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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第6章
62/169

1505-1533年インカ帝国001

ピサロ対皇帝の対決です。

スペイン人の南米での探索は続く。


 ピサロとアルマグロは、1521年と1526年の2度にわたり、南米大陸太平洋岸を探検した。

拠点はパナマの太平洋沿岸である。

パナマはスペイン支配下にあった。


都市トゥンベスに到着したピサロとアルマグロ。

「ここがインカの首都か?」


通訳によると

「違います」

「ここは地方都市トゥンベス」

「首都クスコは遙かに偉大で壮麗な超巨大首都です」


ピサロとアルマグロは仰天した。

この都市でさえ、こんなにでかいのに!


だが文化は変な発達度を示していた。

鉄もない、車輪もない、文字もない。


豊かな生活と穏やかな統治がある。

しかし貨幣もない。

流通と経済はどうなっているのか?


???

だがそんな事より気になる事がある。


奇妙寺のあやしい動きである。


すでに奇妙寺がアステカ帝国の後ろ盾になっている事は本国に知れ渡っていた。

コルテスが戦わずして逃げ出した事はキューバ総督経由で知っていた。

アステカ王国はもはや征服出来ない中米の強国である。


凄まじい威力の武器で武装した軍隊が駐屯している。


インカ帝国にも奇妙寺+武田軍の少数精鋭部隊が入っているだろう。

少数精鋭の最新兵器に対抗出来るのはただ一つ。


バカが付くぐらいの大部隊だ。


以前の冒険で都市トゥンベスまでの衛星都市国家に蜂起を促してある。

その数は数万人にも上っていた。

彼はこの地にサン・ミゲル・デ・ピウラを建設し、足がかりとした。

挿絵(By みてみん) 

ここピウラでピサロは、皇弟と皇兄が王位継承の件で、クスコを発ったのを知る。


向かう場所は県都カハマルカ。


アルマグロ「皇帝軍は80000人の大部隊だと聞く」

「方策はあるのか、ピサロ?」


ピサロ「神聖皇帝を生け捕りにすれば、軍は瓦解する」

「ここでは皇帝は神なのだ」


バルベルデ「神父の私が聖書を皇帝に渡します」

「インカには字がありませんから読めない筈」

「地面に捨てる瞬間が合図です」


当時、スペイン人に逆らう行為は宣戦布告と同じ意味だった。


3人「そこで輿に載った皇帝を引きずり下ろす」

「完璧で完全な奇襲となるだろう!」

「ふっふっふっ」


 いよいよピサロ達168人のスペイン人と数万人の衛星都市国家連合軍は県都に入場した。

皇兄ワスカルと皇弟アタワルパは神殿のある中央広場まで迎えに出た。


浅信があらかじめ配置しておいた狙撃兵に指図しようとした時だった。

スペイン人達の武装が報告と違っている事に気付いた。


「狙撃まて」と浅信は指図した。


我々と同じ武装だったのだ。


実際はこうだった。

前からアステカ王国を教化してきた武田の使節団。

彼らは奇妙寺の技術僧形と協力して、大量の兵器を現地生産した。

武器弾薬は、演習の薬莢の回収まで管理され、武器庫は現地軍が管理した。


それでも管理に(ほころ)びが有り、武器の横流しに気付かなかった。

武器弾薬が周辺都市国家にこっそり流れていたのであった。


それをスペイン連合軍は手にしていた。

使い方は作り方ほど難しくない。

あっという間に習得しただろう。


「狙撃中止!作戦はフェイズⅡに変更!」


同じ兵器で同じ兵站なら、同じ戦略戦術もありうる。


どこかで、誰かが、きっと待っている。


スペイン狙撃兵がインカ皇帝を対物ライフルで狙い、発射命令を待っているのだ。

こちらが撃てば相手も撃ち、相撃ちになるなるだろう。


フェイズⅡはより穏便な作戦である。


 やがて、スペイン人とドミニコ修道会の修道士が、ワスカルとアタワルパの前に進み出た。

 神父は聖書を差し出して、通訳を通じてしゃべろうとしたが、皇兄ワスカルに遮られた。


 「異国からの訪問者も、我が人民と同じく、領土内ではインカ帝国の司法によって守られている」

 「ここはケチュア語を話す民族の国、皇帝が国家を支配統治する、君主制の国家の領地内である」

 「不適切な発言や行動は、国家たるインカ帝国の法律により、皇帝の権限により、厳しく罰せられる」

「異邦人はインカ帝国内に滞在する限り、インカの法律に従うものと心得よ」


通訳はスペイン語に通訳し、


神父は口籠った。異教徒ども!邪心の神に狂う土人が!


 彼はキリスト教改宗を迫り、拒否するなら(当然拒否すると踏んで)宣戦布告だと難癖をつける筈だった。

神父は無言でさらに1歩進んで、聖書を差し出そうと、(かしず)こうとした。


インカには文字が無い。

スペイン語の文章も分からぬ筈。

さあ投げ捨てろ。


それがスペインに対する宣戦布告とみなされるのだ。


「聖書を見せなさい」とワスカル。


牧師は驚いて聖書を渡した。

ワスカルは紙面を捲りながら、興味なさそうに見ていた。

その指がとあるページで止まった

「コリント人への手紙4-2」

 「恥ずべき隠された事を捨て、悪巧みに歩まず、神の言葉を曲げず、真理を明らかに」


アタワルパが続けた。

「聖書の言葉は聖職者にとって神聖なもののはずだ」

「あなたは本当に神の子か?この私でさえ正しい道を常に探っているというのに」


勿論これは浅信の差し金である。

異教徒のインカ皇帝に聖書の言葉で返されては、ぐうの音も出なかった。


「ぐう」と神父。

けっこうしぶとい。


皇帝が聖書を投げ捨てると同時に宣戦布告し、襲い掛かる筈だった。

だが手筈は違う方向に流れようとしていた。


「コンキスタドールのフランシスコ・ピサロよ」


呼ばれてビクッとしたピサロ。


「コンキスタドール(征服者)などと身の程をわきまえない差し出がましい者よ」

「部下を連れてスペインへ戻るが良い。国境までは親衛隊が送ろう」


いつの間にか168人のスペイン人達は1人づつ4人の親衛隊に「護衛」されていた。

もはやこれまで。

ピサロは観念した。


後日、ピサロはトゥンベスからパナマへ強制送還されている。

 作ったサン・ミゲル・デ・ピウラはスペイン居留地として日イ共同管理地となった。

次回はインカ編最終回です。

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