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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第4章
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1430-1470年櫓とスクリュー

櫓とスクリュー、軸封装置(メカニカルシール)です。

()で漕ぐとはどういう動作か?


蘭琴(らんきん)という僧形がその漕ぐ動作を分解してみた。


和船の推進力は一本櫓(いっぽんろ)といって、これを漕いで前進する。

櫓は櫓べらといってこれを水中に入れて、水を切って進む。

ギーコギーコ……。


①水に差し入れる

②漕ぐ

③水から出す


②の漕ぐの動作で推進力が生まれている。


この直線繰り返し運動は円周回転運動に変換する事が出来る。

つまり、ずっと水を描き続ける櫓べらを、軸に備えたもの。

それが1本羽根スクリューだ。

 羽根は、櫓べらのこねる様な動きを再現する為に平面ではなく、多少ねじった形状である。

そのかわり運動自体は単純な回転運動だ。


1本羽根はバランスが悪いので、2本羽根のスクリューにした。

だがスクリュー平面には、とてつもない荷重が掛かる。

そのために、試作の木製スクリューでは裂けてしまった。


そこで木製冶具を用いた鋳造で金属製スクリューを鋳る事になった。


材質はどうか。


すでに青銅品の鋳造は可能である(青銅の銅鐸は2世紀~)。

鉄の鋳造も高炉が出来ており、可能であった。


次は製造だった。


試作した木製スクリューを(冶具として)鋳造した。

銅80%、ニッケル4%、アルミ9%、鉄4%、亜鉛1%の合金だ。

5日間かけてゆっくり冷やし、切削工程にまわす。

形状が複雑なので材料を回して切削する。

最後に手作業で磨きをかけて完成だ。


こうして完成したスクリュー。


水中試験は無負荷で進められた。


ワッシュッ、ワッシュッ。

すごい泡だ。


問題は、このスクリューに発生する(キャビテーション)である。

蘭琴は、これはスクリューの形状にあるとみて、改良を続けた。

染料を水槽に流して、乱流と層流を見極めた。


(キャビテーション)が発生すると、スクリューの水を押し出す能力(推力)が極端に下がる。

これが難物でなかなかとれなかった。

かと言って、戦国時代に流体力学の公式がある訳がなかった。


銅合金のプロペラで試行錯誤を続けるしかない!

作っては壊し、の連続である。

やがてある種のパターンがあるのが判ってきた。


小さいスクリューで速く回すと(キャビテーション)が発生する。

大きいスクリューでゆっくり回すと(キャビテーション)が発生しにくい。


やがてたどり着いた完成品は現在のものと変わらなかった。


可変ピッチプロペラや二重反転プロペラが良いのは分かっていた。

可変ピッチにすれば、正転のまま逆進出来る、だがどうやって?

二重反転にすれば、一軸で安定性が得られる、だがどうやって?

シュナイダー推進も考えたが、構想だけで、実現する方法さえ思い付かない。

思い付いても、それを作る機構学の知識も生産技術も未発達であった。


水車のような外輪船推進は抗力で船は進む。

こういう方法もあった。

これはボートに乗り、オールで漕ぐ文化から発祥したものだ。


 もし日本がオールで漕ぎ、櫓で漕がなかったら、外輪船で漕ぐ効力にまずたどり着いただろう。

外輪船は結局、効率と軽量化でスクリューに負けるのだ。

日本が寄り道をしなかったのは偶然で運が良かったのだった。


最後はスクリュー軸の海水側と船内側を隔てる軸封装置(メカニカルシール)だ。

スクリューは回転する。回転には隙間が必要だ。

その摺動面の隙間からどうしても浸水する。

それを止めるのがメカニカルシールである。


名前は仰々しいが、仕組みはどうという事はない。

全体で把握しようとするから複雑に見えるのだ。

挿絵(By みてみん)

軸封装置(メカニカルシール)の個々の名称と役目はこうだ。

①スプリング:スプリング圧で回転環を押しつける。

②回転環:スプリング圧で、摺動面を介して固定環に押しつけられている。

③摺動面:回転環と固定環の接触する面。

④固定環:ハウジングに固定されている。


軸と一緒に回転環は回っており、船側の固定環と摺動面で接触している。

その回転環はスプリング圧で固定環に押し付けられている。

挿絵(By みてみん)

 回転するシールと静止しているシールの摺動面を制御する事で、漏れを最小限に抑えることが出来る。

こうしてスクリューが出来て、軸封装置も完成した。


だがここで蘭琴は致命的なミスを犯していた。


蘭琴「動力がなーい!」


蒸気機関も内燃機関もまだ先の話である。

畜力も考えたが、牛もウマも船には大きすぎた。


 古代ギリシャの「リーベス・ベリチスの無名人(発明者不明)」という本には畜力外輪船の挿絵がある。

ラックとピニオンを用いた伝達装置は水車の杵つき装置そっくりの構造だ。

牛2頭がキャプスタン軸のまわりを回って、その力で外輪船の外輪を回して進む。


だがこれは、発想だけで作られなかったかもしれない。

 牛が動き回るスペースはどう考えても船幅は4m、そうすると全長は少なくとも13mは必要である。

実は、これだけの大きさの船の推進力としては、牛6頭以上が必要だった。

つまり、畜力不足で船は動かない。


畜力動力船は、とうてい実現不可能だった。


では人力はどうか。

戦国時代の水軍の水軍書には「車輪船」の記述がある。

 マカオの海事博物館には417年に唐に登場した車輪船の宋時代のものが展示されている。

挿絵(By みてみん)


足漕ぎ式の人力外輪船だ。

外輪が小さいのは人力の不足によるものだ。

人力はあまりにも非力なのだ。


それと木製の羽根を鉄枠で補強した弱い水車構造にもよる。

水を掻くと圧力で折損してしまうというのもある。


しかも、ものすごく疲れるような気がする。

外輪船が廃れたのには「疲れる」という欠点もあったようだ。


だが奇妙寺のスクリューの研究は続く。

 やがて流体の対象は液体から気体へと変わり、スクリューはプロペラというものになるのだ。

次回は電球です。

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