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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第10章
127/169

1583年秀吉水軍

大阪湾には秀吉水軍が潜伏していた。


秀吉水軍旗艦カモノハシ艦橋。

「信長様からの発光信号を確認」

「直ちに援護射撃の要ありと認む」

「よし、洋上迷彩の天蓋をはずせ」と秀吉。

群青色の洋上迷彩の布がスルスルと巻き取られる。


15m測距儀が武田軍攻撃の諸元を割り出す。

「測的諸元入力後、直ちに射撃開始!」

75mm艦砲が諸元に従って動き出す。

三連砲塔は少しづつ仰角を変えて撃つ。


「うちーかたーはじーめ」


ズバンッガラガラ~ン、ズバンッガラガラ~ン。

ズバンッガラガラ~ン、ズバンッガラガラ~ン。

ズバンッガラガラ~ン、ズバンッガラガラ~ン。


射撃音とちょっと間抜けな排莢がこだまする。

しかし、いりょくはばつぐんだ。

着弾とともに爆炎と土くれがあたりに飛び散った。


「あれ、武田軍はどうした?」と秀吉。

実は、武田軍は殿軍を攻撃された時に、すでに左右に広がって遊撃していた。


信繁はそんじょそこらの武将ではなかった。

念入りに調べた神戸の生田神社界隈の地図があった。


下図。赤:武田軍、青:織田軍。

挿絵(By みてみん)

一見、六甲山麓には道がない、唯一の街道の有馬街道は織田軍が詰めている。

だが山麓には布引道、城山道、鋸山道、大師道、二本松林道など50余りの山道があった。


森林伐採業や鳥獣捕獲事業者しか知らない道も、信繁は徹底的に調べ上げた。

そしてそこに逃げ込む奇策を立案したのである。


下図。赤:山道、青:街道。

挿絵(By みてみん)

