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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第3章
30/169

1430-1470年スキとクワ

農機具についてです。

(スキ)(クワ)は古代メソポタミア時代から使われてきた代表的な農機具だ。

プラウ(Plow)ともいい、数千年の間、変わらない形状だった。

古代エジプトの壁画にも残されている。

挿絵(By みてみん)

Plow(鋤)を牛に引かせてHarrow(砕土器)で耕している場面である。


松戸彩円と莫斯利(もすり)は甲斐国の地図を広げた。

甲斐は四方を山に囲まれている。

山しかない。


現代の測量では、全域の77.5%が森林であり、農地はわずか5.7%しかない。

 また、その農地の3分の2は山沿いにあって、きわめて農業に不利な条件にあった。


耕地面積のほぼ6割が田である全国平均に対して、甲斐国は3割弱と少ない。

これは果樹を主体とする落葉樹の割合が多いからだ。

米の自給率が53%しかない甲斐国はやはり赤貧国であった。


松戸彩円と莫斯利(もすり)は地図を指で摩りながら考えた。


もう少し耕作地があれば(チラッ)、安曇野、佐久、松本、伊那とか(チラッ)。

諏訪から北信濃にかけての水田が広がる穀倉地帯。

ここが甲斐の領土だったら、どんなにか、いいだろうなあ……。


だが諏訪も信濃も他国である。

他国であるから、いたしかたがない。

農作で使うあらゆる道具を機械化して、効率を上げるしかない。


農機具をバンバン改造する。

日本人は発明は下手だが、魔改造は大好きだ。


早速、奇妙寺の僧形は魔改造に着手した。

あらゆる手作業を自動化した。

工作機械があるので、農機具すべてを金属で加工する。

ねじがあるので部品は総てねじで締結する。

牛が引く重量に合わせて、大型化は見送る。

単機能の農機具で複合化はしない。


①畑、田圃(たんぼ)を耕す機械(プラウ(plough)、ロータリー)。

およそ紀元前12世紀頃に現れた耕作機械。当時は牛が引いていた。

これで地面を掘り返して②のロータリーハローで粉砕する。

挿絵(By みてみん)


②農地の土を砕く機械(ハロー、パッカー)。

①で穿り返された土塊を細かく破砕して、植え付けが出来る土壌にする。

地表面が細かく砕土される。

砕土の細かさは作付けする作物による。

挿絵(By みてみん)


③肥料や堆肥を撒く機械(ブロードキャスター、マニュアルスプレッダー)。

②で出来た砕土土壌に元肥を捲く機械(施肥機)。

主として堆肥や緑肥などの遅効性肥料が用いられる。

ホッパーは大中小が取り替え可能。

挿絵(By みてみん)



④種まき、植付けの機械(プランター、シードドリル)。

③で出来た土壌に種子の精密な播種と鎮圧、覆土を行う機械。

挿絵(By みてみん)


田圃(たんぼ)の土壌、作物管理の機械(カルチベータ、(うね)たて機)。

カルチベータ:おなじみ耕うん機。中耕・除草に適している。

挿絵(By みてみん)


(うね)たて機:耕うん作業で(うね)を作る機械。

挿絵(By みてみん)


⑥農薬散布の為の機械(スピードスプレヤー)。

文字通りの農薬噴霧器で、風向きで自分に掛かると大変。防護服を着る。

{農薬がまだないので、構想のみ(実機なし)}。


⑦収穫のための機械(コンバイン、バインダー)。

稲などを収穫する為の機械。

バインダーは刈り取りと結束を行ってくれる便利な機械。

米は天日干しをした方が味が良くなる。

{コンバインは動力がないので構想のみ(実機なし)}。

農家の民はぶったまげである。

「へ……えっ、これ、なにっあ」

「ウソだろ?」


日がな一日、耕していた畑が、プラウで20分で耕されしまった。

翌日だった砕土は、その後の20分でおしまい。

施肥機で堆肥を撒いて20分。

あんなに苦労した畝立ても20分で出来てしまう。


それにしてもバインダーである。

稲刈りは家族総出で重労働のひとつだったのに……。

20分で終わってしまった!


恐ろしいのは「1回も農民なのに土に触らない」ことだった。

そんな事が可能なのだろうか?

可能なのだ、奇妙寺の技術なら!


だがもっと恐ろしいのは値段である。

まあコンバインなどは1000万円は下らない、現代なら。


「お代ははいただきません」

「ほげえぇぇっ」

「そのかわり収穫の5%をいただきます」


奇妙寺の僧形はニッコリ微笑んだ。

たった5%!

