1535年TBM工法
TBM工法についてです。
TBMとはトンネル・ボーリング・マシン(全断面トンネル掘削機)の略である。
<ここではシールドマシンはTBMの一種として類別する(異説有)>
文睡という僧形は海でフナムシやフナクイムシをじっと見るのが好きだった。
甲斐信濃には海が無いので、奇妙寺駿河支部で常勤するようになった。
駿河支部では富士川沿いの地質調査で大忙しだった。
数年後に迫った駿州往還の土木調査で夜を徹しての大事業である。
フナクイムシは貝の仲間である。
貝がらはフチがおろし金状のギザギザになっていた。
フナクイムシは掘る前に吸盤に似た足の部分で身体をしっかりと木のうろに固定する。
そして、徐に、おろし金状のギザギザを前後に動かして木を削り落とす。
木の粉末はフナクイムシの口に吸いこまれる。
木の粉末はセルロースを消化する特殊な酵素によって消化される。
これが繰り返され、海中の木材に穴を空ける。
空けた穴には薄い石灰質の膜を張り付け、水中の木材の膨張から穴が崩壊するのを防ぐ。
「ああ、これだ」と文睡は閃いた。
文睡が考えたフナクイムシみたいな切削装置FMCD(Funakui-mushi_Mitaina_Cutting_Device)はこうだ。
①ツルハシを持った坑夫36人が貝のおろし金状のギザギザみたいに並ぶ。
②完成予定の隧道と同じ大きさの殻状の鉄材が切羽の崩壊を防ぐ。
③掘った穴をすぐ裏張りする煉瓦貼り坑夫を配置、すぐ隧道壁を完成する。
この要領でフナクイムシみたいにどんどんトンネルを掘り進む。
1535年トンネル工事で使ってみた。
場所は甲斐国甲府の地下50mに作るトンネルだ。
用途は秘匿だが「地下鉄」というものだそうだ。
①まず縦穴を掘って地下にシールドマシンの部品を降ろす。
②縦坑はリフトアップ工法で施工する。
③降ろした部品を組み立ててシールドマシンの形にする。
直径10mの巨大なマシンには切り場に36人の坑夫の部屋が用意されている。
①そこで各々が手掘りで、210cm掘り進む度に停止する。
②鉄製の殻枠を210cm前進させる。
③210cmx100cmx60cmの煉瓦を素早く積み込み、トンネルを完成させる。
④また210cm掘り進む。
これを繰り返し繰り返して進むのだ。
同じ作業の繰り返しでうんざりするわけだが、安全で確実な作業である。
掘ったそばからトンネルが完成しているのだから。
これはしばらくするとセグメント(トンネル壁)を使う工法に変わった。
セグメントは鋼製だったりコンクリだったり用途によって選択する。
トンネル壁を5~6分割したものがセグメントでこれを締結してトンネルを形成する。
セグメントを壁に押し付けるのがエレクターという機械だ。
床に置いたセグメントをアームが掴み、ぐるっと指定の場所にまわして押し付ける。
そこを素早く締結して固定する感じである。
掘りだした土砂はズリ積み機で、ズリ鋼車に積載される。
後は鉄道が敷かれていて、ケーブルカーよろしく牽引される。
トンネルから出たら、敷設された別の鉄道に積載されて運ばれる。
やがてこれは、圧搾空気を用いたピストン駆動の全自動マシンになった。
岩石地帯では使えない。
柔らかい土壌、市街地の地下や、天井川の下を通る道路にうってつけだ。
現代では東京湾アクアラインがTBM工法で掘られた。
海ほたるに、でかいTBMのカッターフェイスのモニュメントが立っている。
このようにして、トンネル工事は格段に進化していった。
富士川沿いの地質調査はついに終了した。
土質が悪く、砂礫の多い崩れやすい場所が多い。
TBM工法の出番である。
次回は「清水港」です。
定恵院さくらが登場!