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無能コンクエスト〜無能と呼ばれた男が世界を征服します〜  作者: 秋月玉
三章(下) ヴェストニア法国編
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第99話 ハイレヴィゲン


「貴方……武器は何か使えるの?」


「すみません。使ったことありません」


「それでよくあんな場所で生き残ってこれたわね」


「魔物が襲って来た時は、大人たちが追い払ってくれましたし……偶に国の祓魔師達が見回りをしてくれていたので……」


「その祓魔師達は貴方達の村人達に何もしてくれなかったんですか?」


「命を救って貰っているだけで感謝しなければと……」


「その人たちひどーい。ご主人さまの方がやさしい」


「ドライちゃん、その場の命しか助けない人達とその後の未来も救済して下さるゼント様を一緒にしちゃだめよ」


「そうね、比べること自体が失礼だわ」


「ごめんなさーい」


「謝るときはちゃんとする」


「ごめんなさい!」


 ドライは気をつけの姿勢から九十度体を倒した。

 

「まったく……多少料理が出来て、多少容姿が整っていて、どこかの狼さんよりも胸があるからと言って、それだけでゼント様の奴隷になれると思わないことね」


 何か棘のある言い方だな。

 魔人少女というよりはわざと大きな声でアインスに向かって言っているるようだ。


「そうですよ。ゼント様に奉仕するためには色々と勉強しなくてはなりませんよ」


 ツヴァイも言うようになったな。

 いったい何を勉強させるつもりなんだろう。


 俺は指摘にされた魔人少女の胸を見る。

 魔人少女の服装はボロボロの服からツヴァイやフィーアが使っている服に着替えさせた。

 今の魔人少女の体に合った服なんて持っていない。

 ブカブカの服だがボロボロの服よりかはましだろう。


 ネックの隙間から覗く胸は寄せれば谷間が出来る程度にはあった。

 13歳でこれなら同年代と比べれば大きい方だろう。


 俺の視線に気付いた魔人少女が体を隠すように離れた。


「ゼント様から離れてどうやって主人に奉仕するの?ゼント様に体を見てもらえるということの嬉しさがまだ分からないようね」


「ムツキさん達のように一度ゼント様に見てもらった方がいいのかもしれませんね」


 フィーアとツヴァイが魔人少女をどうするかで話し合っていた。

 魔人少女に夜の相手をしてもらおうなどとは考えていない。

 後二年ぐらい経って今のツヴァイと同じくらいの年齢になってからだな。


 だけど、踊させるぐらいはいいかもな。

 まずは手本を見せて、それからやらせるか。

 ヤヨイみたいに頑なに反抗することはないだろう。

 どんな反応をするか楽しみだ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 魔人少女を拾って数日後、ヴェストニア法国首都ハイレヴィゲンに到着した。


 出入り口の門で検問があったが、「魔王が現れたというオーストセレスから逃げて来た」と言ったら簡単に信じてくれた。

 俺達以外にも何グループかいたそうだ。

 馬車の中を見られたが問題はなかった。

 魔人少女は木箱の中に隠していたが、開けられることはなかった。


 宿泊する場所を確保しなくちゃならないが、探すのが面倒だ。

 門番に金を渡したら馬車も獣人も大丈夫な宿泊場所を教えてもらった。

 獣人についてはヴェストニアでは特に差別的な扱いは受けていないらしい。

 獣人は良くても魔人はダメなんだな。

 その差が俺にはよく分からん。


 移動した宿泊場所は大通りから外れた木造三階建てだ。

 裏に馬車と馬を泊めらる場所もあるので施設としてはいい。

 部屋も偶々一番大きな部屋が空いてたから良かった。

 ベッドも三つあってソファーや机もあり、普通に寝て過ごすには十分だ。


「俺は少し外に出て来る」


「お供致します」


 荷物の整理をしていたツヴァイとフィーアが先を越されたみたいな顔をしていた。


「いや一人で行く。一人になりたい気分なんだ」


「そうですか……分かりました」


 アインスは仕方なくと言った感じで、納得は出来ていなかった。

 俺に言われたなら聞くしかないんだけどな。

 俺にだって一人になりたいと思う時はある。




 ヴェストニア法国は宗教団体のような国だ。


 他国に対しては常に中立の立場で振る舞っていた。

 過去のミッテミルガン共和国の内戦においても傍観者を気取っていた。

 五つの国の中で最小国だが、美術や芸術に優れた者が集まっていて、それによる商業が盛んであった。

 

