手の手足を奪って拘束しようとするが、相手も戦闘に手慣れてはいる。

 もちろん、糸を使う相手とも戦闘経験があった。


「そう程度の技に捕まるかよ」


 騎士団員はするりと交わして間を詰める。


 レベル差もあり、勝ち目は無かった。

 騎士団員が剣を振り下ろそうとしたその時……


「俺の奴隷に触れるな」


 魔王様が騎士団員達を簡単に斬り伏せてしまった。


「冷静になれ、相手はお前よりレベルが上なんだ。自分の手で殺したい気持ちがあるだろうが、抑えろ」


 そうだ。

 相手はクズでも王国騎士団だ。

 レベルも戦闘経験も上だ。

 

 私一人で勝てるわけがなかった。


「申し訳ありませんでした。ですが……」


「安心しろ。俺が側にいる」


 騎士団員が斬られた時の悲鳴でこちらの存在に気付いた他の騎士団員が攻めて来た。


 だが、魔王様の相手になるはずも無く、すぐに殺されてしまった。


 なんて頼もしく、強いのでしょうか。


「俺はフィーアと行く。アインス達は三人まとまって行動しろ。無理はするなよ」


「かしこまりました。魔王様もお気を付けて」


「こんな連中に気を付けることなんてねぇよ」


「大変失礼しました」


 アインスさんはすぐに頭を下げた。

 

 全くその通りです。

 こんなクズの人達に魔王様がやられるはずが、ないでしょう。


「騎士団の方は何人か捕らえて情報を聞き出しますか?」


「そんな必要はない。皆殺しだ」



 そこから第四騎士団の時とは別の地獄絵図の始まりだった。

 

 ゼントは騎士団員を次々と殺していった。

 一緒に行動するフィーアも段々とレベルが上げて、騎士一人となら戦えるようになっていた。


 アインス達は村人の救助を優先した。

 

 アインスは元の王国騎士団だったが、外道を仲間だとは思ってはいない。

 躊躇いなく、ゼントの命令に従った。

 ドライも人と戦うことに迷いはなく、盾を振るった。


 しかし、ツヴァイは相手が外道でクズの連中だろうと、人に対して魔法を放つ覚悟はなかった。


 主に怪我した住民の救助に全力を注いだ。

 

 だが、ツヴァイの力では死ぬ寸前の人を癒すことは出来ない。

 助けた女性に「殺して」と願われても何をしたらいいか分からなかった。

 人に魔法を放つことに迷いを感じているツヴァイが介錯をするなど出来なかった。


 自分の無力さを感じたまま、ただ抱きしめることしか出来なかった。


 


 ゼントが騎士団長レイゴウがいる家に乗り込むと、そこには数人の少女達が転がっていた。

 息はしているが、目が虚ろだった。


 レイゴウは剣を構える暇もなく、ゼントに殺された。

 

 フィーアは近くの少女を抱きしめた。

 

「フィーア……おねぇ……ちゃん」


「そうよ。遅くなってごめん」


 フィーアは泣きながら抱き続けた。


 騎士団員を全滅させるのに一時間も掛からなかった。


 村の外に逃すことも許さず、ゼントは殺した。


 生き残ったのは、女性の十数人だけだった。

 男性は全員殺されてしまった。


 生き残ったとしても、愛する人を失っり、心に深い傷を負ったりと、失ったものが多すぎだ。


 生きる気力がまるでなかった。


「おいアインス、ここは俺が占領して魔王の領地になったはずだ……違うか?」


「はい、その通りで……ございます」


 ゼントの気迫に当てられ、アインスの口がうまく回らなかった。


「俺の『モノ』に手を出したらどうなるか……この世界の奴らに思い知らせなくちゃならないな」


 今までは自分のものになる前に手を出されたことはあったが、ゼントのものになってから殺されるということをされたのは初めてだった。


 ゼントは体の奥底から得体の知れない何かが湧いてくる感じがした。


「俺に仇なす奴らを全て殺してやる」


 この時、魔王の怒りが頂点に達した。

 

読んでくれてありがとうございます。


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