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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第11章
136/169

1586年奥州仕置き(3/3)

「フーンむむむっ」政宗は目を覚ました。


ここは太田城(常陸国)、佐竹義重の居城である。

「目が覚めましたかな」と諏訪勝頼。

「あれ、俺は館山城にいた筈……、あぁっ」

「どうやら状況が飲み込めてきた様ですな」と佐竹義重。


すでに伊達家は降伏し、出羽・陸奥国は武田軍が統括していた。

まさに電光石火、3日間で支配が覆ったのである。


「……」政宗は何だか分からない。オレは狙撃されて死んだのでは?


「悪い夢でも見たような顔ですな」と義重。


部屋の片隅に信勝の姿があった。その眼光は鋭く光っていた。

信親から直伝のマインド・トリック(心理操作)だった。

政宗は「もし思うさまに行動したら」の白昼夢を見せられたのだった。


どれが現実かもわざとぼかしていた。

今も現実ではない、2回目の白昼夢だ。


今回は気を失った勝頼を盾にして脱出を試みるシナリオである。

どうやっても逃げられない、どう策略を尽くしても無駄だと分かるまで続くのだ。

1秒は1分に、1分は1時間に、1時間は1日にニョーォォォンッと引き延ばされる。


政宗が繰り返す脱出劇は実際の時間では1秒もなかったのだ。

100回繰り返しても2分にも満たない、1000回繰り返しても約17分。


なぜこんな遠回りの方法を使うのか?

それは超常の力の限界だ。


超常の者が死ぬと、偏向者はその呪縛から解き放たれる。

ああ、我過てリと偏向に応じたので無ければ、たちまち裏切るだろう。


<1553年上杉謙信>でも述べた通り、心の善なる動きは僅かでしかない。

越後国の御家騒動に明け暮れながら、後ろめたさはあったのだ。


戦国時代だ、下克上だ、弱肉強食だと自分を騙していた。

産業と流通を活発にして民を富ませ、国を豊かにするのが正道だ。


だが育てるより奪うほうが手っ取り早い!

それが家臣たちを騒乱へと駆り立てていた。


その僅かな正道への希望を心の底に持ちながら、心の表層の暴力に明け暮れる。

その僅かな正道への希望を増幅し、自ら納得して動き出す、それを行うのが超常の力である。


武田浅信が死んだ時、全国の偏向者は呪縛から解き放たれた。

自分がどう偏向されたか、どう人生を生きてきたか、すべて覚えていた。


だが、自ら意を決してそうしたのも覚えていた、超常の奴隷ではない。

浅信はそうやって、死後の偏向が解けた時の事まで考えていたのだ。


正宗はまるで無間地獄を巡る霊魂の如くであった。

もう正宗にも分かった、これは悪夢だ!


今は43回目。

土蔵に隠れていて夜陰に紛れて抜け出そうとしている。


「ああ、わかった!もうやめてくれ!」と政宗。

「もう降参ですか、せっかく海外逃亡編も用意したのに……」と信勝。


「なんだと、何が、……ああ、忘れてしまった」

「たしか門番が……、ああ、忘れていく、消えてしまった」


だが、何か恐ろしい夢を見たのだ。


このマインド・トリック(心理操作)の後は、急に伊達政宗は大人しくなってしまった。

「従うしか他に道がないように感じた」後日、正宗はそのように述懐している。


戦後処理は粛々と進んだ。

戦国伊達国の龍と言われた政宗が、思慮深い英傑に変わったのである。


勢いは止まらない、だが猪突猛進ではない。

隙が無い戦術、だが殲滅戦ではない。


敵を追い詰め皆殺しにしてきた戦いぶりは大きく変わった。

逃げ道を与え、降伏の意志があれば、受け入れた。


再度裏切れば、仏門に帰依させ放逐した。

再再度裏切れば、国外追放だ。


「アフリカへ行け」政宗はくやしそうに言った。

海外!


まさか自分が行きたいとは死んでも言えぬ。

ザンビア、モザンビーク、ジンバブエ……。


オレだったら潅漑や土壌改質やら、色々と……。

いや、奥州の平定、まずは隣国だ。


こうして政敵を次々と併呑していく政宗。

頭脳明晰、大胆不敵では誰も政宗に叶わなかった。


とうとう奥州は平定された。

だが最上国の最上義光、陸奥国の九戸政実、北奥羽の葛西氏・大崎氏は服従の兆しが見えない。


武田義信「やがては何かが起きるだろう、それに備えねばな……」

詰めはもうすぐだ、気を引き締めて掛からねばならなかった。

次回は1586年天正大地震です。

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