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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第10章
119/169

1576年ティコブラーエ来日

全翼爆撃機「ヤツガ」を改造した貨物機が一路日本を目指していた。

高度1万m、50時間のフライトである。


高度1万mは気温-55℃、気圧260hpaの地獄のような環境だ。

なぜ航空機は、こんな超高度を飛ぶのだろうか?


それは空気密度が低い分、速く飛べる(促進力が捗る)からだ。

また気候現象が常に快晴で、航空機に好条件が続くからでもある。


本当は空気抵抗ゼロの宇宙空間で圧搾空気と燃料を燃焼して飛ぶのがいい。

だが、それはもはや、ロケットというものであった。


超高度に対応するため、操縦席と客室は、与圧や加湿、加熱されている。

定員は6人、乗客は5人である。


天文学者ティコ・ブラーエ(1546-1601)

1577年に出現した彗星の詳細な記録を参照すべく来日。

彼は腎臓の機能が低下しているのが奇妙寺での尿検査で発覚して人工透析を開始。

この設備は日本の奇妙寺の高度医療センターにしか無い為、母国に帰れなくなる。

 後日イタリア検邪聖省の異端審問を逃れて、亡命してきたガリレオと共に日本で過ごす。


ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタがいた。

奇妙寺本部のある日本で望遠鏡について学ぶため来日。

カメラオブスクラにレンズを用いた学者であった。

著書「自然魔術」が有名。


外科医ジェローラモ・ファブリツィオ(1533-1619)

奇妙寺で解剖学についての知見を広げるため来日。

奇妙寺のイタリア支部で見た解剖図があまりにも正確で驚愕した。

特に解剖では分からない神経の痛みの作用機序について仰天した。


博物学者ウリッセ・アルドロヴァンディ(1522-1605)

奇妙寺で博物学についての知見を学ぶために来日。

植物毒の分子構造(トロパンアルカロイド)についての記事に驚愕した。

その種類と共通性から麻酔薬の可能性について奇妙寺に学びに来たのだった。


医師植物学者アンドレア・チェザルピーノ(不明-1603)

奇妙寺で血液循環についての知見を学ぶため来日。

すでに静脈注射について奇妙寺イタリア支部で見聞きして驚愕した。

解剖図の静脈、動脈、神経、リンパ、その他諸々の詳細解剖図を見て仰天した。


西欧世界は奇妙寺の技術関与で異常発達した。

 だが、各国の支配者の反応は侮蔑、悪態、罵倒と散々な場合と相互扶助から共存共栄と様々だ。


ポルトガル「絶対に許さない!(チラッ)」

スペイン「異教徒の軍門に下るぐらいなら!(チラッチラッ)」


オスマン帝国「毒食らわば皿まで(凝視)」

イギリス「ふっふっふっ(謎の苦笑い)]


