短剣
「なぁ、みんなの本名聞いてもいいか?」
俺は三人の本名を尋ねた。
「ああ! 俺の本名は本田圭太。この世界に来る前はアパレルの仕事をしていたんだぜ」
「へぇ、そうなのか」
言われてみれば、アレスは金髪でハーフっぽい顔立ちをしていて、いかにもアパレル店にいそうな感じの風貌である。。
「私の本名は佐藤麗奈。こっちに来る前は女子大に通ってたわ!」
メシアスは元女子大生らしい。
「私の本名は佐藤明奈。メシアスと同じ学校に通ってたわ。私もあなたの本名を訊いてもいいからしら?」
シリウスが自己紹介すると、俺の本名を訊いてきた。
「ああ。俺の本名は龍ヶ崎剛。こっちに来る前は、その......ヒモをしていた」
そう言うと、アリスを除く全員がジト目で俺を見つめた。
「お前......ヒモをしてたのか」
呆れたようにアレスが呟いた。
「べ、別に過去のことだし! いいだろ!」
「うわぁ、ヒモかぁ」
「ろくでもない生活をしていたのね」
メシアスとシリウスは馬鹿にしたかのように言ってきた。正論だから全くもって返す言葉がない。
「そういえば、アレスくん。私への大事な話って何かしら?」
「ああ、そうでした。アリスさん。うちのパーティに入ってくれませんか?」
アレスがアリスにパーティに加わるように頼んだ。大事な話とはこれだったのか。
「えー? 何を言っているのかしら。どうして私が? 回復魔法ならもう素晴らしい使い手がいるでしょう?」
「いやー、それほどでも......」
自分のことだと思ったのか、メシアスが照れた。
「メシアスとシリウスの魔法に不満があるわけではありませんが、あくまで回復魔法は応急処置にしかなりません。いざという時のためにパーティに加わって欲しいんです。高難易度のクエストの時で結構ですから。それに、アリスさんは元凄腕の冒険者なんでしょう?」
すると、アリスの表情が変わった。なんとなく、空気が重い気がする。
それにしても、アリスは冒険者だったのか。得体のしれない雰囲気を纏っていたのはそのせいかもしれないな。
「それ、誰から訊いたのかしら?」
「一昨日、アクセンブルまでクエストに行った時に、スターライトっていうカフェの店長が言ってましたよ。アリスさんは凄腕の魔王使いだったって」
「そう......まぁ、いいわ。悪いけど他を当たってちょうだい。こう見えても忙しいから。ごめんね。あと、悪いけどレインくん以外、部屋から出てもらっておいいかしら?」
「そうですか......仕方ありませんね」
アレスは残念そうに溜息をこぼした。
「レイン、俺たちは外で待ってるわ」
「ああ、分かった」
レイン達は部屋を後にした。再び、俺とアリスの二人きりになった。
「さてと......曖昧になってたけど、呪いの刻印を見せてもらいましょうか」
くそ、覚えていたか。しょうがない正直に白状するか。
「あの実はですね......実は呪いの刻印がとんでもないところに刻まれていまして......」
「なるほど、私そんなの全然気にしないわよ。どこなの? 肛門とか?」
この人、仮にも女性なのに普通に肛門とか言いやがったぞ。
「なるほど、私そんなの全然気にしないわよ。どこなの? 肛門とか?」
この人、仮にも女性なのに普通に肛門とか言いやがったぞ。
「普通に肛門とか言わないでください。あの、股間に刻まれてます......」
「ふーん、なるほどねぇ」
アリスが股間に呪いの紋章を刻まれていることを知ると、突然ニヤニヤしだした。
この人、もしかして変態だったりするのだろうか。
「ですから、見せるのはちょっと」
「見せなさい」
アリスは微笑みながら見せろと言ってきた。
「いえ、ですから」
「見せなさい」
「わ、分かりましたよ!」
俺は言われるがままに勢いよくズボンを下ろし、パンツもゆっくりと下ろした。とんでもなく羞恥心を感じる。
俺は股間に刻まれた呪いの刻印をアリスに見せた。
「ふふふ。しっかりとここに刻まれているわね。しかし、あなたのそれ、短剣くらいしかないわね。デュランダルくらいを期待していたのに」
「あの、アリスさん。それ下ネタですよ」
というか、短剣サイズと言われて地味にショックである。そんなに小さいだろうか。普通だと自負していた。
「それにしても変わった紋章ね......」
まじまじと呪いの紋章をアリスが観察した。そんなに真面目な表情で見られたらものすごく恥ずかしいのだが。
「呪い解けそうですか?」
「ごめん、ちょっと難しそうな魔法の構造式で呪いを解くのは無理そう」
「そうですか」
「まぁ、なかなか可愛い短剣を見れて私は大満足よ」
アリスがニヤッと笑った。
「やめてください! 本当!」
俺はものすごい勢いでパンツとズボンを上げ、股間をしまった。
「魔王の手先がかけた呪いですからね。そう簡単に解けるものではないと思っていましたよ」
しかし、これただ俺がアリスに自分の股間を見せただけじゃないだろうか。
「あの、レインくん。代わりといっちゃなんだけど、良かったらこれをどうぞ」
アリスが白衣についていたポケットの中から指輪を取り出した。
俺はそれを受け取り、眺めた。
銀色のリングに赤く小さい宝石がついている指輪であった。
「アリスさん、これは?」
俺は受け取った指輪について訊いた。わざわざくれたってことは、ただの装飾品ってことはないと思のだが。
「レインくん。この『コースリング』はね。禁断のマジックアイテムと呼ばれる代物よ」
「禁断のマジックアイテム......」
ヤバそうな単語に思わず、生唾をごくりと飲み込んだ。




