キプトベンプ
「おいおいおい、随分弱えじゃねぇか? もっと、楽しませろよ? ん?」
どうやらディンゴに殴られたようである。すごいパワーだ。それよりも早すぎてほとんど動きが見えなかった。
「くそ、よくもお兄さんを! 『フレイムインパクト』!」
フレアはディンゴめがけて強力な炎の魔法を放った。たちまちディンゴは炎に飲み込まれた。
これは......やったのか? それにしても凄まじい魔法である。
「はぁ!」
バシュッという音ともに炎がかき消されてしまった。
「いやぁ、なかなかいい炎だったぜ。赤髪のお嬢ちゃん」
「そ、そんな全然効いてない!」
フレアが唖然としている。無理もない。というか、みんなを助けないと。そう思ったのだが、先ほど殴られた衝撃で体にうまく力が入らない。
すると、リブが俺の近くにやってきた。
「我に回復の心得を。身内に幸運のご加護を『メディカルプランツ』」
リブが詠唱のようなものを唱えると、緑色の魔法陣が地面に発生し、魔法陣から薬草がでてきた。
「はい、兄貴。これ回復の薬草だよ。食べて」
「あ、ああ。ありがとう」
俺はリブから薬草を受け取った。
「便利な魔法だな」
「まぁね。それよりもあいつをどうかしないとね」
俺は薬草を一気に口の中に入れ、喉に流し込んだ。味はとても苦かった。例えるとするなら、青汁の粉を水に溶かさずに飲んでいる気分である。
「苦いなこれ」
「兄貴、文句言わないで」
しかし、体は自由に動かせるようになった。良薬は口に苦しとはまさにこのことか。
「エリック、同時攻撃で行きますよ!」
「分かった!」
グレシアとエリックは魔法攻撃を撃つ体勢をとった。二人の立っている場所からは魔法陣ができている。
ちなみにエリックは騒がしくギターを弾いている。
「貫け! 私の氷魔法『アイスクルズ』!」
グレシアは連続で巨大な氷柱をディンゴめがけて放った。
「痺れろ! 渾身のビートソウル! 『ヘヴィサンダー』!」
ギターから強烈な電撃がディンゴ向かって飛んで行った。
グレシアの魔法とエリックの魔法。二つ同時に食らえばさすがに無事ではいられないと思うのだが。
「うらぁ!」
ディアスは両手をクロスさせて、低い体勢をとると二人の魔法を見事に受け切った。
「なかなか強力な魔法だな。だが......」
俺はぞくっと嫌な予感がした。
「二人とも、逃げろ!」
叫ぶ間も無く、ディンゴは二人の後ろに回り込んだ。
「きゃぁ!」
「うわぁ!」
ディンゴは無防備な二人の背中にパンチした。二人はさっきの俺と同じく激しく吹き飛ばされた。
「て、テメェ......」
俺は頭に血が上っているのを感じた。本能の赴くままに腰に刺さっていた剣を取りだした。怒りのせいなのかわからないが、あまり剣の重さを感じない。最初に持った時は重くて仕方なかったのに。
「ちょ......兄貴、やめなよ! 今の兄貴の勝てる相手じゃ」
「オラァ!」
リブの制止も無視して、俺はディンゴに切りかかった。奴の脳天めがけて思いっきり剣を振り落とした。
しかし、ディンゴに片手で俺の斬撃を受け止められてしまった。
「さっきまでと全然、殺気が違うな。どうしたんだ?」
「お前が俺の妹たちに手を出しただろうが!」
できるだけ剣に力を込めた。もっと力を。もっと力を。
すると、剣先がディンゴの腕を徐々に切り込んでいった。
「な、バカな! ふん!」
するとディンゴの体を纏う黒いオーラのようなものを大きくさせてきた。
「まだまだ!」
なおも俺は力を入れ続けるた。しかし、ディンゴは剣を受け止めていた反対の方の手で黒いエネルギー弾のようなものを作りだした。
「お遊びは終わりだ。死ね」
腹にディンゴが作りだしたエネルギー弾を喰らってしまい、腹部に凄まじい痛みを感じた。先ほどのディンゴのパンチ以上に俺は飛ばされた。
「お、お兄さん。よくも! これならどうだ!『バーニングインパクト』!」
フレアが両手から炎の魔法攻撃を放った。が、
「無駄だ! マジックバレット!」
ディンゴは先ほど俺に使った黒いエネルギー弾の攻撃でフレアの魔法を相殺させた。
「う、嘘!」
「さてと......そろそろお前らを殺すことにするか」
ゆっくりとディンゴがフレアに近づいて行った。
「や、やめて来ないで!」
フレアが怯えたような表情をしている。俺は意識が朦朧としてきた。
だが、こんなところでみんなを、妹たちをほっておけるものか。
もう、あの時みたく失いたくはない。そう思うと、少しだけ意識が徐々に戻ってきた。
俺は起き上がり、ある武器を取りだした。
「アクティベイト」
マジックアイテム屋で購入した紐のマジックアイテム、『キプトペンプ』でディンゴの腰を縛った。
「なんだ、お前。まだ生きてたのか? たく、こんなしょぼいもんで何ができるってんだ......ん? お前......」
このキプトベンプは相手の魔力を吸い取ることができる。俺の体はディンゴの魔力を吸い取っているためか傷が治ってきた。
「うざってぇな!」
ディンゴはマジックバレットでキプトベンプを撃つと、キプトベンプは切れて拘束から逃れた。
「もうお前死んどけや!」
俺の方に手を向けてきた。手のひらからマジックバレットを作り出していた。さすがにまた当たったら死ぬよな......




