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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第12章(最終章)
156/169

1598年アフリカ(3/7)

開発途上国でまずやらねばならない事がある。

それは電球の使用するための電気を作ることだ。

<電球については1430-1470年電球を参照されたい>


挿絵(By みてみん)


アフリカ・マリ王国に、電気をまず通電させねばならない。

首都トンブクトゥだけでよい。


信長は尾張国で電球が初めて夜を明るくした日の事を覚えていた。


庶民A「おお、まるで昼間のようだ」

庶民B「これが文明の灯りというヤツか」

庶民C「しかし一体どうやって?」


電力には色々な使い方があったが、これが一番効果的だった。

夜は真っ暗闇に「1本のロウソクだと1ルーメン」という単位がある。


白熱電球100Wは1540ルーメン、ロウソク1540本に相当する。

ぶったまげるのは当たり前だ。


家電製品やエアコンは後回しでもかまわない。

夜を明るくして生活の質と幅を上げるのだ。


信長はアフリカの習慣や生活を大きく変えるつもりでいた。

安土桃山城をライトアップして尾張の民の度肝を抜いたこともあった。


これは信長が実際に日本で体験してきたことだ。

庶民はまず「電球の灯り」に驚き、従順になるのだった。


そして後々の生活や習慣の改革にも恐れず、素直に従ってくれる。

ファーストインプレッション、これが大切だ。


発電は水力発電を使う。

ニジェール川の急流部分を利用する。

 閘門(こうもん)式水路を建設中であるが、急流部分は発電用タービンを回すのに使えるから温存しておく。


いよいよタービンが回り、発電が開始され、電線に電気が通る。

<発電については1410-1450年錬金術から化学へ003を参照されたい>


電気と電球の普及により、マリ王国首都トンブクトゥの夜は明るくなった。

「ラバス ハンドゥリッラ!」「サハ、タニメル」「サハ、タニメル」


広場に出て民集は大騒ぎであった、夜が昼になったのだから。

信長「この噂が各地に広まり、統治も楽になるだろう」


弥助「すでにその手筈は整っております」

「地元の諜報員に、すぐ噂話を持って、各地に散るよう手配します」


信長「うむ、って弥助、いつからそんなスキルを?」

弥助「ここはアフリカ・マリ王国、日本とは違うのです」


信長「う、うむ」

なんか違う、弥助はどんな身分でそれをやれるんだ……。

マリ王国の資金源は南部地方で算出する金であった。

だが長年の散財がたたり、莫大な金を算出していた鉱床もすでに枯渇していた。


流通も産業もなく金鉱石に頼っていた経済は哀れなものだった。

だがこれからは信長が変える、いや、変えてみせる!


信長は知っていた。

表面の鉱床は枯渇したが、地下にはまだ……。


だが、それに頼っていたら、やはり未来的には枯渇する。

今は産業を起こし、流通を活発化させるのが第一である。


ここで信長は、その流通と産業に手を付け始めた。

奇しくも奇妙寺の手が届かなかったアフリカ大陸に、信長の教化が始まった。


まず、マリ国内及び支配地の銅鉱山を近代化した。

電球、揚水、掘削機械、ケーブルカーなどが導入された。


銅鉱石は輸出されていて、自前の精錬工場がなかった。

これはマズい……。


銅鉱石には金銀が含まれているのである。

銅は第11元素族、元素周期表の縦列に含まれる。

挿絵(By みてみん)

同じ縦列には銅、銀、金が並んでいる。

縦の列の元素は、同じ鉱石中に存在している事が多い。


これは古くから南蛮では経験則として知られていた。

だがかつて、戦国時代の日本にはそれらは知られていなかった。


それゆえ日本では粗銅から金銀を分離できなかった。

粗銅を金銀の混合物として輸出し、大損していたのだ。


だが現在は奇妙寺の開発した「電気精錬法」がある。

電気分解によって、金銀を回収出来るのだ。


自前の精錬工場で銅と金銀を電解して、アノード(陽極)に銅を電気鋳造する。

金銀は沈殿物(スライム)となって、容器の底に沈殿する。


 ここで銅は99.3%の銅品位になっており、別工程で99.99%銅品位にまで鋳造する。


金銀スライムには塩素ガスを通して浸出処理を施し、浸出液と残留物に分離する。

浸出液には金が、残留物には銀が含まれている。


浸出液から溶媒抽出法を用いて、金を抽出する。

溶剤はMIBK(メチルイソブチルケトン)を用いる。

挿絵(By みてみん)

