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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第8章
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1557年瓶尻の戦い

1557年、晴信は甲相駿三国同盟の締結により、北条の要請で西上野に出陣した。

長野業正の箕輪城攻めである。


晴信は素っ破に聞いた。

「長野業正はどのような男か」

「忠義厚く、地元の国人衆との信用も高うござる」

「なるほど」


1547年、晴信が碓氷峠の戦いで上杉憲政と戦になった時、戦に反対だった業正は参加しなかった。

晴信は調略と内応の誘いを業正に送ったが、返事はなかった。

戦への不参加はどちらにも取れた。


晴信はこの戦での乱取りを禁止している。

これは信濃国人衆の反感を柔らげ、しいては宿敵、村上義清の弱体化を狙ったものだ。


1552年、上杉憲政の権威が失墜し、憲政は北上野に逃れた。

その際に、長野業正は西上州の諸将と一緒に離反し、ついていかなかった。


長野業正はどうやら地元への執着が強く、落ち延びる憲政に愛想を尽かしたのだ。

この時、憲政の馬廻り衆も離反している。


馬廻り衆とは大将の護衛や伝令、決戦戦力の事。

武芸の秀でた側近衆で、いわゆる親衛隊だ。


親衛隊が愛想を尽かすのは、余程の事なのだ。


ここは箕輪城攻略の拠点、野戦司令部。

晴信は、敵将長野業正の善戦により、攻めあぐねていた。


晴信は長野業正を高く評価した。

この戦には勝頼も参加していた。


晴信「どう思うか」

勝頼「滅ぼすには惜しいと思いまする」


北条軍との同盟もある。

不戦で調略する訳にはいかなかった。


箕輪城は堅城である。

なかなか落ちなかった。

北条方も攻めあぐねている。


そこで勝頼は全軍の7割を攻城戦に回した。

本陣はがら空きであった。


それを見た箕輪城側は決戦に出た。

正門を開いた。


怒濤の如く、騎馬隊が飛び出してくる。

勿論これはワナであった。


微妙なタイミングで城攻めの7割が引き返してくる。

挟撃作戦だ。


雑兵A「うおおおっ」

雑兵B「めっていやっっぁっ」

雑兵C「まぁとぉーまぁっ」


箕輪城側が本陣へ攻め入るのを、ちょっとだけ許すのだ。

だが、敵も死に物狂いの突撃である。


騎馬A「ひるむな!」

騎馬B「下がるな!」

騎馬C「退くな!」


もの凄い勢いである。

戦には流れというモノがある。


勝頼は場数を踏んでいない為、戦の流れに疎かった。

戦力・戦略・戦術を覆すものがこの世にはあるのだ。


怒濤の如く突き進む箕輪城軍の大攻勢は、本陣の陣幕を突き破った。

勝頼親衛隊が槍をしごいて立ち塞がる。


槍で叩き、その凄い衝撃でひるんだところを鎧組討(武術)で引き倒す。

後ろから馬乗りになってカブトの(しころ)をたくし上げ、喉笛を切り掻く。


凄惨な戦いが目の前で繰り広げられた。


とうとう敵将の1人が、本陣の勝頼に襲いかかった。

「勝頼!その首、もらい受ける!」


「おう!」

「かかってこい!」


騎馬による槍の突撃を受けた勝頼は、危機一髪でかわした。

「もう一撃!」


その時、武田の攻城軍が引き返してきて加勢、挟撃が始まった。

「ちい!引け!180度転進だ」


引き上げる西上野衆。

それに武田軍が混ざって撤退が始まった。


西上野衆「おいお前!見かけない顔だな」

武田雑兵「加勢の百姓兵で御座います」


箕輪城側も、味方に武田兵が混ざっているのは分かっていた。


だが城門を閉ざすわけにはいかず、侵入を許してしまった。

武田軍は城に火を放ち、焼き討ちにした。

落城である。


落ち延びようとした長野業正は武田側に捕縛され、晴信の前に引き据えられた。


「くっ殺せ!」


まったく戦国武将はこのパターンから逃れられないようだ。


「殺さん」と晴信。

「上杉憲政は越後に去った」

「貴公は誰に忠誠を誓って上野国を守っているのか」


「北条や武田殿の好き勝手にはさせん」と業正。


晴信はこの時を待っていた。


「では北条も武田も今後は2度と手は出さん」

「なんだと」

「その代わり越後の虎とも縁を切れ」

「これが条件だ」


長野業正は即答しなかった。


戦いに次ぐ戦いに明け暮れてきた猛将の心境は複雑だ。

ここは利根川を挟んで肥沃な地が続く。


独立が保証されるなら。こんないい場所は他にない。

七道のひとつ、東山道の要所である。


結局、業正はOKした。


誓紙が交わされ、上野国は同盟国となった。


戦国時代の誓紙はただの紙切れだった。

だが破られるにせよ時間稼ぎに有効だ。


長野業正は長年の謀攻に疲れ果てていた。

疑う事しか出来なくなっていたのだ。


そこで晴信は奇妙寺に上野国の開発を依頼した。

甲斐国の奇妙寺の技術は振り切れていた。


その技術が上野国になだれ込んできた。

ただし兵器兵站は除く。


舗装され馬車が走る街道、鉄路が敷かれ陸蒸気が走る。

熱交換器の低温保存で、生鮮食品の流通が可能となった。


流通は劇的に加速され、市場は活気に溢れた。

三崎マグロの刺身が店頭に並んだ。


庶民A「マグロの刺身だと?」

庶民B「一皿50文(600円)かあ」

庶民C「うまい、やすい!」


耕起が機械化された。

整地も機械。

播種も機械。


とくに田植えが機械化されて、全農家がぶったまげた。

泥田に腰をかかめて苗を1本ずつ植える。


普通に重労働であり、家族総出でも乗り切れず、近隣の援助でやっと乗り切る始末だった。


農民A「ほええ!ほえっほえええ」

農民B「午前中に田んぼ24枚、田植え完了とか、バケモノかよ」

農民C「あうあうあ」


これにより上野国の収穫は跳ね上がった。

南蛮の農作物も大量に入ってきた。

もはや異次元農業と化した機械化農業。


農民ABC「奇妙寺の僧形はバケモノか」


奇妙寺僧形「皆さん、そうおっしゃいます」


奇妙寺の僧形は平気の平左であった。


その後の作業も全て機械。


農民A「土に1回も触ってない……」

農民B「畝立ても機械化されてる」

農民C「1番楽なのは農家なのでは……」


こうして越後から相模国への通路だった上野国は独立した。

甲斐+相模+駿河+上野の四国同盟だ。


上杉憲政は自分から捨てた自国を返せとも言えず、亡命先の越後で歯ぎしりした。

次回は「1558年晴信次男信親」です。

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