1505-1519年アステカ王国000
アステカ王国編です。
渡洋して南アメリカへ向かいます。
外洋船の開発と蒸気機関の開発。
マラッカ王国に進駐する一方、奇妙寺は太平洋航路開発に乗り出した。
新大陸アメリカへの渡洋航路の開発だ。
太平洋の海流の研究は10数年を要した。
そして1505年。
渡洋船の十分な要素を研究し尽くした奇妙寺は太平洋渡洋に挑戦した。
機帆船のスクーナー3隻による冒険旅行であった。
1隻は探検船、1隻は補給船、1隻は緊急時の脱出船だった。
海流は北太平洋の亜熱帯循環の東流に乗って北アメリカ大陸に到着する。
北アメリカ西岸にはカリフォルニア海流が南下しており、それに乗って南下する。
帰りは北赤道海流の西流に乗ってフィリピン近海に到達し、黒潮に乗って日本に帰還する。
海流と言っても無数の渦が連続して蛇行しているのだ。
機帆船でなければ到底安全な航行は出来ない。
旗艦「そうや」を含め3隻の船団である。
2回遭難しても帰還できるだけの準備がなされた結果だった。
最終的に脱出船1隻で帰還できるようにしたのだった。
およそ25日で北アメリカに到着、上陸する。
1492年、既にスペインがアメリカ大陸を発見している為、新発見ではなかった。
物資を補給しながら、沿岸にそって南下した。
目指すは南米アステカ王国である。
スペイン諜報局から摂取した情報に寄れば、強大な王国であるという。
だが鉄器はもだず、武器は石による戦斧である。
なお、南米では馬は絶滅している。
ザバアーン、ザバアーン。
波頭が舳先で砕ける。
海の色はコバルトブルー。
駿河の海しか知らない僧形は興奮気味だ。
僧形A「なんだよ、その「神」って書いた紙の王冠は?」
僧形B「南蛮の風習で、赤道祭というものをだな」
僧形C「アステカ王国は北緯19度なので、赤道より上です」
僧形ABC「あああああっ」
探検船「そうや」船上。
「暑くなってきましたね~」と船員。
「そうや」と奇妙寺僧形。
・
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……。
……。
……。
「どうだ、寒くなったろう」
「……はあ」
10日後。
カリフォルニア湾をさらに南下、アカプルコに到着。
現地の言葉が全然分からない。
言語は古ナワトル語だ。誰も知らなかった。
スペイン語が分かるアステカの民がおり、スペイン語で意思疎通を図った。
スペインのアステカ王国到着は1519年だ。
しかし、1505年の今でさえ彼らは浸透していた。
アステカ王国首都テノチティトランに到着(現メキシコ)。
テスココ湖の島上に建設された人口20万人の巨大都市だ。
奇妙寺次席補佐官「閣龍」が貢物を持って国王モクテスマ2世に謁見した。
ものすごーく印象が悪い。
スペイン人が異邦人の来訪を侵略と虐殺と征服に印象付けていた。
王は一言だけ言った。
「殺せ」
巨大な宮殿の王宮の間は吹き抜けだ。
下まで40mはあった。
彼は万が一の為にフライングスーツとパラシュートを準備してきたのだ。
一見すると袴装束に見えるがそれは偽りであった。
閣龍は王宮の間の床を蹴って思いっきり宙に舞った。
警部兵が1人、一緒になって宙に舞ったが、真っ逆さまに落ちていった。
すぐパラシュートを開き、軟着陸転倒(5点接地法)する。
すぐさま脱兎の如くに逃げ去った。
翌日。
アステカの王宮は大騒ぎの後、沈黙していた。
日本の使節団も、湖畔に陣を張って、沈黙していた。
アステカ貴族は徹底抗戦の構えだった。
だが王は考えていた。
<戦になれば負ける>
使者は空を飛んだではないか。
空飛ぶ民に勝てる道理がなかったのだ。
翌々日。
アステカ貴族に乱れが出始めた。
この機に乗じて宿敵トラスカラ王国に通じる者が出始めたのだ。
また勝手に日本使節団に取り入る者まで出始める始末だった。
内部崩壊だ。
王は決断した。
3日後。
王の使者が日本使節団を訪れた。
「王宮との間に中立地帯を設け、使節団を招待したい」
今度は平地だ。逃げ場はない。
「お受けする」と閣龍。
3日後の当日。
粛々と王の輿と数百人の従者がやって来た。
「密林を切り開くので、お待ち下さい」と王の輿と数百人の従者を下がらせた。
使節団の引いてきた75mm速射砲はアステカの民が初めて見る鉄の棒だった。
「のぞかないでください……」
砲身に頭を突っ込んでいる住民を引っこ抜いて下がらせた。
「うちーかたはじめー!」
ズバンッ、ガランガラ~ンッ、ズバンッ、ガランガラ~ンッ。
輿を担いだ従者も大貴族もポカーンと口を開けて観ている。
閣龍「口を開けていないと鼓膜が破れる事があると知っているのか?」
ヒューウゥゥーンッ、ズガァァーン!ズガァァーン!ズガァァーン!
着弾地点は地獄だった。
樹木は飛び散る、岩石は火花を上げて砕け散る。
終わると密林は無くなって綺麗なサラ地になっていた。
「お待たせしました、どうぞ」
輿を担いでいた従者も着飾った大貴族も逃げ出して、王は腰に1人座って、腰を抜かしていた。
ススッと幔幕を張り巡らして臨時の式典場を設えた。
「さて、モクテスマ2世殿、ここは腹を割って話そう」と閣龍。
「」とモクテスマ2世。
「スペインのコンキスタドールどもはハラパ(現メキシコ国ベラクルス州)に達している」
「木製の根棒と石の刃では、いかな武勇を誇るアステカの猛戦士とて一撃で葬られよう」
王の頭脳は目まぐるしく回転していた。
最精鋭軍団たる「ジャガーの戦士団」。そしてその守護たる軍神テスカトリポカ。
だが勝てるか?
いやその前にむしろ問いたい?
名誉ある死を伴う戦になるのかどうかである。
王は戦士である。
黒曜石の戦斧を奮って、先陣を切って、戦ってきた闘将でもあった。
死は恐れない。
名誉ある死は誉れでもある。
だがこの兵器はどうだ!
火力はどうだ!
破壊力は?
痛みと死を受け入れる事で神の御前に導かれるのではなかったか?
瞬間で粉みじんになったら、死んだと分かるのだろうか?
……。
……。
「以上である。王よ、我々の援助を受け入れるか否か」と閣龍の長い演説は終わった。
「受け入れよう」と国王モクテスマ2世。