運命のトラックちゃん
初めての小説なのでおかしいところがあるかもしれませんが、そういう場合は教えてくれると嬉しいです。
今日は月曜日だ。
月曜日といえば日本人に限らず様々な人が一番憂鬱になる曜日だろう。
だが、今日に限っては違う人も多いと思う。
なぜなら今日は四月一日、高校生の入学式の日だからだ!
そして、俺、日詰 シンヤもその高校に入学する者の一人なのだが、俺は今、絶賛憂鬱中だ。
どのくらい憂鬱かというとそれはもう、「涼宮ハ○ヒ」なんて目じゃないくらいに憂鬱だ。
なぜ俺がそんなメランコリーになっているのかというとそれは、入学式の日だというのに寝坊をしたからである。
しかも遅刻するかしないかのギリギリの時間に。
どうせ寝坊するなら遅刻確定の時間に起きたかった・・・。
俺はそんなことを考えながら急いで学校に行く支度をし、朝飯を食って玄関に向かった。
「行ってきまーす!」
そして、俺はそう叫びながら、母の「行ってらっしゃい。」も待たずに家を飛び出した。
ここから最寄りの駅までは走って十五分。
そこから電車と歩きで学校まで二十分。
学校には八時までにつけばいい。
そして、今現在の時刻は七時二十分。
マジでギリギリだ。
そして精神の方も、考えてることがちょっとラップっぽくなっちゃうくらいにギリギリだ。
あーあ。こんなときに、ラブコメのテンプレだとそこの角を曲がったところで美少女の同級生とぶつかるんだけどなー。
と、色々とギリギリな俺が、そんな現実逃避をしながら角を曲がった瞬間、何かにぶつかった。
「もしかして美少女の同級生!?」と思いながらそっちを見ると、そこには「美少女の同級生」なんかと比べ物にならないほどガタイのいい、トラックちゃんがいた。
あー。これはラブコメじゃなくて異世界転生のパターンかな?
俺はそんなことを考えながら死んだ。
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俺はズズッという音で目が覚めた。
そこで、起き上がって周りを見渡してみると、そこに、1人の婆さんが俺の反対側を向いて、茶をすすっているのを見つけた。
どうやらズズッという音はこの婆さんが茶をすすっている音だったらしい。
どこだここ?
俺はそんなことを思いながら何故こんなところにいるのかを考えてみた。
まぁ、考えることもなく答えは出て来たが。
俺はトラックに轢かれて死んだのだ。
その事実から導き出される答えは2つだ。
1つ目はあの世にいるということ。もう1つは、ドラゴ◯ボールに出てくる、「精神と○の部屋」にいるかのどちらかだ。
二つ目の方に至っては事実からは導いていないが、そこはスルーで。
まぁ、目の前にさっきから茶をすすっている、婆さんがいる時点で「精神と時○部屋」ということはなくなるので、大方あの世だとは思うが。(婆さんが『精○と時の部屋』で修行をしてる可能性も捨てきれないが)
あの世だとしたらそのうちどっかに案内されるさ。
俺はそう結論付けてもう一度寝ることにした。
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俺はまたもやズズッという音で目が覚めた。
どうやらあの婆さんはまだあの茶をすすっているらしい。
そこで、意を決して俺は寝始めたときから何も変わっていない婆さんに話しかけることにした。
「あのー。すみません。ここってどこですか?」
「なんだって?」
どうやら耳が遠いようだ。
俺はさっきより音量を上げた。
「あのー! すみません! ここってどこですか!」
「なんだって?」
俺はイライラする気持ちを抑えてほぼ叫ぶような声の大きさで再度聞いた。
「あのー!! すみません!! ここってどこですか!!」
「なんだって?」
「ここがどこかって聞いてんだよクソババア!」
どうやら俺の気持ちは抑えられなかったみたいだ。
「だーれがクソババアだって!? あたしゃあんたをそんなこと言う子に育てた覚えはないよ! 次郎!」
「俺はあんたに育てられた覚えがねえよ! ていうか次郎って誰だよ! 俺はシンヤだ! 勝手に俺をどこかのノッキングマスターにしてんじゃねえよ!」
「次郎! あんたなんてこと言うの!? 死んだお母さんの代わりにあんたを育ててあげたじゃない!」
「俺の母さんを勝手に殺すな! 大体あんたには育てられてないって言ってるだろ! しかも次郎でもないし!」
俺が見ず知らずの婆さんと不毛な争いをしていると、いきなり今まで壁だと思っていたところが、「バンッ」と音を立てて開き、20代前後の女性が出てきた。
「おばあちゃん何してるの? 今日はお婆ちゃんが珍しく『あたしに任せなっ!』て自信満々で行ってきたから任せたのに、もう三時間も経ってるよ? ほら、吉◯新喜劇始まるから向こう行ってて。」
俺がいきなり壁から出てきた女性に混乱していると、婆さんは、吉本新○劇と聞いた瞬間にものすごい勢いで部屋から出て行った。
どうやら今日は土曜日のようだ。
俺は確か、月曜に死んだはずだから四日間くらいぶっ通しで寝てたらしい。
っていうかあの婆さん、しっかり耳聞こえてんじゃねえか・・・。
俺は心の中で婆さんに文句を言いつつ、壁から出てきた謎の女性に目をやった。
その女性は目を見張るくらいの美人だった。
長い黒髪に整った顔立ち。さらにスタイルもとてもいい。彼女が女神だと言われても納得できるくらいの美しさだった。
さらに女神らしさを引き立たせているものがもう1つ。
純白のドレスだ。
そんな純白のドレスに包まれた美貌の持ち主は誰がどこからどう見ても女神だった。
まぁ、この人なら少なくともさっきの婆さんみたいにえげつないほどの難聴ではなさそうだ。
俺はやっとまともに話せそうな人が出て来たので色々質問してみることにしてみた。
「あのーすみませんここってどこですか?」
「あの世だよ。」
「じゃあ僕はやっぱり・・・」
「うん、死んだよ♬」
「そうですか・・・」
ところで1つ気になったんだけど、この人「死んだ」っていう言葉の時だけ雰囲気がガラッと変わって、しかもめっちゃ笑顔で言ってくるんだけど。
しかも心なしか言った後に『♬』が付いてる気がするんだけど。
何この人ちょっと怖い。サイコパス?
