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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第6章
56/169

1500-1510年マラッカ王国002(戦闘と経緯)

戦闘の続きです。

ポルトガル人は知らなかったが陣地は移動していたのだ。


撃ったらすぐ移動する。

誰もいなくなる。

砲弾の雨が降る。

次の陣地で砲を艦隊に向ける。

また装填して撃つ。


これは秘匿兵器75mmカノン砲だ。

液気圧式駐退復座機を装備し、連射機能がある。

連射は15発/分である。


ここで特筆すべきは「射撃管制装置」があることだ。


射撃盤は歯車計算機で関数を計算する特殊装置である。

初速度+打ち出し角度から、発砲諸元数値を計算する。

滞空時間、到達高度、到達距離だ。

空気抵抗を加味して、計算射程距離から減算する。


砲専用のジャイロスコープが付いており、北基準の真方位を採用した。

コリオリの力は発見されていないが、数値として加味されている。

「滞空時間17秒、到達高度384m、距離8720m!」

「10秒有効」


射手はプリズムを通してスコープに移る画像を合わせるだけだ。

これが砲の歯車を動かし、角度を決める。

炸薬量500。これは初速度500m/sを得るための炸薬量の意味だ。

装填手が「500」と打刻された砲弾を装填する。

陣地を移動しようがどうしようが、照準はピタリと合っていた。

「修正値来ます」

「角度修正9.7」

「10秒有効」


2m測距儀で観測した距離観測員から修正値が来た。

ポルトガル船はもう逃げられない。


ズバアアーンッ!


舵を失った艦隊は射撃の的だった。

今度はこちらから十字砲火だ。


後ろからも前からも砲弾が飛んでくる。

撃って撃って撃ちまくられてマストは折れ、船縁は穴だらけになった。

それでもポルトガル兵はボートで上陸してきた。


「やらせはせん!ポルトガルの栄光!派遣艦隊のプライドッ!」


士官は叫びながら上陸してきた。


その士官を超長距離で12.7mm対物ライフルが狙っていた。


バアーンッ!


対物ライフルは装甲版を打ち抜く為の強力な兵器である。

それを人間に使ったのだからたまらない。


生存確率0%。


士官は消え失せ、いなくなっていた。

部下はスペイン人とポルトガル人の混成部隊であった。

忠誠心や愛国心に燃えて派遣艦隊に応じた訳ではなかった。

上陸部隊は士官が倒れて全員が降伏した。


日が暮れるまでに雌雄は決していた。

ポルトガルのアルプケルケ艦隊は敗北したのだ。

この報は直ちに東アジアを駆け巡った。


ポルトガル領となっていたゴア(インド)にもこの報はもたらされた。


 1510年にポルトガル領となっていたゴア(インド)では支配者への不満が鬱積していた。

ゴア、カリカット、マンガロール……、次々と飛び火する蜂起の嵐。


現地人は武装蜂起し、ポルトガル人を追い出して支配を覆した。

その手にはライフル銃が握られていた。


ポルトガル人は自分たちの建設した要塞に立てこもった。

そこに75mm砲が現地人たちによって引っ張られてきた。


「対要塞戦だから、もうちょっと大きい砲も用意するか」

オスマンの将校もインドの軍技術者もニヤニヤしている。


15m測距儀が用意された。

望遠レンズを組み込んだバケモノである。


こんなもので測距するということは……。

鉄路が要塞の近く敷かれてきた。

そこに現れたのは……。


「ひっひいいいっ」

「死ぬ!死んでしまう!」

ポルトガル兵は支離滅裂に暴れ出した。


「うろたえるな!」

上官らは冷静を装っていた。


10年前にディーウ沖海戦でアラビア海連合軍を撃破した時と違う!

敵のガレー船から矢を射かけてきたのを笑ったものだ。

こんな事があるはずがない!


奇妙寺がマラッカ王国に加担していた10年間。

忘れもしないディーウ沖海戦。

ポルトガルの火砲とオスマンの弓矢の戦いだった。


火砲さえあれば!

オスマン帝国もグジャラート・スルターン朝もマムルーク朝ザモリンも屈服した。

ムスリム商人たちもインドの中継貿易地の商人も煮え湯を飲まされた。


その10年間にオスマンもインドも追いつこうと猛烈に勉強した。

日本がマラッカにもたらした技術こそ求めていたモノだったのだ。


だがやはり東ヨーロッパの権威と誇りが邪魔だった。

極東の劣等種族に教えを請うなんぞ、絶対に出来ない!


絶対に?

本当にそうだろうか?

くだらないプライドが邪魔しているのだ。

よし、じゃあ踏みにじれ!