そこに一時退避すれば、もう海からは何処にもいないも同然である。

森林管理道や山道から、麓の艦砲射撃を見るのは面白かった。


足軽A「徒歩20分足らずで山の中腹とは恐れ入った」

足軽B「調べれば山道はあるもんなんだよなあ」

足軽C「俺今度、家族連れで再度山修法ヶ原池に来ようかな」


足軽大将「はいはい、無駄口はそこまで、全軍各個撃破の命令が出たぞ」

足軽ABC「へ~い」


各山道に一時退避した武田軍は、わらわらと平地に繰り出してきた。

無人となった武田軍陣地に進軍してきた織田軍は、逆に挟撃された格好である。


あっという間に信繁は軍団を左右に分けて各個撃破に及んだのだ。

織田軍は蹴散らされ始めた。


乱戦である。



織田軍「銃剣を装着せよ」

武田軍「抜刀!」


両軍は入れ乱れての斬り合いになった。

戦国時代の肉弾戦だ。


こういう場合は長槍が有利だが、近代化のため、廃止されていた。

ダーンッ!拳銃の音が響く。


だが四層の蜘蛛の巣状の縫製による防弾チョッキに阻まれ、致命傷には至らない。

組み討ち(柔術)で相手を地面にねじ伏せ、無防備の首を掻き切る。


脇を切る、尻を切るのも有効だ。

内股は大腿動脈が走っていて急所だが、暴れる相手で正確に刺すのは不可能である。


もうお互いに野砲は使えなかった。

使えば敵も味方も吹き飛んでしまう。


「ううむっ」秀吉は臍を噛んだ。

陸戦隊同士の近距離戦闘である。


こうなると秀吉水軍も危ない。

位置も知られ、援護射撃も出来ず、浮いているだけだ。


測的員「敵機動艦隊接近!」

武田水軍が姿を現した、九鬼嘉隆率いる九鬼水軍である。


百戦錬磨の九鬼水軍に勝てる訳がない。

かつての同軍だった秀吉には、それが痛いほどよく分かった。


安国寺恵瓊「殿は私が務めます、ここはお引き下さい」

恵瓊の潜水艦艦隊が九鬼水軍を妨げている間に脱出は可能だ。


だが九鬼水軍には深度調整型爆雷がある。

そして、瀬戸内海は深度100mしかなかった。


急速潜航で爆雷を回避するには深度が足りない。

まさに死地に赴くようなものだ。


秀吉は迷いながらも決断した、こういうのに弱いのだ。

秀吉「やってくれるか……、すまぬ、すまぬ」


恵瓊率いる小型潜水艦部隊は10隻であった。

恵瓊「思う存分ぶちかませ!」


超長波通信(VLF)はまだ未完成の技術であった。

水面下の潜水艦と連絡をとる方法はない。


もはや敵艦を魚雷攻撃するのみである。

艦長「Angriffsscheibe(襲撃盤)起動!」


襲撃盤は自針指示器と的針指示器からなる円盤状の装置である。

照準角と方位角を連動させることにより発射方位を計算する。


潜水艦の望遠鏡からは距離測定や速度測定の三角測量が出来ないので、手動である。

長年の勘と手練の技が光る一瞬であった。


艦長「発射!」

圧搾空気で発射管から押し出された魚雷は、ゆっくりと敵艦に吸い込まれていった。


ドッカアア~ンッ!ズバアア~ンッ!

命中だ、竜骨が折れ、艦体が軋む音が水中を伝わってきた。


バキバキッゴリゴリッ。

ズブズブッミシミシッ、嫌な音である。


その時!

水中聴音士がヘッドフォンを投げ捨てた。


「敵艦直上!爆雷来ます!」

ズバアア~ンッ!ズバアア~ンッ!


頭を殴られたような振動が全身を揺さぶる!

恵瓊「急速潜航!急げ!」


一方、こちらは武田水軍。

たった今、重油のどす黒い液体が浮いてきたのを確認したところだ。


九鬼嘉隆「撃沈したか?」

副長「今回で5隻分の破壊を確認、以後は沈黙しています」


嘉隆「安国寺恵瓊だったか……、惜しい男だった」

ヤツも俺のように恭順していれば良かったものを……。


測的員「秀吉水軍は逃走しました」

嘉隆「水平線の彼方(113km)か]


副長「最大船速20knots(37.04km/h)でも追い付けないかと」

嘉隆「安国寺恵瓊は務めを果たした、というわけか」


嘉隆「全艦、帰投する!」

九鬼水軍は志摩国鳥羽軍事港に帰投した。


真っ赤な夕日が水平線に沈むころ、海には無数の潜水艦乗りの遺体が浮いていた。

あるものはそのまま沈み、あるものは海岸線にたどり着いた。


そして数日後、ぼろぼろの僧衣を着た謎の僧侶が須磨浦海岸に打ち上げられた。

村人はその土左衛門を丁寧に葬っ……。


謎の僧侶「まだ、死んどらんぞ!」

村人「ひ、ひえええっ」


その後、僧侶の行方ははっきりしない。

明国に渡っただの、噂は飛び交ったが、それだけであった。


武田軍と織田軍の陸上での戦いは、終日続いていた。

だがお互いの軍団の数も途方も無い大軍である。


初日で勝敗が決する事はなかった。

夕方になり、日が沈むとどちらともなく、軍を引いたのだった。


第1日目は引き分けで撤退したが、奥の手を見せた信長軍は不利だった。

もう援護射撃は使えない。


武田軍が秀吉水軍を陸地から砲撃するからだ。

秀吉水軍は小豆島港に入って、秀吉は上陸した。


秀吉「堺港を陸戦隊が占領したら、堺港に寄港するように」

艦長「分かりました、で秀吉様は?」


秀吉「一足先に信長様の陣中に参ってくるぞよ」

艦長「ははーっ」


秀吉は小豆島発姫路経由で上陸した。

もの凄い勢いで姫路から織田軍須磨本陣に駆け戻ったのであった。

次回は1583年京都通過です。

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