戦闘の前にはやっぱり銭湯?
俺は食卓に戻った。
「お兄様どうでした?」
「グレシア......俺にもあったよ。呪いの紋章が」
「兄貴はどこに呪いの紋章刻まれていたの?」
「リブ......それは聞かないでくれ......それよりも、魔王の手先を倒さないで呪いを解除する方法はないのか?」
俺は四人に呪いの解除方法について訊いた。できることなら、戦闘を避けたい。元ヒモの俺に命がけの戦いができるとは思えない。
日本での社会生活の戦いですら逃げたというのに。
「お兄さんが家で寝ていた三日間、いろんな魔法使いに私たちにかけれらた呪いを解除できないか探し回ったけど、ダメだった。やっぱりダークエルフのやつを倒すしか私たちが助かる道はないと思う」
フレアが真剣な表情をしている。
「やっぱり......戦わないとだめか」
俺は哀愁漂う顔でポツリそう呟いた。
戦いたくないでござる! 絶対に戦いたくないでござる! そう叫びたかった。
「お兄ちゃん、記憶喪失になって随分情けなくなったね」
割とどキツいことをエリックが言ってきた。
「お、お前な......」
すると、他の三人も
「確かに」
「言われてみれば」
「うん、情けなくなった」
同意しやがった。
「う......大体、魔王を倒しにいくなんて考えたやつは誰なんだよ?」
四人は俺を指差し、
「お兄さんだよ!」
「お兄様です!」
「お兄ちゃん!」
「兄貴!」
と言った。
この身体の持ち主、何を言い出しやがったんだ。
「そうか、それはすまなかったな......」
「まぁ......過ぎてしまったことはしょうがありません。一刻も早く、魔王の敵を倒しましょう」
グレシアは気を使ってか、優しい口調で言ってくれた。血が繋がってないとはいえ、なんとできた妹だろうか。
「そうだな......なぁ、何日くらい猶予あるんだ?」
すると、リブは口を開いた。
「恐らくは、後三十日前後だね......」
「三十日前後か。そうはゆっくりもできないな。後で、作戦会議でも立てよう」
「そうですね」
グレシアがこくんとうなづいた。
俺はカレーライスを平らげ、皿を洗うべく、蛇口をひねった。スポンジに洗剤をつけ、水で軽く濡らし、泡を立てた。
「あ、兄貴が皿洗いしてる!」
俺の様子を見て、リブが驚いているようだった。リブの両手には食器を持っていた。リブが使った食器である。
「まぁ、このくらいはな......」
長きに渡るヒモ生活によって、俺の家事スキルは急上昇している。
「兄貴、本当変わったねぇ」
「いいから、リブの食器もかせ。俺が洗ってやるから」
すると、リブは緑のトンガリ帽子を脱ぎ、中からシャボン玉ストローのようなものを取り出した。
「ジャジャーン!」
リブが得意げに出した道具を見せてきた。とうか、道具よりもその帽子のほうに驚いた。めちゃくちゃ便利じゃないか。
あと、帽子を脱いだら、少しリブのやつが美人に見えてきたぞ。俺はリブの綺麗な緑色の髪に目がいった。
「なんだそれ?」
「これはソープストロー」
道具の名前だけ聞いたら、少しだけいかがわしいものに感じるのは俺だけだろうか。
「はぁ」
「これを吹くと、どんな汚れもあっという間に落とすシャボン玉を作れるんだよ!」
得意げにリブは言った。
「へぇ......確かに便利なアイテムだな」
「早速、使ってみるね」
リブはソープストローを口にくわえ、シャボン玉を膨らませた。
大きなシャボン玉は洗い場に置いてあったシ食器にぶつかり、食器はシャボン玉の中に吸い込まれて言った。
食器が入っているシャボン玉はゆっくりと上昇し、リブの近くまで近づいてきた。
「これで、食器を取り出せばおしまいっと」
リブはパチンと指で音を鳴らした。音に合図するかのように、シャボン玉が割れ、食器は床に落下し、割れた。
「おい、お前......」
リブは再び、帽子を被った。
「兄貴、あとはよろしく」
リブはあろうことかそのまま立ち去ろうとした。
「おい、待てこら」
俺はリブの首元を掴み、引き止めた。
「やだ! 片付けるのめんどくさい!」
「お前が割ったんだろうが!」
そんなわけで、リブに割った食器を片付けさせた。
「うう、兄貴にいけず......」
全く、手間のかかる妹だな。あいつとは大違いだ。
俺はリブの戯言を無視し、食器洗いを終えた。
「ふー疲れた」
俺はリビングの椅子にもたれかかった。
「お疲れ様です。お兄様。こちらをどうぞ」
グレシアが透明な液体の入ったグラスを渡してきた。
「ありがとう。でも、なんだこれ?」
「こちらはこの国で撮れるアスレという花で作った、アスレジュースです。爽やかでとても美味しいのでどうぞ」
俺はアスレジュースというのを飲んだ。
「美味しい!」
三ツ矢サイダーの味がする。ってうか、これもう、まんま三ツ矢サイダーだ!
「なぁ、グレシア。風呂ってこの家にはないのか?」
今来ている服が割と厚着で汗をかいていた。お風呂に入って綺麗さっぱりしたい。
「家にはお風呂はありません。普段は魔法で体を清めるか、公衆浴場を使うかです」
「へぇ......魔法で体を洗えるのか」
「はい。ご希望なら魔法で体を洗えますが、いかがなさいますか?」
「それじゃ頼もうかな」
すると、グレシアが立ちあがった。俺を見下ろすように見つめ、俺の顔に手をかざした。
「それでは行きます。お兄様」
「あ、ああ。頼む」
グレシアは目を閉じ、呪文のようなものを唱えた。
「清めしお兄様の身体。発動せよ浄化の魔法。『アイス・ピュアリフィカチオン』」
グレシアが立っている床から水色に輝く魔法陣が生まれた。
俺の体は眩い水色の光で包まれると、少しばかり寒気がした。
「こ、これは......」
身体がシャワーを浴びたあとみたく、すっきりしていた。こころなしか服も綺麗になってる気がする。
「終わりました」
「す、すごいな。この魔法。風呂に入らなくても住むな!」
さっき唱えた、アイスなんとかとかいう魔法は普通に便利だと感じた。日本で使えれば、現代人はなお、喜ばれそうである。
「ええ、まぁ。ただ、今も、お風呂に行く人もたくさんいますからね。お風呂はやはり欠かせないですよ。たまに私たちも利用してましたし」
「そ、そうか......」
確かにいつの時代も、お風呂は欠かせなかった。銭湯が今も生き残っているのが証拠だろう。




