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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第7章
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1548年小笠原長時攻略

1548年小笠原長時謀反。


晴信が村上義清にボロ負けしたのを知った長時は微笑んだ。

「今がチャンスだ」


諏訪西方衆を扇動しての叛乱だった。

武田に従っていた筈の領主たちは一斉に離反の意志を示した。


武田の諏訪支配が危ない!


晴信はただちに出撃した。

武田軍は甲斐を出発すれば諏訪は1日の距離である。


しかしなぜか全然進まない。

臨戦態勢だった小笠原軍の緊張はピークに達していた。


来ない。

攻めて来ない。


だが前回はこの手に引っ掛かったのだ。


また予想外の策に出るぞ!

24時間監視しろ!

……。

…。

8日間が過ぎた。


ここは小笠原最前線詰所。

目の下にクマを作った青白い顔の兵隊がふらふらと巡回監視に出ている。

24時間ぶっ通しで厳重警戒だ。


詰所では突っ伏したまま動かない兵もいた。

限界だ……。

来るなら早く来てくれ……。


わかりましたぁ!


俗に朝懸けと呼ばれる戦である。

突然武田軍精鋭500が出立した!

夜が明ける直前に武田軍は塩尻峠にある前衛軍に襲い掛かった。


 フラフラの兵はまたたく間に切り伏せられ、本陣に急を知らせる隙も作らせなかった。


小笠原時実本陣。

「何!武田軍の急襲だと?物見はどうした?」と時実。

「夜陰に紛れての急襲にて知らせる間もなかったと……」と側近。


<言えない、本当は寝ていましたとは……>


「ええい、地の利はこちらが有利だ。勝弦峠で迎え撃て!」

「はっ」


勝弦峠は諏訪湖の北、3.6kmにある標高1kmの峠だ。

諏訪湖の標高が759mあるので、実際は300m弱の低山である。


勝弦峠に敵主力が集まり始めた時だった。


同時刻、諏訪湖から離れること25km。

ここは信濃国諏訪郡上原(現在の茅野市)。


グォロンッ、グォロンッ。

やがて山のような化け物が武田軍に追い付いてきた。


武田240mm列車砲である。

射程は50km。

挿絵(By みてみん) 


列車であるから、鉄路がなければ、何の意味も無い兵器だ。

幸いなことに「晴信棒道」には、諏訪まで鉄路が敷かれていた。

陸蒸気で牽引してようやくここまで到着したのだった。


これは実はインドのゴアで要塞攻略に使ったモノと同型だった。

晴信はこれを待っていたのだ。


勝弦峠に敵主力が集まった所を超長距離射撃で撃滅する。


勝弦峠は諏訪湖の西北に位置する峠である。

勝弦峠-上原間が25kmで充分射程距離である。


ガッチャンッ、ガチャンッ、シューゥゥーッ。


連結器を軋ませながら136tの巨獣は停車した。

旋回機能を使って照準するために、ジャッキを使って地面に固定する。


列車砲に旋回機能を付けたため、このような仕様となった。

<普通は旋回機能は無い>


同時刻、勝弦峠。

「地の利を得たぞっ」

小笠原軍は色めき立った。


勝弦峠の頂上を先に制したのである。

後は弓矢や槍でもって武田軍を成敗してくれる!


と思った矢先であった。


ヒューゥゥーンンッ、ドッガアァーン!

雑木林に240mm列車砲の榴弾が炸裂した。


「!」

小笠原軍は一挙に、魂を抜かれたような有様に陥った。


ただ小笠原時実だけが冷静だった。

「どうした!報告しろ!」


「諏訪湖方面より閃光を確認」「20秒後に着弾しております」と物見。

「馬鹿な!諏訪湖の彼方からではないか」


大筒か?

「どんな大筒で地平の彼方からう」


ドッカアァーンッ、バリバリバリッ。

本陣の施設の屋根が吹き飛び、壁は消え失せ、地面は捲れ上がる。

240mm榴弾の威力は異常値である。


神田将監も駆け付けた。

「と、とにかくお逃げ下さい!ここでは持ちませぬ」

「馬鹿な!もしこれが夢でなく現実ならば」

と長時は頬を(つね)った。


痛い。


「どこのどの城でも支えきれぬわ!」

ドッカアァーンッ、バリバリバリッ。

「と、とにかく今は兵も浮足立ち、戦になりません!お引き下さい!」

「ええい!ならぬわ!」

小笠原長時は近習に無理やり引きずられながら敗走した。


神田将監、死んでない。


この砲撃は諏訪の領主たちの度肝を抜いた。

手の平を返すとは、まさにこの事であった。


武田の勢力を追い出して諏訪の利権を取り返そうなんてとんでもないです!

180度考え方が変わりました!

<武田の勢力に憑いていけば(笑)甘い汁にありつけるかもしれないぞ>

怨敵小笠原長時に我々は騙されていたのです!


裏切り・離反は戦国の常。


晴信はううーんと唸っていた。

余りにもあからさまな恭順であった。


その目がイヤだ。

逃げ足が速く、いつも強いものにつく、あの態度が不愉快だ。


……。


だが天下統一を目指すなら、外様はきっとこういうヤツしかいないのだ。

 選ばれた優れた臣下に任せる統治のもいいが、誰でも任せられる優れた統治を考えねばならぬ。

そうでなければ武田は次の一代で滅ぶだろう。

そう心に戒める晴信であった。

次回は1549年天下統一への道です。

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