1410-1450年錬金術から化学へ003(発電機)
電磁石を発見します。
モーターを発明します。
機械的整流器を作ります。
男は磁石と砂鉄が大好きだ。
様々な面白い模様が手品のように浮かんでは消える。
磁石に鉄を擦りつけると鉄は磁化されて同じ模様を描く。
これを記録し実験を繰り返した僧形がいた。
僧形の名は約翰といった。
約翰は電池の電流が電線を通る時、うっかり方位計を置いたまま実験した。
電源を入れると磁針はくるっと回って電線と平行になった。
+-を逆にすると今度はくるっと反対側をむいた。
「これは砂鉄が描く絵図と関係がある」
そう悟った彼はすぐ実験をした。
+-極の間に描かれる模様とSN極の間に描かれる模様は同じだった。
「これはなんだ?」
威廉という僧形が次にこれをコイル状に巻いてみた。
「巻く事で磁界が強くなるのでは」と感じたからだ。
さらに実験が重ねられ、他の僧形達も我も我もと参加してきた。
威廉はこれに鉄心を入れたり出したりすると磁力が変わるのも見出した。
約翰「いったい何なのだ」
威廉「何が起こっている」
「うーむ」
「ふーむ」
コイル状に巻いた電線はニカワで絶縁してある。
電流を入れると磁石になり、電流を切ると失効する。
丹尼爾と路易吉が発見した電気。
これが何かとてつもない現象を起こしている。
彼らは気付かなかったが、電磁石を発明したのだ。
早速、巻数を増やして電磁力の強い電磁石を作ったが上手くいかない。
これは電線が長くなると電気抵抗が増すからだが、この時はまだ分からなかった。
当時、磁石のN-NとS-S極は反発し、N-S極は引っ付く事は分かっていた。
明の輸入品である方位計。
これに磁石を近づけると狂ったように回りだす場合があった。
「この回転を動力に使えるんじゃね?」
「うんそうや」
「つまんね」
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紆余曲折の末に史上初の電磁石・回転式・電気動力装置(モーター)が出来上がった。
回転側:鉄心に膠で絶縁した電磁石。
固定側:鉄心に膠で絶縁した電磁石を曲げて作ったS-N極。
電源を入れると勢いよく回り始めた。
くるくるくるくるっ。
「やったあ、回ったぞ」
「わあい」
しかし当時の動力は化学反応を用いた電池だった。
あっという間に電力が無くなり回転は止まった。
「もっと強力な電池……」
そんなものはまだなかったのだ。
そこで弱い電池を60個、直列結線して、60倍の電池を造った。
猛烈な勢いで回る電磁石。
だがそれは動力として使うには余りにも非力だった。
手でヒョイと掴むだけで止まってしまう。
水車を使ったほうが遥かに強力だ。
そんな実験が続いたある日。
これは全くの偶然なのだが、モーターを2台繋いで実験しようとした時だった。
新型の電池が来る予定が遅れていた。
僧形は手持無沙汰だったので、暇つぶしに1台のモーター軸を回して遊んでいた。
その時歴史が動いた!
いや、もう1台のモーターが動き始めたのだ。
モーターは発電機でもあったのだ。
こうして水車に発電機を連結して電力を発電し、電線を通して電気を遠隔地に送り、モーターを回す。
この基本構想が、この時、初めて発見されたのだ。
だがそれは交流という周期的に流れの方向の変わる電流であった。
周期をグラフにするとsin(正弦)カーブを描く。
このように逆位相になるのを防ぐには二極真空管か半導体のダイオードによる整流しかない。
だが、機構学的にカムとバネ接点によっても可能だ。
モーター軸にカムを取り付ける。
正位相の時はカムがバネ接点を接触させていて通電している。
逆位相に切り替わる瞬間にバネ接点は非接触に切り替わり、通電しない。
いわば機械的に整流をかける回路というところだ。
しかし機械的なので外乱に弱いのがネックだった。
接触したりしなかったりも、摩滅もバネ力の減衰もある。
一刻も早い電気的解決が望まれる。
なおsin(正弦)カーブというのは6世紀にインドで既に知られていた。
「アールヤバティーヤ」という本に三角関数の計算が書かれている。
円を24角形としてとらえ、その円周を一定速度で回る点を考える。
1秒に15度回ると考えれば、その座標は15度ごとに描く事ができる
その点を直線で繋げば、擬似的に曲線を得ることが出来る。
これがsin(正弦)カーブと後に呼ばれるものである。
和算には角度の概念がない。
方位は十二支しかなく、それ以上細分化されていなかった。
インド人教師が堺港で松戸彩円に角度について教えた訳ではない。
直感的に回転を直線運動のXY平面に置き換えた結果、正弦が現れただけだ。
だがこれは画期的な事だったのだ。
天文計算、測量術、航海術で絶対に必要だからである。
次回は日本日本住血吸虫症000です。