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アレスの優しさ

「どうしたの? 早く、見せて欲しいんだけど」

「いやぁ、あのですね......」

 俺が言いづらそうにしていた、その時だった。

「失礼しまーす!」

 ガチャっと扉が開いた。誰かが入って来たようである。

 なんと、入って来たのは以前、ギルドハウスで出会った金色の鎧を着たアレス、茶髪で魔法の杖を持ったメシアス、長い黒髪でアリスと同じくらいスタイルの良いシリウスだった。

「ん? なんだ。レインもいるのか」

「アレス。どうしてここに?」

 すると、シリウスが口を挟んできた。

「私たちはアリスさんに大事な話があってきたのです。悪いですがあなたは退席してもらってもいいですか?」

 突然の物言いにさすがに俺はムッときた。

「奇遇だな。俺も大事な話があって、先にここに来たんだ。こっちが終わるまで待つってのが筋じゃないのか?」

 俺とシリウスは互いに睨み合った。シリウスのやつ、睨むとものすごい迫力である。超怖い。

 だが、こちらも簡単には食い下がれない。

「まぁまぁ、二人とも。そんな怖い顔しないで。みんな、日本からやってきたようだし、仲良くしなさい」

 アリスが突然、とんでもない事実を暴露した。

「ええ!」

「ええ?」

「はぁ?」

「なんだと!」

アリスを除く全員がそれぞれ驚きの声を上げた。

「おいおい、アリスさん。嘘だろ? レインが日本から来たっていうのか? だったら、こいつの妹たちもそうなのか?」

「いや、それよりもアリスさん! アレス達が日本からやって来たって?」

「みんな、落ち着いて。ゆっくりと説明するから」

 アリスは俺にアレス達について教えてくれた。

 アレス達はこの世界にやってきて、すでに二年くらい経つらしい。アレスは元々、別の街で冒険者をやっていたが、ペンドリアに越してきて、メシアスとシリウスとパーティを組んだようである。

 メシアスとシリウスは姉妹らしい。シリウスの方が年上で、メシアスの一つ上だそうだ。

「しかし、お前らの名前って本名なのか?」

「そんなわけないでしょ? せっかくだし、この世界に合ってるっぽい名前をつけたのよ」

 メシアスはそう説明した。確かにこの世界で佐藤だの鈴木だの名乗ったら不思議がられるかもしれない。

「それにしても、お前は変わってるな。精神だけこの世界にやってきたって?」

 興味深そうにアレスが俺のことを見てきた。

「そうらしい。日本にいた時の記憶は確実に覚えている。だが、この身体は元の俺の身体じゃない」

「確かにあの時もなんか、喋り方も雰囲気もいつものレインっぽくなかったしな」

 普段のレインはどんな感じなのだろうか。少し気になった。

「そ、そうか。ってかそれよりもアリスさん!」

「何かしら?」

 一番聴きたかったことをまだアリスに聞いていなかったことを思い出した。早いところ聞いてしまおう。

「地球からやってきた女性の冒険者で知り合いって知らないかな?」

 ナデシコの話やハムンビラ古代遺跡で手に入れた本から魔王は地球からやって来た女性の冒険者ということが分かっている。

 違う世界からやってきた冒険者と会って来たアリスなら心当たりがあるのではないかと考えたのである。

「うーん、男性の冒険者は結構あったんだけどね。女性はあんまりなかったかな......二人くらい会ったことはあるけど、今はどこにいるのかさっぱりなのよね」

「そうですか......」

 その中に魔王と思われる人がいるのではと思ったが、会うのは難しそうである。

「なんですか? あなた、ナンパでもするおつもりなんですか? 汚らわしい」

シリウスが間違った推測をしてきた。

「ちげーよ!」

「それでは、なぜそんなことをアリスさんに聞くのですか?」

「そ、それはだな......」

 呪いのことはあまり他の人に知られない方がいいと考えているため、言うか迷った。

「レインくん。あなたがさっき言っていた呪いと関係あるのかしら?」

 すると、アレスが険しい顔して、

「おい、なんだレイン。呪いってのは?」

 と訊いてきた。

「それはだな......」

 この三人に呪いのことを言うか戸惑った。

「アレスくん、レインくんはね、魔王の手先に呪いを掛けられたのよ。時間が経つと死んでしまう呪いをね......」

 俺が言う前にアリスがあっさりと呪いのことをリークしてしまった。

「ちょっと、アリスさん!」

「おい、レイン。その呪いってのはあとどれくらいで効果を発揮するんだ?」

 レインが顔を近づけ、訊いてきた。表情からなんとなく、怒っているように見える。

「お、恐らくはあと一ヶ月弱くらいだ」

「ギルドハウスでお前に話しかけた時にはもう呪いが掛かってたのか?」

「ああ、そうだ」

 すると、レインが俺の胸倉を掴んできた。

「てめぇ! なんで、言わなかったんだ!」

 アレスが叫んだ。ものすごい表情で俺を睨みつけている。

「ちょっと、アレス様。おやめください!」

 シリウスが叫んだ。しかし、

「うるせぇ! 黙ってろ!」

 アレスは怒鳴りかえした。シリウスはビクッと肩を震わせ、黙り込んだ。

「い、言わなかったのは、これが俺たちの問題だと思ったからだ。別の他の冒険者に言うもんでもないからな」

「バカヤロー!」

 アレスが俺を投げ飛ばした。背中に床を激しくぶつけて痛みが走った。

「い、いてぇな......何しやがる!」

「うるせぇ! いいか、俺はな。確かにお前とお前ら兄妹が好きじゃなかった。どれだけ高難易度のクエストをこなしてもお前らが俺たちよりもさらに成果を出していったからな。でも、ある意味いいライバルだと思ってたんだ。まぁ、憑依している中身がレインじゃないお前に言ってもわからないかもしれないが......」

「な、何言ってるんだ?」

 アレスが言いたいことがさっぱりだった。

「俺はギルドハウスのやつらはなんだかんだみんな仲間だと思っている。お前らの事情を聞いたら俺はすぐにでも手を貸していただろう。なのに......俺はお前が自分一人で背負いこんで解決しようとしたことに腹が立った! 以上だ!」

 ビシッと俺に指を指した。どうやら言いたいことを全て言い切ったようである。

「そ、そうか。それは助かるな。それじゃ、お前らは俺たちに手伝ってくれるのか?」

「ああ、お前達の呪いが解けるまでな。できることは全て協力してやるぜ」

 アレスが微笑んだ。しかし、最初話しかけてきた時はあまり良い印象はなかったがなかなか良いやつじゃないか。

「シリウスとメシアスも手伝ってくれるのか?」

 俺が二人に訊くと、

「当然でしょう! でも、勘違いしないでよね! あなたのためじゃないんだから! アレス様の頼みだから手伝うんだからね!」

 と、ツンデレのテンプレのような返答をするメシアス。

「私もアレス様の命だからこなす、ただそれだけです」

 と仏頂面で答えるシリウスだった。

 それにしても、この二人、随分アレスに酔心しているようだが何かきっかけがあるのだろうか。


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