1573年清洲城要塞
清州城は要塞化していた。
南蛮からサルベージされた砲塔群。
コンクリートを駆使して建てられた強化鉄筋トーチカ。
進軍阻止のための鉄条網と塹壕。
そして築城は稜堡式城郭(星形要塞)である。
星形要塞は死角がなく、さらに十字砲火が可能だ。
昔の天守閣は砲撃戦の的になるから取り壊し、強化ブンカーとなった。
天井の厚みは7mもあり、240mm列車砲弾の直撃にも耐えられる。
鉄壁要塞「キヨス」(織田側の呼称)の誕生だった。
だが武田軍が一枚1も二枚も上手だった。
負傷した武田軍司令官・武田清信はもう容赦しなかった。
浅信は反対だった。
「まだ早すぎます」
「実証実験も済んでいない実物大模型ですぞ」
清信はもう決めていた。
「だがしかし」
「実物と同じに作ってはある」
開発途中、実験段階、机上の空論。
あらゆる兵器を投入した。
「全軍撤退せよ」と清信。
清信は地上軍に撤退を命じた。
そのかわり。
1571年に比叡山救出に使用した航空機。
これが2年後の今。
さらにさらに超強力になって現れた。
成層圏空母「甲斐」。
片翼が前進翼で、片翼が後退翼の先進的実験翼を持つ空飛ぶ空母。
3機の爆撃機を搭載する航続距離11000kmの化け物である。
これは机上の空論で実物大試作模型があっただけだが、強引に1機だけ製作した。
・
・
・
全翼爆撃機「ヤツガ」。
爆撃機は二重反転プロペラを持つ過給機付きだ。
プロペラ機はプロペラ先端がマッハ1に近づくと揚抗比が低下する。
つまりいくら出力を上げても推力が増さない現象が出てしまう。
だが「ヤツガ」はマッハ0.88まで可能だった(実験測定値)。
実物大試作模型段階だったが、強引に1機だけ製作した。
・
・
・
地中貫通爆弾。
ロケットブースター加速爆弾。
重量による自由落下+ブースター加速による強化ブンカー貫通爆弾である。
試作した実験用コンクリ弾頭弾を実弾装備に転用した。
・
・
・
超大型爆弾。
重さ9000kg、全長8m。
成層圏空母「甲斐」とて1発しか搭載できない超大型爆弾。
地中貫通爆弾で敵ブンカーに穴を空け、超大型爆弾で粉砕する手順である。
机上の空論だったが製作した。
本当は新兵器の連続投入はしたくなかった。
全世界が見ているのだ。
すぐにでも模倣が始まり、あっという間に同型兵器が登場する。
特に南蛮世界の欧州は高度な技術があり、危険である。
しかし西上作戦で織田軍を撃破し、上洛を達成する。
一刻も早く、日本国の統一政府を立ち上げねばならない。
戦国時代を終わらせるのだ。
3か月後。
1573年の夏のある暑い日。
キヨス要塞の成層圏上空を白い航跡が近づいてくる。
無音だった。高度1万mでは爆音は聞こえない。
そして。
ヒュ~ウルルルルゥッッ。
・
・
・
ズガドウゥ~ン、ビリビリビリッ。
さらに。
ドッカアアア~ンッ。
キヨス要塞ブンカーの天井は7mの強化鉄筋コンクリートである。
地中貫通爆弾の最大貫通板厚は6.7m、30cm足りない。
そこに超大型爆弾を投下してケジメをつけたのだ。
哀れ、織田四天王の柴田勝家らは布陣配置の軍議の真っ最中であった。
一瞬で四天王は消えてしまった。
信長と秀吉はブンカーにいなかった。
自分達が清信を傷つけた方法で、相手も返してくると踏んだからだ。
絶対安全を過信しない、信長の生来のカンだった。
だが総司令部バンカーの作戦司令部に詰めていた近習は消えてしまった。
炎上するキヨス要塞。
2発の新兵器で戦闘は終わった。
作戦も戦略も全てはキヨス要塞の炎上とともに消失した。
織田信忠は自刄しようとしたが、蜂須賀正勝に止められていた。
蜂須賀正勝は秀吉の股肱の家臣である。
信忠は何かを感じ取ったのだろう。
「わかった」
一言だけいうと、武田軍に投降した。
織田信忠、死んでない。
次は1573年清州城要塞陥落です。