報酬
もうすぐ夜のせいか、ギルドハウスの中にはたくさんの人で賑わっていた。おそらく、全員冒険者なのだろうか、お酒を嗜んでいる。
「おー! フレアちゃん。今日も可愛いね!」
「グレシアちゃん! デートしようぜー!」
「エリックちゃん、演奏してくれ!」
「リブちゃん! こっち見て!」
妹たちは男性冒険者から人気なのだろうか。歓声が飛び交った。
「なんかみんな人気だな」
「そんなことありませんよ。単に女性の冒険者が少ないから珍しがってるだけですから」
興味がなさそうにグレシアが言い放った。
「よ! 色男! 美人四人引き連れて羨ましいなぁ!」
そんな声も聞こえたが、俺は無視して受付のミンティアのところへと移動した。
「みなさん。ダンジョンお疲れ様でした。何か成果を挙げられましたか?」
「もちろんだよ! ミンティアさん。さっき、魔王軍の四天王の一人を倒したんだから!」
得意げにリブが語るとミンティアは口に手をあてて驚いたと言わんばかりの仕草をした。
「まぁ! それはすごい! それじゃ、ギルドカードを貸してもらっていいですか?」
そう言われたので俺たちはギルドカードをミンティアに渡した。
「それでは確認させていただきますね」
ミンティアは俺たちのギルドカードを受け取ると、青い分厚い本を取り出した。
これがリブの言っていたモンスターブックというやつか、
ミンティアは五枚全て背表紙の上に置いた。
『インクィリィ』
そうミンティアが唱えると、俺たちが倒したモンスターがモンスターブックから立体映像のように浮き出てきた。
アンデットや俺を飲み込んだ忌々しいスライムたち。
そして、あのディンゴも出てきた。
「なるほど、確かにこれは紛れもなく魔王軍四天王の一人、ディンゴですね。これはすごい戦果ですよ! 報酬金が一気に跳ね上がります。ちなみに他には何かアイテムやお宝は見つけましたか? よろしければそちらも換金いたしますが」
すると、リブはトンガリ帽子から何かを取り出そうとした、おそらくはあの本だろう。
「待て、リブ」
俺はリブの襟を掴んで止めた。
「兄貴、何?」
不満そうにリブは俺の方を振り向いた。俺はリブの耳元に顔を近づけミンティアさんに聞こえないように囁いた。
「遺跡で見つけた本はまだ売るな。いずれ役に立つと思う」
「えーお金になるし、売っちゃおうよ」
「ダメだ。頼む。今は売らないでくれ」
俺たちのやり取りを見ていたミンティアが口を挟んだ。
「二人ともどうしました?」
「なんでもありません! 気にしないでください!」
再びリブの方に顔を戻した。
「頼む! あの本は売らないでくれ!」
俺は必死になって頼み込んだ。なにせ、あれは魔王の手がかりが隠されているのである。
「わ、分かったよ......」
リブは何とか納得してくれたようである。
「あの、それで何か遺跡で見つけたものはありましたか?」
「いえ、これといって珍しそうなものは見つけました」
俺はミンティアさんにそう言うと、
「そうですか。分かりました。それじゃ、今回のダンジョンの報酬を支払いますので、少し待っていてください」
報酬を用意するため、奥に移動した。
待つことおよそ一分。
「お待たせしました! これが今回の報酬です!」
ミンティアは大きな布の袋を持って来た。おそらく中にはぎっしりと金貨が入っているのだろう。
「おお! すげえな」
思わずそう呟いた。
「一気にお金が増えたね。これで命の心配がなければ手放しで喜べたんだけど......」
フレアが暗くなるようなことを言った。
「そうだな......早い所、俺たちに呪いをかけたやつを倒さないとな」
俺はディンゴとの戦いを思い出した。あれはまさしく死闘だった。奴に勝てたことはかなり運が良かったと思っている。
俺たちに呪いをかけたダークエルフには、フレアたちの魔法が全く通じないと言っていた。果たしてそんな化け物に勝てるのだろうか。
「それじゃ、みんな帰るか」
考えてもしょうがない。帰ってゆっくりと休んでこれから頑張ろうと思ったのだが、
「もう何袋かあるので、待っててくださいね」
まじかよ。すげえな。
四つの大きな袋を持って、俺たちは家に戻った。
グレシアは、「お兄様に重たい荷物を持たせるなんてことできません! 私たちが持ちます!」と言ってくれたのだが俺は二つ袋を持った。
「お兄様、大丈夫ですか?」
心配そうにグレシアが俺に訊いてきた。ぶっちゃけすごい重いが弱音を吐いてられない。
「ああ、大丈夫だ!」
「グレシアー、私疲れたから持つの変わってくれない?」
残りの二袋のうち一つを持っていたリブがグレシアにお願いした。
「はいはい。分かった分かった」
グレシアはリブから袋を受け取った。
「いやぁ、グレシアは本当に優しい子だな」
俺は自然とそんな感想を言った。
「え? そ、そんなことないですよ!」
グレシアが顔を赤らめた。照れたのか。可愛いな。それにしても、少し褒めただけでこんなに照れるなんて、普段のレインはあまり妹たちに優しくしてないのかもしれないな。
家に着くと、袋を机に置き、椅子にもたれかかった。
「ああ、疲れたぁ......」
よく考えたら死闘をした後、大きな荷物を持って家まで戻ってくると言う重労働をした。
元ヒモの俺がこんなに働いたのは久しぶりだったな。




