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無能コンクエスト〜無能と呼ばれた男が世界を征服します〜  作者: 秋月玉
ニ章 オーストセレス王国編
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第45話 ドライの頑張り


 洞窟に入って2時間ぐらい経ったぐらいで、一度休憩を取る為に洞窟の外に出た。


 俺はアイテムボックスの中から携帯食料の干し肉とパンを取り出してドライにも渡した。

  こんな森の中でまともな食事なんて出来るわけがない。


 火でも焚こうかとも思ったけど、火事にでもなったら大事だからやめておいた。

 山火事で魔物を一掃したら楽なのかもしれないが、それではフォウは納得しないだろう。


 ドライが携帯食料を受け取ると驚いた顔をして、俺の顔と肉を交互に見ていた。


「どうした、食わないのか?」


「どらいも……たべていいのですか?」


「当然だ、お前は俺のために役立とうとしたんだ、その報酬を受け取る権利ぐらいはある」


 ドライは満面の笑みを浮かべると目の前の食べ物にむしゃぶりついた。

 上品さのかけらもない汚い食べ方だ。

 今時の子供でも人目を気にしてもう少し綺麗に食べると思うぞ。


 ドライが戦いもせず、何の役にも立たなかったら何も食わさないと思っていた。

 だが、ドライは勇気を出して戦った。

 俺の命令だからとかは関係ない。

 俺の役に立つために戦ったのだから、報酬を受け取るのは当たり前だ。

 これで何も与え無かったら、もうドライは頑張ろうとはしないだろう。

 調教には飴と鞭が大事なことぐらい、ペットを飼ったことがない俺でも分かる。


「食い終わって休んだら、また洞窟に戻るぞ……次は最奥まで進むから覚悟しろよ」


「はい!」


 やる気が出たようで良かった。

 無理矢理戦わせるのも時間が掛かりすぎて疲れた。


 ドライは俺のものだが、欲しくて手に入れたものじゃないからか、大事扱おうという気が殆ど起きない。

 勿論死なせるつもりはないが、その一歩手前までは行ってもいいだろうと思っていた。


 だが目の前のドライを見ていると愛着というかペットを飼ったらこんな感じなのかと思えてくる。


 カーバンクルをペットにした男は世界で俺だけだろう。

 少し優越感が湧いてきた。


 死ぬ一歩手前から少し怪我してもいいだろぐらいには大切にしようと思った。


 もし怪我をしても魔法で回復させて、また戦わせることが出来るからな。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 再度洞窟に入って3回オークと戦うと広場のような開けたところに出た。


 スリュートダンジョンと一緒だとこういうところに中ボスのような魔物がいるはずだ。


 しかし、中には魔物1匹いなかった。

 どういうことだ?


 いないなら仕方ないと思い、俺達は進んだ。

 ドライは戦わなくなってホッと息を吐いていた。


 俺達が広場の真ん中に着くと周りの壁が大きく音を立てながら揺れた。


 一部の壁の岩が人型を模してくり抜いたかのように浮き出て来た。


 これはゴーレムとかいう魔物なのか?


 ゴーレムの大きさは5メートル以上あり、拳の大きさでも2メートルはあった。

 全身が硬い岩覆われていて、スピードはなさそうだが、その分攻撃力と防御力が高かそうだ。


 だとしてもレベルは50ぐらいで、スリュートダンジョンのボスより強いが、俺からすればただの雑魚だ。


 レベルが上がったおかげなのか、鑑定スキルのおかげか、相手の大体のレベルが分かるようになった。


 正確な数字は分からないが、大まかにでも分かれば、奴隷達でも勝てるがどうか判断できるようになった。


 スリュート伯爵領にいた馬鹿な冒険者のように格上の相手に挑むなんてことをしなくて済む。


 それで目の前相手だが、ドライでは絶対に勝てない。

 すぐに潰されて殺されるだろうな。


「合図するまでお前は下がってろ」


 丁度いいからあいつから貰ったものを試すことにした。

 

