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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第11章
144/169

1588年アルマダの戦い(7/8)ジーランドの浅瀬

信長はイギリス・ドーバー海峡について熟知していた。

ネーデルランド沖の浅瀬を利用して追い込み、敵艦船を座礁させるのである。


信長は浅瀬が書き込まれたネーデルランド沖浅瀬の海図を凝視した。

 Coastal Banks、Flemish Banks、Hinder Banks、そしてZeeland Banksが最も近い。


 信長の指揮するイギリス艦隊は丁字戦法によりスペイン艦隊の先頭艦航路を圧迫する。

 艦は進路を変え、スペイン艦隊はジーランド・バンクス(浅瀬)に追い込まれてゆく。


「機関後進微速!全艦に伝達!」

「ASTERN DEAD SLOW!]


艦橋付機関長が復唱し、全艦がゆっくりと後退し始めた。

それは負け犬の後ずさりと受け取られかねなかった。


(Banks of Zeeland)、(Zeeland Ridges)とか言われる浅瀬だ。

オランダ王国ジ(ゼ)ーランド州の沿岸にあるので、こういう名前が付いている。


ちなみにニュージーランド(新しいジーランド)は東オランダ会社が発見した。

オランダ王国ジーランド州にちなんで付けられている。


みるみる深緑色だった海面の色が淡青色に変わりだした、浅瀬だ!

スペイン船員「水深は8ファゾム(14.4m)を切りました!」


「水先案内人を早く!」シドニア公は叫んだ。

浅瀬には「キケン!」とか「注意!」とかブイやタグが取り付けられている。


だがそれは信用していいのだろうか?

イギリス海峡の浅瀬のものは全て取り替えられているのでは?


ドクワーンッバリバリバリッ!

軽装艦「ドン・セージャ」が「通り抜け可能」のタグを信じて座礁した。


船体が折れ、船はゆっくりと沈み始めた。

「Abandon Ship(総員退艦せよ)!」


ダメージコントロールが効いているので簡単には沈まない。

キャーッ、次々と船員たちは浅瀬に避難した。


シドニア公「まずいぞ、これは……」

砲声は止んでいた、もはや戦闘どころではない。


水先案内人がいなければ、どうしようもなかった。

 スペイン艦隊総旗艦「サン・マルティン」の前方を水先案内人のタグボートが進む。


その後を艦隊は一列になって進む、まるで射的ゲームの的のようだ。

 事実、イギリス海軍の長射程艦が遠距離射撃を仕掛けてきたが、浅瀬の外(40km彼方)からで当たらない。


40km彼方というのは、品川から横須賀に寄港している艦船を狙うようなものだ。

1度でもずれれば700m外れる事になる。

望遠機能をもった測距儀とはいえ、スペックが揃っていても限界があった。


スペイン軍は「魔の浅瀬」をなんとか通り抜けた。

艦隊は集結し、陣形を整えつつある。


信長「やはり、実戦は机上のようにはいかんな」

秀吉「羽むしり作戦に切り替えますか」


生きたまま鶏の羽をむしる。

イギリス軍小型艇が接近しては砲撃し、サッと逃げ去っていく。


狙いは射撃管制装置や探照灯など、上甲板構造物でも装甲の薄いものばかりだ。

主砲、副砲、機銃さえ狙ってこない。


 巨艦同士の総力砲撃戦を想定して身構えていたスペイン軍は当てが外れた格好である。

「ノブナガって実はたいしたこと、ないのでは?」とシドニア公。


巨艦に巨砲、大艦巨砲主義に陥ってしまったスペイン艦隊。

敵は敵艦隊だけではない、大自然の驚異もまた猛敵なのだ。


信長は今度は、北海の気象図を睨み付けていた。

北海からアイルランドに掛けて、3つの爆弾低気圧が停滞している。


気象観測については<1420-1460年真空>を参照されたい。

100年に1度という大嵐が200km彼方の北海で渦巻いていた。


まだ当地の気象状況は晴天微風である。

スペイン艦隊を北海に追いやれば、暴風雨の中で自滅するだろう。


信長「追い込みだな」

秀吉「この秀吉におまかせを」


北海の追い込むにはドーバー海峡を引き返せないようにする事が必要だ。

まずフランス海岸に集結中の上陸部隊を封じ、合流を阻止せねばならない。


秀吉はイギリス軍の一部を割いて、パルマ公の上陸作戦部隊の駐屯地を押さえた。

その沿岸の名前はダンケルク。


その沖合に陣取った秀吉は、海岸の駐屯地にニラミを効かせていた。

ダンケルクのパルマ公は動くに動けない。


 安国寺恵瓊の魚雷艇は大活躍だったが、本人は敵スペインの装甲艦の放った魚雷の犠牲となった。

真っ赤な夕日が水平線に沈むころ、海には無数の両軍の遺体が浮いていた。


あるものはそのまま沈み、あるものは海岸線にたどり着いた。

 そして数日後、ぼろぼろの僧衣を着た謎の僧侶がドーバーの白亜の海岸に打ち上げられた。


村人はその土左衛門を丁寧に葬っ……。

謎の僧侶「まだ、死んどらんぞ!」


村人「ひ、ひえええっ」

その後、僧侶の行方ははっきりしない。


仏蘭西国に渡っただの、噂は飛び交ったが、それだけであった。


戦闘は収まった。

スペイン艦隊は沈黙を守っている。


どうあってもイギリス本国(大ブリテン島)に近づけない。

上陸部隊はフランスのダンケルクを出航出来ないでいる。


ダンケルクのパルマ公も、ネーデルランドの内乱が心配である。

北部7州(プロテスタント優勢)と睨み合っている最中である。


フェリペ2世の命令で仕方なく人員を割いてきたのだ。

出来るなら上陸作戦なんぞに関わり合いたくないものだ。


見るにスペイン軍は劣勢である。

パルマ公の瞳に妖しい色が浮かんだ。

次回は1588年アルマダの戦い(8/8)北海爆弾低気圧です。

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