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第37話 灰塵となせ


 俺はスリュート伯爵領を離れた丘の上から見渡している。


 そこには驚きの光景が広がっていた。


 何故か伯爵領に魔物の大群が押し寄せて来ていた。

 その中に他の魔族とは明らかに違う、禍々しさを纏った敵将と思われる魔物が堕天使の翼を広げて飛んでいた。


 好都合だ!


 俺は奴等の姿が経験値にしか見えない。


 さぁ!

 まとめて灰塵となして消えろ!


 念のために後ろの3人はある程度離れてもらっている。


 俺は両手を空に高く伸ばした。

 両手の平から直径2メートル以上はある大きな魔法陣を出現させる。

 

 魔法陣は赤く光り、天へと向かって光は伸びていく。

 その光は天を超えて太陽のいる位置に届くのではないかと思う程にどこまでも伸びて行く。


 数十秒後、光の柱が消えるが何も起こらなかった。


「……ゼント様……先程の魔法は?」


「下がっていろ、これから面白いものが見られるぞ」


「…………え!」


 今日は晴天で雲が全くなかった。


 だからこそ、よく見える。


 天から地へと迫る大きな炎に包まれた塊が。

  その大きさは伯爵領の半分以下だが領地を壊滅させるには十分な大きさだ。


 それは抵抗することを許さない。

 ただ、不条理にも生在るものを死へ導くための魔法。


 伯爵領では大勢は恐怖したが、大人しくする者もいた。

 無駄だと。

 何者の仕業なのかと考える必要はなかった。

 これから死ぬのに答えが分かったとしても、何も出来ることはない。

 正解者がいたとしても結果は変わらない。

 

 それが落ちるまでどれ程の時間が掛かったかは人々によって違った。


 走馬灯のようにゆっくり感じられた人もいれば、一瞬の出来事ですぐに感じた者もいた。

 

 ドーーーーーンッ‼︎


 塊が伯爵領に落ちると伯爵領だけでなく、周辺に配置されていた魔物の軍団を巻き込みんで滅していった。


 俺は水・地・光魔法で城壁とも呼べるような何重にもなる壁を作り、強化もした。

 それでも完全に防ぐことは出来なかった。


 残ったのはたった2枚の壁だけだった。


 危なかった。

 自分の魔法で死ぬわけにはいかないからな。


 伯爵領を脱出する前に火魔法のスキルが上位のレベル5になった時、この魔法が使えることが分かった。


 頭の中に流れ込んで来たのではなく、初めから出来ると知っていたような感覚だった。

 ツヴァイのように魔法の術式を勉強する必要なんて無い。

 術式、理論、そんなもの知ったこっちゃない。

 魔法を使おうと思えば、勝手に発動してくれる。

 

 本当に『無能』は最高だな!


 それにしても、この光景が自分の魔法の力だと思うと高揚してくる。


 さっきまでそこに街があり、人が住んでいた。

 冒険者ギルドの連中も、焼き鳥屋の男も、宿屋の女も、武器屋の男も、奴隷商も、アヌビス商会も、その全てが吹き飛んで消えていった。


 全て俺の成長の糧となっていった。


 最高の気分だ!


「ご主人様……これは……」


「上位火魔法の流星弾だ、あいつらはアインスの正体がバレた時点で全員敵だ、だから俺の魔法の実験体になってもらった。使えることは分かってもどのような魔法か知らなければ使い所を誤る可能性があったからな、1度試せてよかった」


 振り向くと俺に近寄って来たのはアインスだけだ。

 ツヴァイはドライを抱き抱えて動けないでいた。


 2人には衝撃的な出来事で現実を受け止められてないってところか。


 近寄ろうと1歩を踏み出そうとするが、


 ぐらっ


 体がふらつき膝をついて倒れてしまう。


 「ご主人様⁉︎大丈夫ですか?」


 上位魔法を使うには膨大な魔力を必要とする。

 なんとなくだが、体内の魔力が残り1割以下になっている感じがする。

 さらに流星弾の爆風で体力が削られ、体力も魔力もここまで削られたのは初めてだ。


 自然回復スキルがあるとはいえ、全回復するには時間が掛かってしまうだろう。

 生き残りがいるとは考えにくいが、外部からこっちに向かっている勢力があるかもしれない。

 早めにここを離れる方がいいだろう。


「ツヴァイ!早くご主人様に回復魔法を」


 ツヴァイはハッと立ち上がり走ってくる。

 杖に魔力を込めて光魔法の回復魔法をかける。


 体力が回復して身体が少し楽になってくる。

 だが、さすがに失った魔力を回復することは出来ない。

 ゲームでよくあるMPポーションのような物があればアヌビス商会で買おうと思ったが、この世にそんなものは無いと言われてしまった。


 元々魔法を使える人が少ないので、需要も少なかったのが原因で作ろうとも思わなかったのかもしれない。


 だから自然に回復するのを待つしかない。


「もう大丈夫だ、魔法に気付いた誰かが様子を見にくるかもしれない、早くここを離れるぞ」


 俺はツヴァイの杖を払いのけ立ち上がる。

 まだ身体に怠さが残っているが、移動するのに支障はない程度には回復したはずだ。


「さっきの魔法はおまえの仕業か?」


 振り向くとそこには全身が黒々しく禍々しい存在が浮遊していた。



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