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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第4章
33/169

1430-1470年時計と計算機

時計と計算機です。

機械式時計は13世紀後半に北イタリア~南ドイツで出来上がった(発明者不明)。

(おもり)を動力とした歯車と調速機、脱進機を備えた機械式時計だ。

文字盤と針ではなく、1時間に一回、鐘を鳴らす仕掛けだった。

器械的誤差は約1時間であった。


奇妙寺では時計の研究に夢中になる僧形がいた。

時間を1日24時間・1時間60分・1分60秒に区切る事は南蛮人から教わった。

それまでの子・牛・寅……をやめてアラビア数字に統一した。


だが何の為に時計が必要なのか?

僧形「えー、わかりません」


そう、時計は時期尚早(じきしょうそう)だったのだ。

ただ技術者というものは、そういうノウハウが大好きだ。

そして奇妙寺は、そういう手合いで一杯だった。


1番車_(香箱:ネコちゃんの座り方では無い!)ゼンマイが接続された歯車。

2番車_分針担当歯車で1時間で1回転する。

3番車_2番車から4番車にトルクを伝える役目。

4番車_秒針担当歯車で1分間で1回転する。

ガンギ車_時計の回転運動を間欠運動にする歯車。

アンクル_間欠運動送り部品。時計のカチカチ音はこの動作音から来る。

テンプ_間欠運動(アンクルからの反復運動)をコントロールする部品。


なお2番車から減速歯車を介して時針を12時間で1回転させている。


まだ日本人は本格的に海外に渡洋した事がない。

だから航海術に精密な時計が、どんなに必要な事かが知れ渡っていなかった。


どこから嗅ぎつけたのか、精密時計を完成させた翌日、南蛮人が訪ねてきた。

「トケイヲウッテクダサーイ」


松戸彩円は丁翁をジロッと見据えた。

丁翁は吹けない口笛をフスーッフスーッと鳴らしていた。


「……バレとるぞ」

「いやーっはっはっ」

「いやーっはっはっじゃねーよ」


ライフル銃は秘匿したが、時計は大々的に売り出す事になった。

倭寇の連中がわざわざ甲府まで出向いてきて、買いあさった。

六分儀と時計と三角関数表で安全航海が出来るそうだ。


南蛮から取り寄せたという三角関数表を見せてもらった。

角度を数値で表したもので、南蛮では普通に航海士が持っているものだそうだ。

六桁の数字が並び、あまりにも複雑で大変だ。


彩円「……け」

丁翁「け?」


「計算機が必要だ……」

「ええええええっ」


なんか松戸彩円が恐ろしい事をボソッっと言ったような気がする。

「そろばんじゃなくて?」

「そろばんじゃなくて」


 古代ギリシャのアンティキティラの歯車に見られるように、歯車式計算機の製作は可能だ。

1235年にエスファハーンのアビ・バクルが歯車式の暦計算機構を発明している。

時計機構を作ったならば、歯車式計算機も出来るようになる。


機構は簡単だ。

1の位の歯車が0-9の数字が書かれたドラムを回す。

それが1回転すると、隣の10の位の歯車が10分の1だけ回転する。

10の位の歯車が1回転すると、隣の100の位の歯車が10分の1だけ回転する。

100の位の歯車が1回転すると、隣の1000の位の歯車が10分の1だけ回転する。

コレの繰り返しだ。


こうして、6桁の四則計算が出来る計算機が完成した。


リセットは全ての歯車のドラムを9の数字が出るまで手で回す。

999999が揃ったところで、1の位の歯車を10分の1だけ回転する。

それで000000となり、リセットされるのだ。


これの逆をやれば引き算も可能だ。


掛け算は足し算の繰り返しになる。

例えば12掛ける12は、12を12回足して144を得るのだ。

5掛ける1000は、5を1000回足して5000を得る。

結構大変な作業である。


これは後日、演算歯車が追加され、高速化している。

これはX10、X100、X1000の歯車だ。


割り算はややこしかった。

割られる数から割る数を引き算していく。

0を越えて引かれるとチーンとベルが鳴るようにする。

引き算の回数が商の値で、0より下の値が余りである。


例えば12割る3は12から3を順に引いてゆく。

その回数が4になった(0を越えた)ら、5回目でチーンとなって終了。

商は5-1=4で、余りは0である。


145を12で割る場合も同じだ。

145から12を順に引いてゆく。

その回数が12になった(0を越えた)ら、13回目でチーンとなって終了。

商は13-1=12で余りは1だ。


和・差・積・商の四則計算機が出来上がった。


南蛮はあまり興味を示さない。

「すごいね」

この一言である。


南蛮はやはり恐ろしい。


彼らの数学者は、とんでもないものをあみ出そうと苦慮していた。

10を底とする常用対数f(x)=log xである。

計算尺と言われるものが世に出ようとしていたのだ。


奇妙寺の素っ破(忍者)が堺港や長崎で仕入れてきた情報だった。

奇妙寺の誰一人として常用対数f(x)=log xが分かる者はいなかった。

次回は櫂とスクリューです。

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