ギルドハウス
「例えばだな、『魔王軍の傘下になる』という条件で呪いを解いてもらうとか」
できることなら俺は戦いたくない。この方法で呪いが解けるなら万々歳だ。
「お兄様、正気ですか? 魔王軍になるだなんて......そんな情けないことを」
悲しそうな声でグレシアが苦言を呈した。
「まぁ、聞けよ。呪いを解いてもらったらトンズラすればいいだろ」
「うわぁ......お兄さんがプライドのかけらもないクズのようなことを言うなんて......記憶喪失とは言え、もはや別の人みたい」
「なんだよ、フレアまで......無駄な戦闘をしなくていいならしないほうがいいだろ」
すると、リブが口を挟んだ。
「私の感想としてはお兄さんの案も悪くはないと思うけど、そう簡単にあの魔王の手先は呪いを解いてくれないと思うよ。やばそうなやつだったし......」
やばそうなやつか。どんなやつだったんだろう。
「た、確かに......」
エリックまでトラウマを思い出しかのごとくブルブルと震えていた。
やだ、怖くなってきた。何とか二つ目の案で乗り切れないものか。
「お兄様、ここは魔王の手先を倒す方法で行きましょう。しっかりと準備をすれば何とかなります」
「グレシア......そうだな。とりあえずはその方法で行くしかないかもな。分かった。それじゃ、色々強力な装備とか武器を手に入れておこう」
「お兄さん、でもあまりこの家にもうお金ないよ?」
フレアが衝撃的な事実を言った。
「ほ、本当か?」
「うん。魔王の手先にボロボロに負けて帰ったあと、家のお金を私たちの治療費につかっちゃったからね」
それは困った。これはどうすべきか。
「やっぱりここはクエストやダンジョンに挑むしかないんじゃない?」
クエストにダンジョン。なんかゲームで聞いたことはあるがあまりゲームをしないため詳しいことはよく分からない。
「エリック、それどんなのだ?」
「それも覚えてないか......お金を稼ぐため、街の近くにうろつくモンスターを倒したり、他お宝が眠っているダンジョン探索にうちらよく行ってたんだよ」
「そうか。じゃあ、そうするか」
クエストにダンジョンか......これはいよいよ、ファンタジーの世界っぽくなってきたな。しかし、四人がいるとはいえいきなり戦闘とか不安しかない。
グレシアが立ち上がった。
「それじゃ早速 、ギルドハウスに向かいましょう。お兄様、ギルドカードを準備しておいてください」
聞き慣れない単語が飛び出てきた。
「ギルドカード?」
「はい。お兄様のジョブとランクが記載されているカードです。お兄様の部屋の机の引き出しに入っているはずですから探してみてください。装備もタンスに入ってますので準備をお願いします」
「分かった」
俺は自分の部屋に戻った。グレシアの指示通り机にある引き出しを探した。引き出しの中にはプラスチック製のカードが入っていた。カードには文字が刻まれている。
「職業、騎士......ランク、S」
見たことがない文字——おそらくはこの世界の文字でそう記載されていた。何故か俺はこの世界の文字を読むことができた。それにしても、ランクSか。おそらく最上クラスのランクだろう。
さらにタンスの中には年季が入った鎧と盾と剣が入っていた。
鎧を着てみると、非常に重かった。これはやるづらそうである。
俺は鎧の代わりに鎧の代わりに、タンスの中にあった茶色の布の半袖のような服と赤いマント、茶色のズボンを履くことにした。
防御力こそ下がるだろうが、動きやすさ的に絶対にこっちの方がいいだろう。剣と盾を持つと、ズシリと重量感を感じた。
うん、やはりこれで鎧を着けようものなら確実に動くのが難しくなるだろう。
一度リビングに戻ると、それぞれ身支度を終えていた。グレシアとフレアはそれぞれ、髪型の色と同じローブを着ている。
エリックは昨日と同じような革ジャンとショートパンツである。手にはいつもと違うエレキギターを持っている。
リブも同様に昨日と同じような服装だった。
「お兄さん、鎧はどうしたの?」
フレアが不思議そうな顔をして聞いた。
「鎧を着て見たんだが、思ったよりも重くてな。この格好で行こうと思う」
「そうですか......いつものお兄様なら鎧を着ていてもかなりの速さで動けるのですが。まだ本調子じゃないので仕方ありませんね。それじゃ、行きましょう」
俺たちはギルドハウスに向かうべく歩いた。
「なぁ、みんなの職業は魔法使いか?」
「そうだよ。おにいちゃん以外、全員魔法使い。うちはすっごい雷魔法を使えるから頼りにしていいよ!」
俺の問いにエリックが答えた。
「エリックは魔法使いの格好に見えないな......それになんでギターなんて持っていくんだ」
「うちはこの格好が一番戦いやすいんだよ。それにこれは普通のギターじゃないよ。マジックアイテムだよ」
「え......本当か?」
どう見てもただのギターにしか見えない。
「うん。引けば電流が流れるし、鈍器としても活用できるんだよ」
もはやそれは凶器である。
「そ、そうか......」
歩いて十分後、ギルドハウスに着いた。




