表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第2章
13/169

1400-1440年南蛮の技術004(たたらと反射炉)

今回は反射炉と骸炭についてです。

戦国時代の製鉄はたたら製鉄であった。

これで不純物の多い銑鉄を得られる。


銑鉄は炭素+イオウ+ケイ素などの不純物を含んでいる。

純鉄を得るには不純物を取り除く工程が必要だ。

再加熱して、不純物を火花として叩き出す。

銑鉄の色+再加熱の時間+火花の出方は秘伝である。


鍛冶屋の莫斯利(もすり)もそうやって製鉄を学んできた。

叩くのは不純物の炭素やケイ素を火花として分離する為だ。

この方法では大量生産は出来なかった。


なんとかして大量の銑鉄を長時間高温に晒す装置はないものか?

不純物が燃え尽きる温度に再加熱し続ければ反応が起こる。。

炭素は二酸化炭素に、ケイ素は二酸化ケイ素になって、ガス化し四散する。

彩円は作陶家に意見を求めた。


きっかけは倒炎式窯の構造だった。

作陶家は、焼成室の中での燃えさかる炎の流れについては熟知している。


陶芸は長い年月を掛けて、およそ1200℃の炎の流れと向き合ってきた。

それは昇炎式と倒炎式という炎の流れについての知識だった。

窯の入り口は閉鎖するので、焼成中は内部を除く事は出来ない。


だが炎が壁を這い、天井に当たって反射し戻ってくるのは想像できる。

この天井にくる炎の温度は約1200℃(底部は1000℃)だ。


また煙突を長くする事で、熱気による上昇気流が発生し、ふいごは不要であった。

これは現在では「ロケットストーブ」と呼ばれている。


この倒炎式窯の原理をそのまま炉心に応用したらどうか?


こうして、石炭をくべる焚き口、焚き所(燃焼室)、炉床、出湯口、煙道が完成した。


密閉断熱空間での燃焼により、燃焼が超高温になる。

長い煙突内で上昇気流が発生し、猛烈な勢いで焚き口から空気が引き込まれる。

炎は壁を這い、天井に反射して、炉床に吹きかかる。

挿絵(By みてみん)

高温になった空気と、石炭から出た可燃性ガスが、ここで再燃焼。

強熱が反射して、銑鉄をドロドロの溶鋼に変える。


これは現代では反射炉と呼ばれている。


もはや森林資源の枯渇の原因ともなった木炭は石炭に席を譲った。

効率よく反射炉を使った製鉄が始まったのだった。


だが、松戸彩円はもっと先を考えていた。高炉だ。

たたら製鉄を高炉製鉄に切り替えるのだ。


高炉はすでに紀元前の中国は呉の国で、爆風炉と呼ばれるものが存在していた。

挿絵(By みてみん)

4世紀の宋でビツマス石炭を利用していたらしい。

11世紀には宋の国では、軽炉が製鉄工程に組み込まれていた。

1150年頃から北欧でも高炉が稼働している。

14世紀にはインドでも修道院の外部施設に高炉が見られた。


南蛮や明からの情報は、高炉がすでに使われている事を伝えていた。


その構造はおろか製作法まで挿絵付きで紹介されている(天工開物:1637)。

例によって挿絵は抽象的で写実的ではなかった。


松戸彩円は、莫斯利と協力して、燃焼と溶解について、徹底的に協議した。

鉄鉱石の整粒強化、骸炭強度、送風技術と切りがなかった。

「おっとメモしとかないとな!」

一子相伝の秘匿技術はたしかに素晴らしい。

だが、後世に残し、研究を深める為には、まず記録して保存だ。


すでに冶金の鋳造工学の研究室とは別の化学部門が骸炭(コークス)を発見していた。

木材を蒸焼きにしたら木炭になった。

火力も格段に違うし火持ちもいい。

こうした経緯から当然次のように考える者がいた。


石炭を蒸焼きにしたらいいんじゃね?


こうして初期の骸炭(コークス)は木炭の窯を使って同じように蒸焼きにした。

骸炭にする石炭を奥までギュウギュウに詰め込む。

窯の体積の五分の一は空けておき、みっちり並べる。

空けた五分の一に燃料の石炭を積み上げる。

こうして木炭と同じ要領で骸炭が作られた。


まだこの時、貴重な石炭ガスは空気中に排出、コールタールは捨てられ、ボタ山と化していた。

だがやがて、石炭ガスは燃料となる事が分かり、コールタールは石炭化学の基礎となった。

石炭を蒸し焼きにした時の石炭ガスは、メタンガスと水素が主成分の可燃ガスだ。

この石炭ガスのガス灯がやがて街角を照らし、コールタールからインディゴの染料が分離されるのだった。


だがガス灯を配備するには、戦国時代は混乱の極みにありすぎた。

おそらくは作ってもすぐ壊されてしまうだろう。


松戸彩円「なら簡易携帯照明にしてやる」


まず松戸彩円は石炭ガスを豚の膀胱で作った密閉袋にしこたま詰め込んだ。

ガス噴出口には金具をはめ込み、焼け落ちないようにした。

これに火を付けると携帯のランプになった。

出力は自分で脇にかかえた膀胱袋を手で押して調整した。


なんかものすごい怪しげな格好である。

戦国時代の夜道は真っ暗闇だ。

パンパンに膨れた豚の膀胱をもった人間が、その真っ暗闇な道を向こうからやってくる。

その膀胱の先に炎が噴き出しており、すごく明るい。


松戸彩円「妖しさ100万石だな」


夜の道を歩くと、その明るさはロウソクの比ではなかった。

べらぼうに明るかった。

これが夜間外出の必須アイテムになったのは言うまでもない。


だが室内照明にするには石炭ガスは需要に対して生産が追いつかなかった。

まずは製鉄のための高炉の燃料としての骸炭が先だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