表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第9章
100/169

1573年野田城攻略

1573年。

戦国の巨獣と言われた晴信は野田城攻略を開始した。

しかし30000人の大軍は動かなかった。


守る城兵は500人。一気に揉み潰せなくもない。

まるで何かを待っているかの如くだった。


やがてプルプルと腰砕けな音が聞こえてきた。

見ると上空に何か飛んでいる。


それは「ドローン」だった。


ドローンは書簡を投下すると去っていった。

城将・菅沼定盈は書簡を読んだが内容はこうであった。


「秘匿兵器<航空機>は従来の兵法を覆す新兵器である」

「抵抗は無意味だ」

「降伏せよ」


城内は徹底抗戦と無条件降伏に揺れた。

その時である。


さらに変わった形の動力付きハンググライダーが本丸・天守曲輪に着陸した。

操縦者は武田浅信ただ1人だった。


ただちに雑兵たちが手柄首と襲いか……からなかった。

「城将殿にお目通り願いたい」

「ワシは武田浅信じゃ」


浅信の両目が妖しく光る(眼底反射)。


あわてて足軽大将は上司に事態を伝えた。

「なに?武田家三男が?そんな馬鹿な」


城将・菅沼定盈(すがぬまさだみつ)はまろび伏すようにして駆け付けた。

その定盈(さだみつ)に浅信は高圧的に接した。


「降伏を勧めに参った」

「抵抗は無意味だ」


浅信はハンググライダーのエンジンをかけた。


ブウュイ~ンッ。


猛烈な風が巻き起こり、フワリと浅信は空中に舞った。

「3日待とう、よく考えられよ!」と浅信。


あとには野田城守備兵と城主がポカーンと口を開けて立っていた。

さながら古墳から出土した埴輪やらの日干しの列である。


いまのは現実か?

ここは本丸・天守曲輪だぞ!


籠城において最も堅固で強固な絶対防衛線だ!

そこにフワリと敵将が、まるでちょっと遊びに来たという調子、とは何事だ……。


しかし航空機に空を支配されたのでは。もはやどうしようもない。

どうやって防ぐ?どうやって攻撃する?


矢を射かけても届くのは高さで30mが限度。

鉄砲でも当たらないだろう。


いやむしろ動いている上空の目標にどうやって?


しかし惜しい事をしたものだ

不意を突かれたからといって、みすみす武田家三男を逃すとは!

もはや口惜しいと言っても後の祭りだった。

菅沼定盈(すがぬまさだみつ)は一晩考えると言って自室に籠もった。


その夜の事だった。


野田城には笛の名手がいるらしい。

毎晩ある時間になると美しい笛の音色が聞こえてくる。


野田城の松村苞休という笛の名人が、籠城の疲れを癒す為に吹いていた。

しばし晴信も家臣もその音色に聞き入り、戦旅の哀れさを感じ取っていた。


晴信「戦場にも風流なヤツがいるものだ」

浅信「アントニオ・デ・カベゾンのオルガンはもっと……」


晴信「スペインのは荘厳すぎてどうもな」

パイプオルガンを戦場に持ってくるワケにはいかん。


晴信は笛の音色を聞くいつもの場所を決めていた。

木の枝をそれとなく立て、わかるヤツにはわかるようにしていた。


だがそれがまずかった。


鳥居三左衛門という狙撃の名手がそれを見とがめていた。

それはよく狙撃で使う目印だったのだ。


昼間の内に2m測距儀で彼我の距離を測量した。

彼我の距離は約80m。


当時の銃の射程は約100mである。

必殺必中の距離だ。


射線は右肩の鎖骨から左の脇腹に貫通するあんばいである。

鎖骨下動脈を傷つけ、肺に穴を開け、血胸となる。


照準線上の正しい位置に狙撃用に精密加工した銃を準備した。

日が傾き、あたりが少しずつ暗くなってきた。


そしてその晩、いつものように笛の音が聞こえ始めた。

真っ暗闇で何も見えない中、頃合いは良しと判断して、引き金を引く。


ズダーンッ!


「うぐう」


当たったらしく悲痛な声が闇夜にこだました。

しかし誰に当たったのかはこの時点では分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