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Takeda Kingdom!甲斐国は世界を目指す  作者: 登録情報はありません
第2章
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1400-1440年南蛮の技術001(工作機械)

いよいよ工作機械に挑みます。

ちょうなはフライス盤に

錐はボール盤に

ろくろは旋盤に

直感とインスピレーションです。

松戸彩円はこれからの奇妙寺の行く末を考えると不安だった。

あらゆる発明発見をどう後世に伝えていくか……。


ちょうどその時、お掃除おばさんが廊下を掃除しながら近づいてきた。

松戸彩円「そこのちょっと、キミ!」


お掃除おばさん「ヒイッ!」


「その棒先に括り付けた変な布群は何かね?」

「ああ、これですか」


それは現在で言うところの「モップ」だった。


「腰が痛くなって、棒先に自在横棒を付け、布を縛り付けて床掃除しております」

お掃除おばさんは、お掃除しながら去って行った。


これだ、この知識と発想の無駄遣い。

戦国時代に特許制度はなかった。

モップの特許を取得して特許料をとれば莫大な利益を呼んだかもしれないのに。

そうすれば、お掃除おばさんは大金持ちになったろうに……。

記録しないから後世にも何も残らない。


記録し、習得し、標準化する。


当時の工作精度は職人の手練の技に全てが掛かっていた。

一つ一つが芸術品であり、唯一無二の一品だった。

そこには部品の標準化も共通の規格もなかった。


これではいけない。


真直も垂直も一子相伝の究極の手練の神業を頼っていてはダメだ。

誰が組み立てても、同じ結果になるようにしなければダメだ。

それには、絶対に同じ形状、同じ精度の大量生産出来る機械が必要だ。


「やはり精密工作機械がないとダメなのだ」と松戸彩円。


工作機械には三つの種類の方法がある。


真っ直ぐ削る工作機械。

現在のフライス盤にあたる。

挿絵(By みてみん)

古代縄文時代から使われている(ちょうな)という木工工具。

クワの先にU字型の刃がついた切削工具だ。

これで木材の表面をちょっとづつこそげ取り平面を作る。

挿絵(By みてみん)

手作業で平面を感じながら削るので、手加減次第で仕上げが左右される。

一方フライスはちょうなの歯の部分を円周上にぐるっと取り付けたモノ。

回転運動で連続で切削するので、機械作業となり、仕上げは均一だ。


真っ直ぐ掘る工作機械。

現在の中ぐり盤にあたる。

挿絵(By みてみん)

古代弥生時代から使われている舞錐(まいきり)という木工工具。

この切り刄と切削屑排出ミゾをらせん状に合わせたモノ。


回転して削る工作機械。

現在の旋盤にあたる。

挿絵(By みてみん)

古代から使われている「ろくろ」を横にして切削に使うモノ。

紀元前3世紀のエジプト壁画に始めて現れる。

インドのハンピには縦型旋盤の切削跡のある敷石が残されている。


これらの工作機械の案を実際に作るには、どうすればいいか?

1人ではおぼつかない。

協力者が必要だった。


彩円はいつもの馴染みの鍛冶屋を訪れた。

方策を練るためだ。

だが工房に彼の姿はなかった。

いない。

仲間に聞いてみると、鍛冶屋をたたんで、国に帰ったという。


う~ん、おかしい、なんかある……。

心に何か引っ掛かるものを感じながら、彩円は奇妙寺に帰った。

奇妙寺に帰ってみると、1人の男が山門に逆光で立ちはだかっていた。

はたしてその男はあの鍛冶屋であった。

彼は奇妙寺の僧形になっていたのだ。


「いつもいつも頼まれている内にすっかり染まってしまいました」

奇妙寺の奇妙で並外れた発想と知識にすっかり巻き込まれていた鍛冶屋。

さっそく甲斐国奇妙寺地域事務所で、僧形募集要項に詳細を記入、僧形となった。


「これは素晴らしい事だ」と彩円。


「ところで、キミの名は?」


莫斯利(もすり)と申します」と莫斯利。


彼のような異能者が奇妙寺に少しづつ来るようになった。

鋳造+切削の莫斯利(もすり)、塑性の宮天(ぐうてん)……等々。


 松戸彩円は、冶金の鋳造事業部と切削の機械事業部と機構学専門の研究部に研究室を分割した。

とてもじゃないが、一人では(らち)が明かないと判断したからだ。

孤児院の子供たちが青年に達する頃、彼らが飛躍的に技術を進歩させるだろう。


あとひとつ、決定的に無いのが、「ねじ」という部品であった。

西欧ではローマ時代からあるねじ構造が、日本では発祥しなかった。

釘を一本も使わない伝統の宮大工建築は確かに希少で貴重な文化である。


だが、金属加工部品を締結するのにねじは不可欠であった。

パイプを繋げるにはフランジ継手が必要で、ボルトとナットで締結し、繋ぎ合わせる。

圧力容器である内燃機関などは、釘をかしめていてはバラバラになってしまう。


 1911年、ウィリアム.M.バートンは、原油の熱分解蒸留実験で圧力容器をリベット留めで密閉していた。

 ガソリンを精製しようとして高温高圧にした結果、リベットから内容物が漏れて引火した。

実験は成功したが、あやうく大爆発するところだった。


「ねじ」はどうしても必要で、かつ日本にはなかった機械部品なのだ。

しかし、松戸彩円がそれを知る機会は。意外と早く訪れるのであった。


商人の丁翁がある時、南蛮渡来のワインを持って現れた。


「これが南蛮渡来のワインという酒で御座います」

「ほう、ブドウを絞って発酵させたものですな」

「さすがにお目が高い!」


(いやいや、ニオイでわかるでしょ)


「今日はワインではなく、これを見せるために帰参致しました」

丁翁は小さな彫刻品を取り出して見せた。

「ミラノ公国(1395-1797)みやげだそうで、南蛮の商人からのいただきものです」


挿絵(By みてみん)


商人は門型のミニチュアのねじになった部分のハンドルを回した。

「向こうではこうしてブドウを絞るのだそうで」


松戸彩円「」

松戸彩円「ひらぁめいたああああ!」

松戸彩円の目が妖しく光る!

「これだああああっ」


ガクッ。


松戸彩円はきゅうにちからがなくなった。


「ど、どうなされた?」

松戸彩円「これをどうやって作るのかがわからんのです」

「ああ、それなら」


「そこのうどんこね棒を持って下さい」

松戸彩円「これですかな」

松戸彩円はうどんこね棒をかざした。


丁翁は矢立から筆記用具を取り出した。

「私は止まっていますので、棒を回転しながら近づいてきて下さい」

筆をかざした手に棒を回転させながら近づくと棒に「らせん」の筆跡が描かれた。

丁翁「これがねじの製造法です、フンスフンス」


 実は丁翁は、おみやげを受け取る際にちゃっかりねじの作り方を聞いていたのだった。

松戸彩円はぶったまげた!

けっこうな秘密なのだとばかりに思っていたのに!


 こうして回転する素材に切削工具を押し当て、一定の直線運動で押し出せば、ねじを切れる事はわかった。


後日談:なお、お掃除おばさんはその発想を奇妙寺に売却した。

奇妙寺は特許料を支払い、お掃除おばさんは大金持ちになったそうな。

お掃除おばさんはフィクションです。

ひょっとしたらタワシも持っているかもしれません。

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