赤い川。
私は、自分のお腹の音で目覚めた。
自分の部屋のドアをゆっくり慎重に開け、
居間にいった。誰もいなかった。
テレビを付け、時間を確認する。
「あぁ、もう午後1時か。」
今日もまたやってしまった。
朝起きて学校に行こうと思っているのに
できなかった。
幼馴染の修也が待っているのに。
なんだか、とても気分が悪いので
学校には行かず、
夜を寝て待つことにした。
部活帰りの中学生が外で叫んでる声で
びっくりして私は飛び起きた。不快だ。
私は布団を投げ飛ばすようにはぎ、
ベッドから降りた。
そして、自分の部屋を出た瞬間
「ピンポーン、ピンポーン」
チャイムが鳴った。
誰だろうと思いながら
重たいドアを開けてみると
少し不機嫌そうな顔の修也がいた。
「なんで、今日も来なかったの。」
別に貴方に関係ないじゃない、
なんで行かなくてはならないの?
なんて言えるはずもなく、
少し微笑んで私は言った。
「少し体調が悪かったの。」
修也はまた不機嫌そうな顔をして
私の手を引っ張りこう言った
「赤い川へいこう。」
私は何のことか分からなかった。
戸惑う私に修也は優しく微笑んだ。
ドキドキした。気持ち悪い。
私の手をぐいぐいと
引っ張る修也の手の力にはかなうわけもなく、
小銭だけを乱暴にポケットに突っ込み、
外へ出た。
ふと空を見上げてみると
夕方になっていた。不快だ。夕方は大嫌いだ。
気持ち悪い。小さい頃を思い出す。
カラスが泣いたら、私の空から
太陽が消えかかったら、
家に帰らなくては行けなかった。
小さい頃から私の家族は
私に理想を押し付けていた。
私は私らしく生きていたいのに、
自分を育みたいのに、
周りの理想に押し潰されそうになっていた。
そんな時私の手を引っ張って
遠くへと連れ出してくれたのが修也だった。
いや、実際はそんなに遠くでは
無かったのかも知れない。嬉しかった。
修也の手から伝わる温もりはまるで
優しい太陽のようだった。
「ついたよ。」
修也の声でハッとした。
目の前にはキラキラと光る
赤い川があった。そうだ。ここだ。
修也はあの時、
ここに連れてきてくれたのだ。
涙が流れた。赤い川は緩やかに流れて
私を優しく包み込んでいるようだった。
なんで、自分でもこんなに涙が出るのかが
分からなかった。いや分かっていた。
分かりたくなかっただけだ。
私の太陽は死んでいたのだ。
すごく悲しくて寂しくて赤ん坊のように
泣きわめいた。修也が無言で手を繋いでてくれた。
修也の手からは、あの日と同じ
優しい太陽のような
温もりは伝わってこなかったけれども、
繋いでくれた手は心地よかった。
私は安心して眠ってしまった。
太陽が消えて月が顔を出す時
私は起きた。
隣をみると手を繋いでくれていた
修也はいなかった。
赤い川もなくなっていた。