1430-1470年ニトロセルロース・無煙火薬コルダイト
硝酸を工業的にで生成します。
ニトロセルロースを発見します。
無煙火薬のためのアセトンを生成します。
奇妙寺化学事業部。
彼らは火薬の化学合成を目指していた。
火薬とは硝石(硝酸)+木炭+硫黄から作る化学薬品である(黒色火薬)。
硝酸の材料の硝石は日本では産出しない。
硝酸を得る方法は臭くて生成に時間が掛かり過ぎる方法しかなかった。
亜硝酸菌が土壌中のアンモニアを亜硝酸に酸化する。
生じた亜硝酸を硝酸菌が硝酸に変える。
この最初のアニモニアが厄介だ。
アンモニア臭いのだ。
効率もすごーく悪い(5年掛かる)。
これにピンときたのが奇妙寺化学事業部の連中だった。
「くんくん、臭う、臭うぞ」
「これはアンモニアが原料に違いない」
アンモニアを大量生産して、肥料に使っていた奇妙寺農業事業部。
アンモニアを分けてもらって、化学事業部は、早速実験を開始した。
その結果彼らが硝酸の生産法を発見した。
硝酸の硝酸菌の発生による自然製造法には、アンモニアが絡んでいる事は臭いで分かった(ションベン臭)。
ならばアンモニアを研究すれば硝酸への道は開けるだろう。
実験が繰り返され、繰り返され、繰り返された。
化学の基本は高圧と高温だ。
反応が常温常圧より促進するからだ。
また、触媒の介在によっても、反応はべらぼうに良くなるのだ。
多くの物質は、鉄やスズ、白金を触媒として反応が促進する。
また圧力を上げても、温度を極端に上げても反応が促進する。
一酸化窒素から二酸化窒素へ、そして硝酸へ導く反応が要なのが分かってきた。
触媒に白金を繊維状にしたものに通すと、一酸化窒素が得られたり得られなかったりした。
可逆反応が起こり、もとの物質に戻ってしまうのだ。
最初、アンモニアを900度に熱して、白金触媒を介して、一酸化窒素を得ようとして窒素を得てしまった。
それは反応の段階で白金触媒への接触が長すぎてアンモニアと一酸化窒素が反応してしまう為だった。
触媒との接触時間を限界まで少なくしてやっと一酸化窒素を得る事が出来た。
これを空気中に放置すると、酸素と結合して二酸化窒素になる。
二酸化窒素を温水に作用させると硝酸と一酸化窒素になる。
硝酸は回収し、一酸化窒素はもとのサイクルに戻される。
<この後、圧力を上げて反応させると効率が良い事が分かり、現在は高圧法を用いている>
こうして何千トンという硝酸が工業的に製造出来る事が分かった。
硝酸が出来れば、硝酸と硫酸の混合した液体、混酸が出来上がる。
<混酸中には硝酸1分子と硫酸2分子からなるニトロニウムイオン1分子が発生する>
混酸の実験は危険なので木綿の前掛けをして慎重な上にも慎重に……。
「おわっ」
芭院という僧形が今日も失敗していた。
「やばいやばい」
机にこぼした混酸を彼は木綿の前掛けでよくふき取った。
失敗のし過ぎで、教官から目を付けられていた。目は激怒である。
「今度こぼしたらめっちゃ怒られる……」
芭院はこっそりストーブで前掛けを乾かしていた。
1時間後、180℃になった瞬間!
バインッ!
前掛けが爆発した!
「どっしぇーっ」
芭院はびっくらこいた。
木綿の主成分はセルロースである。
セルロースと混酸中のニトロニウムイオンが反応してニトロセルロース(無煙火薬)になったのだ。
こうして爆発の度に黒煙を生じ、火器をススだらけにし、有視界を黒煙で邪魔していた黒煙火薬の時代は終わった。
また石鹸を作る際に出る不要なグリセリン。
これを混酸で作用させるとニトログリセリンになるのを発見したのは草帽という僧形だった。
{彩円は生前ニトログリセリン錠を発見していたが明かさなかった}
ちょっとでも刺激を与えるとすぐ爆発する。
輸送には慎重を要するため、おがくずをギュウギュウに詰め込んだ木箱で輸送したら漏れて爆発した。
そこで珪藻土という詰め物でギュウギュウに梱包したら漏れても爆発しなかった。
吸湿性を見込まれて、珪藻土のバスマットとして現在も使われているものである。
これをトンカチでぶん殴っても爆発しない。
が、信管で爆発可能なのが分かった。
これが後のダイナマイトである(1444)。
うっかりダイナマイトを発明してしまったのだ。
またニトログリセリンの化学工場では、誰も心筋梗塞や狭心症の患者が出なかった。
不審に思った奇妙寺医療化学事業部は、あえて心筋梗塞や狭心症の患者を工場に送り込んだ。
誰も発作を起こさない。
この結果から、ニトログリセリンには冠状動脈を含む末梢血管拡張作用があることが推察された。
効果は即効性があり、一時的であった。
心臓の病気を完治させることは出来ない事もわかった。
無煙火薬コルダイトはニトログリセリンとニトロセルロースから成る生成物だ。
安定剤としてワセリンを添加する。しないと即爆発する。
これを溶かす溶剤はアセトンで、練って粒子状に加工して、弾薬に使用される。
このアセトンは木材を乾留して、木炭にすると生じる木酢液(木タール)が原料である。
これを熱して蒸気を集めれば、アセトンが得られる。
日本には木材が豊富にある。
山多き甲斐国では、むしろ特産物である。
むしろ炭焼きで捨てていた木酢液の活路が見いだされていた。
だがこれはちょっとしか採れない。
もっと莫大な量を量産する方法はないだろうか?
その頃、奇妙寺の化学事業部はエチルアルコール醸造過程で不純物を特定していた。
それは少量のイソアミルアルコールだった。
また、別工程で、デンプンを糖に変える研究過程を研究している僧形がいた。
食中毒の原因となるバクテリアは嫌気性で酸素のない環境で増殖する。
それはクロストリジウム属でボツリヌス菌やウエルシュ菌が有名だ。
酸素の無い、腸管内や大鍋の煮物の中心部で増殖する。
一晩寝かせたカレーが危険なのはそのためだ。
この属のある嫌気性バクテリアにデンプンから糖を作る発酵工程を試していた。
このバクテリアはクロストリジウム属アセトブチリクムというものだった。
かれはバクテリアを用いて、イソアミルアルコールそっくりの臭いの物質を偶然発見した。
だが、それはアセトンとブチルアルコールを含む混合物であった。
このバクテリアを使って、デンプンからアセトンを発酵を使って合成する。
そうすれば木酢液を蒸留して得られる少量のアセトンに頼らずに済む。
こうして莫大な量のアセトンが、工場生産出来るようになった。
これで弾薬の大量生産にメドがついた。
だがこれらは海外への喧伝はされなかった。
「いけません」
奇妙寺の諜報機関は海外の不審な動きを捉えていたからだ。
次回は熱交換器です。