 俺はアイテムボックスから死神から貰ったデスサイズを取り出した。

 洞窟内で振り回すにはデスサイズは俺の身長と同じぐらいの大きさがあって戦いにくかったが、この広場ぐらいの広さがあれば、何の問題も無く振り回すことが出来た。


 名前:デスサイズ

 補正:破壊不能、属性付与+(大)、切れ味+(大)



 俺は闇魔法で手に黒い靄を発生させると、それをゴーレムに投げつけた。


 この魔法の移動速度は速くはないが、鈍間な相手なら問題なく当てられた。


 ゴーレムの顔に当たると黒い靄はまとわりつくように顔を覆っていった。

 ただの目眩しだ。


 下位のレベル1だとこれが限界だ。

 闇魔法は攻撃系ではなく、相手の弱体化などが多いようだ。

 上位になれば攻撃系が出てくると思うが、それはあとの楽しみにしておこう。


 視界を奪われたゴーレムは暴れ出した。

 地面や壁を殴ったりしていた。


 相手の攻撃方法は拳を使った攻撃だけのようだ。

 ゲームみたいに顔からビームを出したりはしなくて安心した。


 俺はデスサイズを構えるとゴーレムの真上に移動した。

 

 ゴーレムは危険を察知したのか、視界が遮られているのにも関わらず上に向かって拳を放って来た。


 俺の場所が正確に掴めているわけではなかった為、攻撃範囲が大きくてもそんな攻撃が当てられる道理はなかった。


 俺はデスサイズを振りかぶり、勢いよく振り下ろした。


 それは黒い一閃で圧倒的な強さを見せつけて、自分の強さを強調するようだった。

 その姿に魅せられてしまった者がいたほどだ。


 真っ二つとなったゴーレムは切断面から崩れていった。

 崩れた勢いで埃が舞って鬱陶しい。


 鎌を横凪して埃を払った。

 視界が良くなり、岩の残骸の山が見えた。

 レベル差もあるし、そりゃあ一撃で決まるか。 

 本当は瀕死の状態にして、ドライにとどめを刺させるつもりだったが、やり過ぎてしまった。

 レベル50もある魔物をドライが倒せるなんて無理な話か。


「ごしゅじんさま……すごいです」


 なんかドライが輝いた目で俺を見ていた。

 

 飯を与えた時とは違った輝き方に感じた。

 その意味は分からないが、俺の凄さが理解出来たならそれで良しとするか。


 それにしてもこの瓦礫は邪魔だな。

 何かの武器や防具の材料に使えるかもしれないし、一部をアイテムボックスに保存しておこう。


 俺達は休みを挟むことなく洞窟の奥へと進んだ。


 だが、進む先にまたオークと戦ったが、もはや作業になりつつあり、つまらなくなっていた。


 洞窟を進んで行くとゴーレムと戦った時と同じような広場が見えた。


 ここにいるのがボスなのかもしれない。


 中をこっそり覗くと、そこには3メートルぐらいの巨大なオークがいた。


 ゲームだとハイオークとかオークロードとかいう名前なんだが、俺にとってはどっちでも関係ない。

 ただの雑魚だ。

 レベルもさっきのゴーレムよりも低くて30か40ぐらいだろう。


「お前戦ってみるか?」


 俺はドライに聞くと、ドライは高速で首を左右に振った。

 そりゃそうか。


 まぁ、さっきの戦闘でやっとオークを一対一で倒せるようになったような奴にいきなりこんな魔物と戦って勝てるわけないか。


「お前のことは絶対に守ってやるから、俺と一緒に戦ってみろ」


 ドライは俯いて黙ってしまった。

 

 首根っこ掴んで無理矢理戦わせてもいいが、自分1人では絶対に勝てない相手に挑む勇気を出すのを待ってみよう。


 断ったら無理矢理連れ出すつもりではいた。


 そう、結果は変わらない。

 理由が変わるだけだが、そこが重要だ。

 今までの戦いでドライの中で心の変化があったはずだ。

 それは必ず良い方向へと進んでいるはずだ。

 

「どらい……たたかいます!」


 ドライは武器を構えて俺の前に立った。


「死なせるつもりはないが、死ぬ気で頑張れよ」



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