1591年大崎葛西の乱
1591年。
伊達政宗、最上義光は駿河政府へ服従し、奥州の一応の平定は成った。
だがさらに北奥羽の葛西氏・大崎氏は頑強に抵抗した。
やがてこの反攻が、伊達政宗の扇動によるものだ、という証拠が見つかる。
国境に関所を設けて警戒していたところ、素行の怪しい旅行者が、猛烈に暴れだした。
関所役人はこれはデコイだと気付き、当たりの様子を伺っていた。
そうすると案の定、騒ぎに紛れて、街道を通り抜けようとする者がいた。
サッと捕らえて、すぐ検めてみたのだ。
秘匿装置X線検査装置である。
服の襟に縫い込んだ異物をX線が捕らえていた。
問いただすと答えない。
密書を持った伊達の素っ破であった。
その密書には伊達政宗の花押があり、抵抗を促していたのだ。
直ちに二本松城に駐屯していた諏訪勝頼の元に政宗は呼び出された。
査問のためである。
素っ破から奪った密書を突きつけながら、勝頼は迫った。
「どう説明する、政宗」と勝頼。
顔色一つ変えず、政宗は即答した。
「その密書は偽造です!」と政宗。
「本物の直筆ならば花押のセキレイの目の部分の穴を開けております!」
勝頼は花押のセキレイの目の部分に穴が開いているかどうか確認した。
穴が開いていなかった。
「なるほど、この密書は偽造か」と勝頼。
「御意!」と正宗。
したたかなヤツめ……、即答も怪しい、勝頼は納得した訳ではない。
万が一にも備えていたのだろう、その態度が気に入らない。
このまま許すも謀反、許さぬも謀反、食えないヤツである。
多分許せば討伐と称して、証拠隠滅のため、葛西氏・大崎氏を皆殺しにするつもりだ。
それならば。
我々で先に対処してしまえば良い。
勝頼「話はわかった、不問に付す、ごゆるりと休んで行かれよ」
正宗「あ、いや、すぐに討伐に行……」
勝頼「ごゆるりと休んで行かれよ」
政宗はしばらく二本松城に客として留まる事となった。
体のいい拘束である。
1時間後。
陸奥の国(現;宮城県大崎市)。
バリバリバリバリッ
空気を切る激しい爆音と地面に吹き付ける風圧。
ミサゴ。
垂直離着陸機である。
回転翼の角度を垂直と水平で使い分ける航空機だ。
それが今、陸奥国・名生城の本丸曲輪に強行着陸した。
大崎義隆と葛西晴信は軍議中であったが、おっとり刀で駆けつけた。
謀反が露呈したのは間違いない!2人には分かっていた。
降りて来たのは諏訪勝頼、その人であった。
すわ大将首、といきり立ったわけではない。
航空機も、ましてや垂直離着陸機を見るのは初めてである。
度肝を抜かしてしまったのだ。
「あ、え~ぇぇ、はあ」歩哨A。
「天狗じゃ、天狗の仕業じゃあ!」歩哨B。
「おぉおお、おお~っ」歩哨C。
城内は天地が逆さまになったような大騒ぎだった。
「義隆どの、晴信どの、お初にお目に掛かる。それがしが諏訪勝頼で御座る」と勝頼。
「は、へ?いあ」と義隆。
「え、お?うは」と晴信。
「驚かれるのも無理はないが、私案を聞けばもっと驚くぞ……」
勝頼は伊達政宗の反逆への加担が露呈した事を語った。
反逆者は証拠隠滅の為、皆殺しの憂き目に合う事を語った。
義隆と晴信は青くなったり緑色になったりした。
勝頼「普通なら厳罰だが、奥州の統括は複雑極まる」
「仕置きは軽微だ、詳しくは二本松城にて話そう」
大崎義隆「あ、いや、それがしは……」
葛西晴信「え、はええ、いやはやその」
渋る2人を乗せてミサゴは飛び立った。
結局、2人はミサゴに乗って、甲斐国に向かい、甲府の東光寺に幽閉された。
これで誰も手出しは出来ない。事態の沈静化を待って謹慎を解く、
大崎氏、葛西氏、滅亡していない。
大崎氏と葛西氏の領地は安堵となった。
伊達政宗は二本松城でこの報を聞き、目を白黒させた。
大崎氏と葛西氏が何も語らなかったので、無罪放免となったという。
そんなことがあるはずがない。
帰路、政宗は考えていた。
罠だ。ワナに違いない。
大崎氏と葛西氏が何も語らない?
首謀者が俺の名を語らない筈がなかった。
それを分かっていて、何の仕置きの沙汰もない。
勝頼は分かっていて俺をわざと裁かないのだ。
オマエノヒミツヲシッテイル。
いつでも、どのようにでも、貴様を料理出来る、こう言っているのだ……。
「ぐぬぬ……」
こうして政宗は駿河幕府に頭が上がらなくなったのである。
次回は1594年最上義光(1/3)です。