農家の人々は二つ返事で承諾した。


だが、5%をずっと徴収するという事は……。

やがて積もり積もって莫大な金額になるのでは……。


さて、奇妙寺は日本の土壌分布について研究していた。

山から海にかけては、大体6種類の分布に分かれていた。


挿絵(By みてみん)

①ポトゾル

②褐色森林土

③黒ボク土

④赤黄色土

⑤泥炭土

⑥低地土

である。


甲斐国の山は②褐色森林土、平地は⑥低地土で出来ている。

②褐色森林土は山林の土壌で有機物が少なく、層も薄い。

⑥低地土は河川の氾濫による堆積土から成る。

土壌養分が豊富で肥沃な土壌だ。


釜無川の氾濫による出来たのが甲斐国の平地だ。

甲斐国の生い立ちがよく分かる。


農耕での土壌位について研究していた。

土壌層は何層にも積み重なった形になっている。

挿絵(By みてみん)


表層は有機物や菌、微生物が多く生息して肥沃である。

作土は耕転して、作物を栽培する層で、膨軟で養分に富んでいる。

心土は農耕具で攪拌されない層。緻密で有機物が少ない。保水層。

基層は農耕とは関係ない深層位である。

岩盤層は最下層の土壌の基礎岩盤。農耕とは関係ない深層位である。


この表土と作土を耕転して作付け、作物を育てるのだ。

だが何回もやってると作土も深い部分が踏み固まる。

それは農業機械の高重量化による硬盤層の形成である。


人や牛が農機具で耕していた時の踏み足の重量と桁が違う。

硬盤層のため、洪水で冠水した畑の水がなかなか引かない。

水はけが悪くなり、排水性が不良になる。


じゃあ硬盤層を深耕して、天地返しをすればいいかというとそうでもない。

下層土は深度層の無酸素の劣悪な不良土である場合があるのだ。

酸性が強く、燐酸吸収係数も大きい。

深耕混層したら、取り返しがつかない、なんて事態もありうる。


じゃあ一体どうすればいいのか?


 心土破砕機サブソイラで硬盤層を深耕し、土質改良材を供給して、化学性を改善する。

心土破砕をしても、耕耘せず、状況に応じて自然のまま使うのだ。

現代では、カッテイングソイラ工法と呼ばれるものだ。

挿絵(By みてみん)


①浅層心土破砕:硬盤層より浅い踏み固められた土壌。深さは30cmぐらい。

土壌に亀裂を入れ。暗渠機でモグラ暗渠を施工する。


暗渠を作るユニットが付いた農機。

挿絵(By みてみん)


ユニット拡大図。

矢印のように土壌を流して、暗渠を作る。

挿絵(By みてみん)


これが排水菅の役目を果たすので、暗渠本菅と接続しておく。


②深層心土破砕:硬盤層に亀裂を入れる為のもの。深さ40cm以上。

圃場(ほじょう)の排水勾配に留意して施工する。

傾斜の方向に施工すると排水効果が大きい。

等高線の方向に施工すると保水効果が保てる。


 土質改良材(石灰、溶リンなど)を供給して、土質改善を行うと収穫が改善する場合がある。


「さあて、収穫はどうかな?」と彩円。

「きっとすごいですよ」と莫斯利(もすり)


だがしかし。


便利になっただけで収穫高は変わらなかった。

「あれえ?」と彩円。

「おかしいなあ」と莫斯利(もすり)


中世の農業は良質の肥料と農薬がない。

葉や茎を育てる葉肥(窒素)。

花と実を育てる実肥(燐酸)。

根や茎を丈夫にする根肥(カリウム)。


これら肥料を生育と共に切り替えながら作物を育てるのだ。

これは現代では、N-P-Kのテクニックと呼ばれている。

これに該当するものがない。


しかも、農薬に該当するものがない。

祈祷やまじないの札を虫除けにするしかなかったのだ。


空中元素固定装置でアンモニアを作らねばならない。

農薬も急いで研究を始めねば!


「ええ、やってなかったの」と莫斯利(もすり)

「すまぬ」と彩円。

とかく研究者は実利より研究にこだわりがある。

これは長所であり短所であった。


すぐに肥料と農薬の研究が始まったが、両方とも難物だった。

しばらくは掛かるだろうと思われた。


土壌位の研究は続く。

 硬盤層や心土については、多くの理論があり、現場でも様々な方法が試されている。

自然の土壌では、条件がその都度異なり、定説は存在しない。

この議論は現代でも活発に行われている。

次回は「農薬」です。

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