MIBK(メチルイソブチルケトン)はアセトンから三段階の反応を経て生成される。

これは奇妙寺200年の科学の歴史から生み出されたモノで極秘だった。


弥助が、奇妙寺僧形をモロッコから呼びつけて、鉱山管理にあたらせた。

奇妙寺モロッコ支部は2300km彼方だが、航空機で2時間の距離だ。


技術僧形、土木僧形らがゾロゾロ鉱山に入っていく。

信長「大丈夫か、ヤツらめは……」


弥助「鉱山事務所は完全管理下にあり、アリ一匹出られません」

MIBK(メチルイソブチルケトン)化学工場が稼働すれば、すぐ帰国させます」


信長「うむ、って弥助、いつからそんなスキルを?」

弥助「ここはアフリカ・マリ王国、日本とは違うのです」


信長「う、うむ」

なんか違う、弥助はどんな身分でそれをやれるんだ……。


奇妙寺僧形が現地入りしていたのを、信長は見とがめない事にした。

しかし弥助、お前は一体なんなんだ?


 かつて、金は常温で水銀を用いて金アマルガム合金となる事が経験則から知られていた。

 金を水銀に溶かし|(合金にし)、獣皮などで漉しとり、皮に付いた金をヘラ磨きしてこそげ取る。

だが水銀は有毒で、信長はアマルガム精錬法の一切を禁止した。


こうして金、銀、銅を安全に抽出して、銅製品を輸出、金銀は国庫に入る。

 西欧はいままで通り粗銅から金銀を抽出しようとしたが、勿論一滴も出てこなかった。


西欧のあずかり知らぬところで、マリ王国は密かに富んでいった。


マリ国北東部の銅鉱床や亜鉛/鉛鉱床も有望であった。

北部、東部の堆積盆には石油が認められ、現在調査中である。


農業も大々的に近代化する。

綿の広大な農園が次々と耕耘された。

不耕起栽培も行われ、評価が分かれている。


綿を作ったのはいいが、機織りや衣服の製造は国内では無理であった。

工業がないのだ、手仕事は職人しか出来なかった。


手練れの職人が一枚一枚作るのは少量生産でしかない。

誰でも作業出来て、品質も同じ大量生産が必要だ。


原料を輸出している間はまだ先進国の仲間入りは出来ない。

製品を製造して、製品同士を輸出入して初めて一人前の先進国扱いだ。

自前で仕立て、製品にする技術を導入する事となった。


紡績機、機織り機の飛び杼、ミシンの導入である。

これは日本ですでに開発済みである。


機織り機の飛び杼はもはや見えない、動体視力の限界を超えた速さだ。

機械からはじわじわと布が出来上がって出てくるのが見える。

それぐらいもの凄い速度で機織り機は動作していた。


どんなに遅くても、手縫いの需要は確かにあった。

「味わいがある」「ぬくもりがある」「気持ちがこもっている」

機械化より手作りを好むのが、富裕層の嗜好ではある。


だが大量生産と大量流通は単価を大幅に下げる。

機械化による安い衣服の需要は何よりもあったのだ。


各国の衣服のサンプルから型紙を作ってその通りに縫製する。

ドイツ、フランス、イタリア、トルコ、スペイン風。


そうすると型紙と全く同じ衣服が完成する。

アフリカは人件費が安い。


そのうえ自動化の技術で、とんでもない安価で裁縫が完成する。

例えばドイツではシャウベ(Schaube)と呼ばれたガウン。


これは35グルテン(約10万5000円)もした。

これが1050円で作れるとしたらどうか。


値段は100分の1であった。

<ただしテンの毛皮のエリが付いた物ではない>


これが西欧の服飾市場を大混乱に陥れた。

価格破壊である。


1000円のものが10円になってしまったのと同じだ。

衣服も反物も恐ろしいほど売れまくった。


輸出の窓口になったのはイギリスである。

オーストラリア幕府と縁の深いイギリスは、ここでも一肌脱いだのだった。

アフリカ綿とともに綿織物の産業がイギリスにもたらされ始めた。


アフリカ-イギリス-ネーデルランドを経てフランス、ドイツで売りさばく。


海上貿易はすでにスペイン(ポルトガル併合)の独壇場でない。

制海権はしだいに新興国のものになっていった。


ポルトガルが西アフリカのアルグイムに設立した商館もすでに撤退した。

黄金海岸(ゴールドコースト)に築城したエルミナ城も今や無人である。


西欧の西アフリカの植民地の覇権も、しだいに緩み始めている。

織田・マリ王国の急速な進歩が各国に波及しつつあるからだ。


アフリカ黒人はもはや、剥奪される無力な原住民ではなかった。

 織田・マリ王国の後ろ盾で近代化した、戦術智略に優れた団結国家になりつつあった。

次回は1598年アフリカ(4/7)です。

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