まぁそんなことは置いといて次の質問だ。
「なんで俺はこんなとこにいるんですか?」
するとサイコパス(推測)は先程とは打って変わって真面目な顔をして言ってきた。
「君には異世界に転生してもらおうと思ってね。」
「異世界、ですか?」
「うん。異世界。」
ほう。異世界転生と来たか。悪くない。俺は少し悩んだ。しかし俺はやっぱり異世界ものよりラブコメが好きなので新しい人生をやり直させてもらう方にしよう。と思いその旨をサイコパス(推測)に伝えた。するとサイコパスは申し訳なさそうな顔をして、
「ごめんなさい。それは出来ないの。」
と言ってきた。
「なんでですか?」
「だってあなた、このままだと地獄行きよ?」
「え? ちょ、ちょっと待って? 地獄? 今地獄って言いました?」
「はい。言いました。」
「え? なんで俺地獄行かなきゃダメなの?」
するとサイコパスはさっきの♬がついた言葉を言ったときの表情になって、笑いながら言ってきた。
「だってあなたぁ、今世でたくさん殺ったでしょ♬」
え? 俺は生まれてこのかた殺しなんざ一度もしたことなんてないのに。訳がわからない。唯一わかったのはこのサイコパス(確信)が「死んだ」や「殺した」に反応するということだけだ。
もはや二重人格と言ってもいいレベルで移り変わりが激しい。
俺がそんなことを考えていると、サイコパスは俺が考えていることが分かっているかのような口ぶりで話しかけてきた。
「ああ。私はちょっとサイコパスなだけだよ。まぁ、今はそんなことよりあなたが地獄に行かされる理由の方が大事ね。でもそれもとっても簡単な理由よ。だって、あなた。人は殺してなくても他の生き物は他人と比べ物にならないくらい殺ってるんですもの♬」
「他の、生き物?」
「あら。覚えてないの? 例えば幼い頃にあなた蟻の巣に大量の水を入れたわよね? あの蟻の巣はね、日本で1番でかい蟻の巣だったのよ♬ その蟻の巣にジョウロで遠慮なくドバドバドバドバ水を入れたったわよね? そしてそのときに何十兆匹ものありを殺したのよ。でね? この世界は命はポイント制で分かれていてね? 蟻は一匹、1ポイントなのよ。で、あなたは何十兆匹ものありを殺した。そしてポイントは生き物が大きくなれば大きくなるほど多くなるのよ。例えば犬のポイントは1億、そして人間は10兆。そしてあなたは蟻を何十兆匹も殺した。つまりあなたは幼少期の頃に人間を何人も殺した殺人鬼になったってわけ♬ だからあなたの地獄行きは昔から決まっていたことだったの。分かった?」
「そ、そんなぁー。たかが蟻程度でそんなことに・・・」
するとサイコパスは、また顔つきがガラリと変わって真面目な顔になった。
「蟻と人間も命の重さは一緒よ。」
命にポイント付けしてる奴らに言われたくないとか、サイコパスに言われたくないとかそういう文句が頭に浮かんでくるが、それよりももっと怖いのはこの変わりようだ。
いくら二重人格だからってこんなに変わるものなのだろうか。
恐ろしいばかりである。
「まぁ、そういうことですから、もし異世界に行かなかったらあなたは地獄に行くことになります。なので、あなたに選択権はありません。なのでおとなしく異世界に行ってきてください。」
そういうとサイコパスは俺に手をかざした。
すると俺の体が青い光に包まれた。
「えっ!? ちょっとまって早くない!? 俺異世界のことなんも説明受けてないんだけど!? ちょっ待っ・・・」
「あっ。後言い忘れてましたけど、あなたは百年以内に魔王を倒さなければなりません。そうしないと、あなたは地獄に行くことになります。でも安心してください。異世界ではあなたは年をとるのがとても遅くなります。なので魔王討伐、頑張ってください。」
「えっ!? 魔王!? ちょっ待っ・・・」
しかし俺の言葉はサイコパスに届くことはなく、一層に光量を増した青い光に遮られてしまい、視界も歪んできた。俺はそんな歪む視界の中で届かないと分かっていながらも叫んだ。
「チート能力は!?」
誤字、脱字、矛盾がありましたら教えてください。