 この街に並んでる建物は石造りや木造などで、オーストセレス王国と殆ど変わらなかった。

 並んでいる店も特に珍しい物もなく普通な感じだ。

 宗教って聞いていたからもった堅苦しいイメージで他国の人間はお断りって思っていたがそんな事はなかった。

 事前にフィーアから聞いてはいたが、特に変わっているとこはない。

 一部を除いてだが。


 ゴォーーーン‼︎


 俺の前にある十メートル以上はある大きな教会のような真っ白な建物の上ある鐘が鳴った。


 なんの合図かは知らない。

 周りでは手を合わせてお祈りしている奴が何人かいた。

 こういうところは宗教っぽいな。


 俺には絶対合わない。

 魔王が祈る姿なんてカッコ悪いだろ。


 それよりも聖女だ。

 この大きな教会の中にいるのか?


 大きな教会の周りは塀に囲まれていて、入るには神父服を着た門番みたいな奴らの検問を通過しなくちゃならないのか。

 

 面倒だ。


 俺は信者じゃないし、嘘でも信者のフリをするなんて嫌だ。

 だったら忍び込むしかないな。

 

 まずは情報収集だ。

 本当にあの中にいるのかも確かめてなくちゃならないからな。


 裏路地を歩いてみると、昼間からやっているバーのような酒瓶が書かれた看板を見つけた。

 店は地下にあり、入り口すぐに下に階段が続いていた。


 ドアを開くとカウンターに四十代ぐらいの男性店員がいるだけで誰も客はいなかった。

 こんな昼間から酒を飲もうなんて奴はいないか。

 

「まだ準備中だよ。立札が見えなかったのか?」


「見えなかった」


 ドアノブになんかあった気もするが、気にしなかったな。


 俺はカウンター席にドカッと座った。


「マスター何かオススメをくれ」


「さっきの台詞が聞こえなかったのか?」


「聞こえてた。だからあえて言っているんだ」


「はぁ〜一杯飲んだら帰ってくれ」


「客に対して失礼な奴だな。だから誰も客が来ないんだ」


「準備中だからだよ。夜はもっと賑わってる」


 マスターがまた深くため息を吐くとカウンターの向こう側で準備を始めた。


「あんた見ない顔だな。観光かい?」


「聖女に会いに来た」


「なるほどな」


「最近そういう奴が多いのか?」


「そうだな。俺も一度だけだが見たことある。あれは絶世の美女と呼べる人だ……ほらよ」


 俺の前に置かれたのは白い飲み物だった。

 どう考えてもミルクだ。


「聞き分けのなってない子供にはそれで十分だろ」


 とんだ皮肉だ。


 俺はミルクを一気飲みした後、銀貨と金貨を一枚ずつ見せた


「今度はちゃんと酒をくれ。それと聖女について教えてくれ」


「いいぜ!」


 マスターはようやくやる気を出してくれて、ちゃんと酒を作り始めた。

 手を動かしながら聖女の情報もちゃんと教えてくれた。

 

 聖女と呼ばれる少女は、特別な光魔法の亜種『聖魔法』を使う。

 聖魔法は回復魔法に優れていて、本人のレベルが低くても骨折など大きな怪我もすぐに治してしまう。

 病気にも効果があり、こちらはすぐに治ることはないが回復を早めることが出来る。

 しかし、聖魔法を受けるには教会にお金を入れないといけない。

 治療費みたいなものだ。

 

 さらに聖女は炊き出しなどの慈善活動も行なっていて国民からの評判は高かった。 

 炊き出しの日にちは毎日ではなく、七日に一度で今日の朝にしたばかりで七日後だそうだ。


 さすがに待てない。

 お金を払って会いに行くってのも、魔王が教会に協力したようで嫌だ。


「聖女の名前はなんて言うんだ?」


「ハルカ様だ」


 なに⁉︎


 

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