頭を下げて巨大帝国オスマンは奇妙寺に教えを請うた。

奇妙寺は全てを教えた。


もとから、砲塔を作る技術はあった。

高炉による製鉄技術も、平炉による添加物投与も存在した。

あとはブラッシュアップだ!


ガンドリルとライフリングマシーンの技術も伝授された。


イスラムの技術者はその機能と機構を学んだ。


切削のための高速度鋼の成分表も伝授された。

タングステン+マンガン+炭素の添加物の最適値が載っている。


こうして火砲の製造を準備した敗戦国側は、国力を上げて兵器製造に傾倒した。


反旗を翻す限りは絶対に負けられない!

ポルトガル艦隊をインド・アラビア海から追い出すのだ。

ただし商人は歓迎する。

港湾使用料を払って、普通に通商する限りは。


ポルトガル軍は降参した。

戦端は開かれなかった。

鉄路は撤収され、その「何か」は去って行った。

要塞は明け渡され、代わりにインド兵が入った。

今度はインド鉄壁要塞となって、ポルトガルの脅威に備えるのだ。


要塞は再構築された。

星形要塞だ。


ポルトガル艦隊技術士官は目を回してぶっ倒れた。

無理もない。

脳のキャパを越えてしまったのだ。


「イヒッ」

「イヒヒヒッ」


これを一体、どうやって報告書にまとめて、本国に持ち帰ればいいのだ?

技術士官はおろか部下の技術者も全く分からない!

あまりにも突拍子もない先端技術だ。

従来の想像の域を超えていた。


わからない、ぜんぜんわからない~。


ポルトガル軍は這う這うの体で本国へ逃げ帰った。

これにより1509年以来の東インド洋沿岸の海上支配も覆った。

ポルトガルはインド洋ベンガル湾側の制海権を失ったのである。


ここでオスマン帝国に肩入れした事が仇となった事態がある。

 東のサファヴィー朝は同じイスラム教でありながら、宗派の違いから西のオスマン帝国と対立している。

そのため、イスファハーンから奇妙寺は撤退せざるを得なかった。


決裂である。


「うっう」

イスファハーンのイラン人僧形は泣いていた。

本日をもって、日本人僧形は国外追放だ。

「あなたには奇妙寺の全てを伝えました」

日本人僧形は語る。


「奇妙寺大全」

印刷技術があるため、写本ではなく印刷物である。

技術+医療+化学……。

全て閲覧出来るように図書館に寄付した。


閲覧禁止になりすぐ書庫に仕舞われてしまったが。

焚書にはならなかった。

その価値は認められていた。


「必要な時に必要なだけ」

「広めるのではありません」

「求められた時にのみ与えて下さい」


「分かりました」

イラン人僧形は素の表情に戻っていた。


マラッカ王国に日常が戻ってきた。

西側諸国からの艦隊が去った後、様々な国の商人は噂していた。


東アジアに凄まじい国家が存在する……。

キーミョウデール……。

あの奇妙寺だ。


いやそれ、国家じゃないです、日本です、ニッポン!


 今までジパンガスとかジャンポンとか言われていた東の辺境な島は急に注目を浴び始めた。

戦いが終わり平静が戻り始め、日常がマラッカ王国に戻ってきた。


軍隊は叩きだす、だが商売人は歓迎する。

これが国際都市マラッカの暗黙の掟である。


ポルトガルやスペイン、アラブ、ベネツィア等の商船がどっと港に戻ってきた。

 西洋が撤退すると脅威となるのが海賊で、この海域(ベンガル湾)は歴史的に多かった。

 そこで強力な日本船と日本の武器で武装した中国のジャンク、インドのダウが警備に当たった。


かつては青銅製の鋳造大砲が重くて載せられなかったダウ船。

今は30mm砲が載せられて、意気揚々であった。

リボルバーキャノン!

6連発だ!


様々な国の商人が品物と情報を取引するのが国際港の常である。

ポルトガルやアラビア、ベネツィアの商人はマラッカで奇妙寺の脅威を知った。

そしてその先にある未知の国、日本。


だが、その先には行けなかった。

マラッカ王国は日本の同盟国である。

ポルトガルの船は通さない。


スマトラ島とジャワ島の南側にも海峡がある。

ここを通れば、マラッカ海峡を経由する必要はない。

だがこの海域は倭寇が支配する魔の海峡だ。


結局、明国との通商は中国のジャンク船が今まで通り執り行うしかなかった。


とりあえず日本の絶対防衛圏は間に合ったのだ。

日本の絶対防衛圏は間に合いました。

次回は「1500-1510年マラッカ王国003」です。

マラッカ編は終了し、次々回からは「アステカ・インカ偏」です。

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