表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

明日

 私は何度も繰り返した深呼吸をもう一度して、改めて横を向いた。

 間違いない。私の隣に、牛がいる。夫が寝ていた場所に、夫と同じパジャマを着た、牛が寝ている。

 昨晩はいつも通りだった。違ったのは、夕食の前に、喉が渇いたと言って、夫が大量に牛乳を飲んだことくらいだ。

 親友のアドバイスで、夫の会社には父が危篤、夫の実家には海外出張だと電話した。これで三日は時間を稼ぐことができる。

「この牛が本当に旦那さんなのかが問題ね」

 親友は「はい」「いいえ」を書いた紙を一枚ずつ作り、床に置いた。

「あなたは純子の旦那さんですか?」

 牛は「はい」に足を置いた。

「待ってよ。こんなの半分の確立でしょ?」

 カードに「どちらとも言えない」「知らない」を加えて、複雑な質問をすると、正解率は八十パーセントだった。

「一問でも間違うなら、夫じゃないわ」

「間違ったのは、眠くなったからじゃない?」

 親友の言うとおり、牛はもう寝始めていた。

「夫なら、こんな時に寝ないわよ」

「牛の生活サイクルがあるんでしょ。初めは全問正解だったんだし、認めてあげなさいよ」

「いやよ。夫が冗談で牛を置いていったって考えたほうが普通じゃない」

「それ全然、普通じゃないし。だいたい、このパジャマ、後から着せるの無理じゃない? 着ていて、身体が膨らんだとしか思えない」

 親友を追い出して、精肉業者や牧場を調べていたら、あっという間に三日が経っていた。

 結局、なにもわからなかった。ただ、夫が帰って来ないということだけは事実だ。

 明日、私は、精肉業者に牛を連れて行く。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