 交通は高速化し、工業は益々強力に、産業は大量生産に、農業も効率化されていった。

従事する技術者や科学者、学者、医療関係者は奇妙寺の力に驚きを隠せなかった。


南蛮人A「キーミョウデールは一体どうなっているんだ!」

南蛮人B「蒸気機関はまだしも内燃機関はおかしいだろ?」

南蛮人C「いやいや、麻酔はもっと奇妙であーる」


南蛮列国は大混乱であった。

西欧のプライドが許さない!と東アジアの小国を笑っていたまでは良かった。


だが、現実は違うのだ。


マラッカ、フィリピン、インド、アラビア海の制海権、東アフリカ沿岸……。

南アメリカ(ブラジル+ベネズエラ以外全部)、北米大陸の全て、太平洋全域……。


そのほとんどは、もはや西欧の植民地ではなくなった、

ブラジルの金、ベネズエラの石油がかろうじて手中にはあった。


それらが細々と価格革命と産業革命を誘起させてはいる。

また抗生物質の発見、ワクチンの普及によって、人口は爆発的に増加した。


 もっともこれは、謎の集団キーミョウデールが跳梁跋扈して、勝手に普及させたのではあるが。

「キーミョウデールのしわざだ!」が西欧庶民の流行語になったぐらいだ。


封建社会の支配階級は、流通の活性化と商人の台頭化に浮かない顔つきである。

 庶民の生活が豊かになり、自分達の貯め込んだ財貨の価値が、どんどん下がっていく。


カトリックの世界観もゆっくりと脅かされきた。

観測と実験によって、聖書の記述と合わない部分が出てきたのだ。


そこで新たな観測と実験は禁止する方向に潮流は流れ始めた。

カトリックの旧態依然な姿勢は、科学者たちの反感を買っていた。


今や南蛮では奇妙寺本部の聖地めぐりが学者、医師の間でブームである。

自分たちの観測結果や研究実験結果が正しいかどうかは南蛮では分からない。


 カトリックの教える宗教理念にそぐわない場合は、観測も研究も実験も禁止である。

 特にカトリックの検邪聖省の異端審問は呵責なき詰問、容赦ない制裁で有名である。


日本の奇妙寺には何の拘束も束縛も無い。

寺というからにはTempioだと思ったが、Universitaのようなものらしい。


研究と実験、なによりも自由なのだ。

革新と創造があり、伝統と因習に囚われない学問の園だ。


地球上のあらゆる場所からの「奇妙寺もうで」が始まったのである。

これは頭脳流出になるのではないかと考える新派もいることはいた。


だがカトリックの旧派の跳梁跋扈はその批判を退けた。

科学は宗教と同じと考える教会は清々していた。


司教A「理知ある至高の創造者の存在を仮定せずに!」

司教B「宇宙の成り立ちを説明することは不可能である!」


巡礼者A「日が照り月がさえるのは、誰のおかげ?」

巡礼者B「稲や麦ができるのは、誰のおかげ?」


全員「それらはすべて、神のおかげであります!」


巨大な大聖堂の中で、荘厳なパイプオルガンが鳴り響き、振り香炉(ボダフメイロ)が振られる。

聖歌隊が歌い、堂内に好香が立ちこめ、ミサの神聖な雰囲気を醸し出す。


当時のカトリックにとって、科学者は聖職者であり、聖職者は求道者であった。

聖書、我々は聖書だけを研究すればよいのである。


というわけで、「奇妙寺もうで」に出掛けた新派の天才たちは帰ってこなかった。

研究の場が有り、宗教観が無く、充実した研究設備もあった。


設備の追加も滞りなく出来た。

報酬は5%の儲けを奇妙寺に支払う、いつものパターンである。


祖国を捨て、家族を呼び寄せ、研究で暮らす。

人数が増え、やがて学者だけの村が出来はじめた。


最初が「スペイン村」である。

「ポルトガル村」「イタリア村」など続々と続いた。


一見普通の村だったが、その大部分の実態は、奇妙寺得意の地下施設だった。

地上部分は奇妙寺運営のグルメ・テーマパークである。


 冷製スープのガスパチョやサルモレホ、サンドイッチのボカディージョ、イカのフライのチョピトス……。

 レンス豆の煮込みのレテンハス、イカ墨パエリアのアロス・ネグロ、おやつのドーナツのチュロス……。


初めて口にする異国の味に苦悶する者、絶賛する者など様々である。

食物だけでなく、様々な文化が日本に初めて入ってきた。


その時まで日本では、中国伝来の(こよみ)の六曜を、鎌倉時代末期から使っていた。

先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口のアレである。


これが、南蛮人の使ってる七曜を、いつのまにか使うようになった。

答えは簡単で「日曜日は休日」があるからだった。


という訳で、休みになるとテーマパークには、どっと人が押し寄せた。

異国情緒たっぷりのテーマパークは大人気であった。


 学者たちはカトリックの頸木を嫌って、日本に逃げてきたので、宗教施設は一切なかった。

彼らは寺で座禅を組み、神社でお祓いを受け、護摩行で所願成就を祈祷した。


護摩行は、自身の中に潜む煩悩を焼き払うためだとか?

熱心のあまり、顔にちょっとヤケドする南蛮人までいる始末である。


彼らは宗教を否定しているのではない、人間には信じる象徴は必要だ。

だが当時のカトリックは、執拗なまでに「あいまいさ」を論破しようとしていた。


 全ての森羅万象を、躊躇なく、過度に、積極的に神の「みわざ」として説明しようとしていた。

 宇宙の果てから多次元宇宙、素粒子の量子力学まで、現在でも説明は出来ていない。


それらをすべて説明出来たら、今度は物理や数学が「神」になるのだろうか?

巨大な実験装置が大聖堂となり、数式や理論が聖書になるのだろうか?


亡命学者A「どんな場合も思考停止や明快さへの執着は避けるべきだ」

亡命学者B「わからないものは無理に説明せず、未来に任せるべきだ」

亡命学者C「そうだー、そうだー」


日本人はそういうものに無頓着な性格であった。

外来の信仰も、土着の神々も、同居していていいのである。


亡命学者は日本でまったりと研究に勤しむ事が出来た。

こうして彼らは日本の頭脳となり、奇妙寺は彼らを援助したのだった。

次回は1579年長尾景虎病没です。

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