いよいよダンジョン
「いやー、色々買っちゃったねー」
笑いながらリブは巨大なトラ型のぬいぐるみのようなマジックアイテムをトンガリ帽子の中にしまいこんだ。何に使うか気になるところではあるが聞かないでおこう。
「そうだな。それにしても、お前のその帽子、どうなっているんだ? 無限に物をしまい込めるのか?」
俺は不思議なトンガリ帽子について聞いた。
「無限ってわけではないよ。でもたくさんしまえて、かなり便利なマジックアイテムだよ」
この帽子自体もマジックアイテムを入れるためのマジックアイテムらしい。
「それよりもさ兄貴はあの紐みたいなマジックアイテム使うの?」
「い、いざとなったらな。役に立つだろうし」
「ふーん......でも、魔法関係は私たちに任せてもらってもいいよ。他の三人もなんだかんだ優秀だし」
自身たっぷりにリブは言った。というか、戦いの前線には身を置きたくはない。怖い。
そして、俺とリブはギルドハウスに戻ってきた。
「ただいま」
「お帰りなさい。お兄様、結構長かったんですね」
「悪かったよ、グレシア」
少しバツが悪そうにリブが言った。
フレアとリブはというと、トランプを興じていた。
「よーし! どうだ、フラッシュだ!」
「エリック、残念! 私の手はなんとフルハウスでした!」
「ああー! また負けた!」
エリックが悔しそうに叫んだ。
「ちょっと! 二人とも、他の冒険者の方もいるんだから、静かにしなさい! 早く支度して!」
「ちぇ......フレア! また後で勝負ね!」
「分かった分かった。いつでも、かかってきなさい」
そうして、俺たちはハムンビラ古代遺跡へと向かった。
この世界に来て——いや、人生初めてのダンジョンである。
俺の心の中で不安と期待が入り混じっている。
社会人になって、初めて会社に向かった時のことを思いだした。
くそ、忌々しいな。
「ここがハムンビラ古代遺跡か。なんか、雰囲気あるな......」
遺跡は四角形の大きな建物で所々、苔が生え茂っていた。
いかにも歴史的建造物って感じで、どこか神秘的な雰囲気を醸し出している。
「それじゃ、早速中に入りましょう」
グレシアが先陣を切るかのごとく、遺跡の中に入って行った。遺跡は薄暗く、目を凝らさないとよく見えない。床は凸凹としており、油断するとこけそうになる。
前から順番にグレシア、フレア、エリック、リブ、俺という順番である。
「お兄さん、私の前に行っていいよ」
リブが世にも恐ろしい提案をしてきた。
「いや! 遠慮しておくよ! だってさ、今の俺が行っても役に立たないしさ」
「はぁ......記憶を無くして、ダメ兄貴になってしまったな」
仕方ないじゃないか。俺、元ヒモ男だったし。
そういえば、この世界にヒモ男はいるのだろうか? 流石にいるよな。どの時代にも一人はいるもんだ。
「みんな、止まって!」
グレシアが突然叫んだ。
「グレシア、これゴブリンだね」
フレアがグレシアに尋ねた。
「ええ、そうね。ざっと見たところ、十体ほどいますね......」
俺はゴブリンを観察した。名前だけななら、ファンタジー漫画とかで見たことがある。奴らは背がまるで二頭身のように低く、肌が緑、長い鼻を耳をしていた。
手には木のバットのようなものを持っている。
「ここは私の魔法で一掃してやります。みんな、下がってください」
グレシアがゴブリンに向かって手をかざした。グレシアから綺麗な青白いオーラのようなものが目視できた。
ゴブリンが立っている場所からは大きな水色の魔法陣が見えた。
「全てを凍りつかせる絶対の寒さ。魔力から伝わるわ氷の魔法、『フリーズ』」
ゴブリンは一瞬のうちにグレシアの魔法で氷ついた。
「おお、これはすごいな......」
俺はグレシアの魔法に圧倒された。
「いえ、私なんて大したことありません。それよりも、今のうちに奥に進みましょう」
「ああ」
俺は頷き、再び歩き始めた。中はどんどん暗くなって来た。
「暗くなって来たね」
リブがそんなことを言った。
「なら、ここは私が。『フレイムボール』」
フレアの掌の上に小さな赤い魔法陣が発生すると中から火の玉が出て来た。火のあかりで周囲の様子がいくらか確認できた。
「うちも明るくするよ。はぁぁ......!」
エリックはバチバチと電気を体に纏った。一気に明るくなった。
「エリック、確かに明るくなったけど、絶対に俺に触れるんじゃないぞ。絶対にそれ感電するよな?」
「だ、大丈夫だよ。多分......」
「絶対に大丈夫じゃないだろ!」
結局、エリックの体から電気を放出させる魔法をやめさせて、フレアの火の玉の明かりを頼りに遺跡の中を探索した。




