1586年奥州仕置き(2/3)
「フーンむむむっ」政宗は目を覚ました。
ここは太田城(常陸国)、佐竹義重の居城である。
「目が覚めましたかな」と諏訪勝頼。
「あれ、俺は館山城にいた筈……、あぁっ」
「どうやら状況が飲み込めてきた様ですな」と佐竹義重。
すでに伊達家は降伏し、出羽・陸奥国は武田軍が統括していた。
まさに電光石火、3日間で支配が覆ったのである。
「にょ」政宗は激怒巨烈した。
「まあ、落ち着け」と勝頼。
「Sie ist ohne Ehre!(チクショーメー)」
「いやだから、落ち着け」
勝頼は日本が置かれた世界情勢の各国の勢力分布について話した。
マラッカやインドが晒されている植民地化への危機について話した。
太平洋の彼方のアステカやインカとスペインとの攻防について話した。
日本の戦国時代を一刻も早く終わらせたい旨を話した。
最初はそっぽ剥いていた政宗も、海外の勢力分布の話は大好きなので、だんだん乗ってきた。
1581年スペイン王フェリペ2世がポルトガルを制し、スペイン王がポルトガルを同君統治した事。
「なるほど、興味深いな」と政宗。
「だが、それとこれとは何の関係も無い」
「え」と勝頼。
政宗は勝頼の耳の下、首の後ろにある内頸動脈を軽く叩いた。
頭蓋内に入り脳に酸素と栄養を送る動脈の血流が、一瞬止まる。
勝頼は伸びてしまった。
政宗はそっと、勝頼の喉のある骨を念入りに踏み潰した。
これでもう自発呼吸は出来ない。
窒息して死ぬ。声も出ない。
彼は勝頼の服を着て外出した。城の外に出れば脱走は成功だ。
二の丸の屋敷(太田御殿)を出て、三の丸の家臣屋敷の間を悠然と歩く。
搦手門から脱出する計画であった。
「父上!」と信勝の絶叫が聞こえた。
ちいぃっ、もうバレたか……。
だが焦るな走るなしゃべるな、だ。
門番の所まで来た。
「私用にて外出する、門を開けいっ」と政宗。
鷹揚に命令した。こういう時はけっこう効くのだ。
「あっ、はい」と門番。
えらい人が来た!とでも思ったろう、成功だ。
ガシッ。
おもむろに肩を掴まれた、万力の様に動かない。
「その装束は勝頼さまのもの、如何して着ておられるか?」
さっきのトロそうな門番が形相を変えて質問してきた。
ちいっ。素っ破だったか!
政宗は振り切って門に駆け寄った。
その時だった。
ドゴーンッ。天守閣に閃光が光る!
ズババアアーンッl
12.7mm対物ライフルが命中し、政宗はバラバラになってしまった。
次回は1586年奥州仕置き(3/3)です。