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不運は半分こ  作者: セロリとドレッシング
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5

「華~!!」

「・・・ごほ、ごほ!どうしたの志恩?」

 小学三年生になり私はよく咳が出るようになっていた。マスク姿が基本になってきたよ。

 咳がでるせいでこの間の学校行事であるザリガニ釣りに行けなかったよ。めっちゃ行きたかったのに、私のザリガニ釣りのうまさをなめるなよー。夏休みに伊作と朝からザリガニ釣りをしてバケツいっぱいに釣って、帰り道志恩が足を滑らせ全部逃したんだからな!

 まぁそれはさておき、学校行事のザリガニ釣りなんて志恩に何が起こるかわからない。最悪志恩はぬかるんでいるところで転んで頭を石などにぶつけ大怪我をするのではないだろうか?

『ごっほ!ごっほごっほ!・・・じおんが、ごっほ!げっほ!!じぬがら!!』

『今日は病院行くからザリガニ釣りは諦めなさい!そして志恩君は丈夫だから大丈夫!!』

 咳で苦しむ中ランドセルを背負おうとしてお母さんに止められた。

『じおんがー!!!ごほ!!げほ!ぼぇ!』

 この日は特に咳が酷かった。だから病院に連行された。なんかもう一回来いとか言われたよ。医者マジで嫌い。

 ちなみに志恩はザリガニ釣りの日水に落ちたぐらいですんだらしい。志恩生きてて良かったよ。

「宿題やってきたのに、なんかみんなの宿題と俺の宿題が違う!」

 半泣きで持ってきたプリントを受け取り自分の宿題と比べる。

「志恩・・・これかけ算習い始めた頃の宿題じゃん。懐かしいね。」

「え!」

 涙を浮かべて嘆く伊作の頭を撫でたあと、机の中から算数のノートを取り出して一枚破く。

「志恩まだ間に合うから私のプリントの問題の番号と答え写しな。ごっほ、げっほ」

 そう言うと志恩は少し間抜けな顔をしたあと笑顔になった。

「ごめんね華!ありがとう!!」

慌てて自分の席に戻り私のプリントを写し始めた。

「・・・・・げほ、ごほ!ごっほ」

 志恩がどんなドジを踏んでもフォローできるように勉強を頑張って、体育も頑張った。志恩が不運な分、私がフォローすればなんとかなるでしょ。

「華今度は鉛筆の芯が全部折れたうえに、鉛筆削りがこわれたよー!!」

 また半泣きで走ってくる志恩にお道具箱の中から鉛筆削りを取り出し渡す。

「私の、げほ!鉛筆削り使いなごっほごほ!」

「・・・」

 私から鉛筆削りを受け取った志恩は眉間に皺を寄せて私を見ている。

「げほ!・・・どした?」

「大丈夫なんだよね?」

 心配そうにこっちを見てくる志恩の頬っぺたをつねった。

「いしゃい!いしゃい!」

志恩は私が離すと頬っぺを手で擦る。

「・・・大丈夫だよ」

マスクをずらし口に笑みを浮かべる。

「・・・うん!」

少し不安そうな顔をしたあと笑顔で伊作は頷いた。


バシャーン


「俺と華の宿題がー!!」

「大島ごめん!!」

 後ろから飛んできたバケツが志恩に飛んできた。そして手に持っていた私の宿題とノート一枚、そして志恩は水浸しになったうえなんか薄汚れた。ちょい待て、なんで掃除の時間でもないのに汚れた水が入ったバケツを持ってるんだよ。

「流石すぎるぞ、ごほ!志恩」

「何が流石なんだよー!?」

 濡れたまま膝をつき志恩は宿題だった物体を持って泣き始めた。

「ごめ"ん"ね"ーー!!華ー!!うわあん!」

 泣かせてしまった男子もオロオロし始めた。私はハンカチを取り出すとしゃがみ志恩の顔を拭いていく。

「泣くな志恩げほ!」

「だっで、だっで!」

 私のボロボロになった宿題を見て志恩は更に泣き始めた。そんな志恩の濡れた頭を撫でる。

「宿題は別にいい。げほ!げほげほ!志恩が泣く方が嫌だ。だから泣き止んで」

「グッス、グス」

 手で目を拭う志恩を立たせ、志恩の体育袋を持ち男子トイレに向かう。あーあ、目が赤くなっちゃってる。注目を浴びながら教室をでる。

「志恩君に華ちゃんどうしたの!?」

「水を被った志恩を着替えさせるので少し授業抜けます。あとこれ宿題です。」

 廊下ですれ違った担任にビショビショの宿題とノートの切れ端を渡す。先生は何かを悟ったような顔をして頷いた。恐らく志恩の不運体質は先生達に知れ渡っているのだろう。だからフォローのために幼馴染で従姉妹の私が毎年志恩と同じクラスだったんだと思う。

「ぐっす、ひっく!えっぐ」

「げほ、ごほ、トイレで着替えてきなーげほっ」

 志恩からパーカーを脱がせ体育袋を渡してトイレへ背中を押す。中に入っていく志恩の背中を見送り流しで薄汚れたパーカーを洗っていく。落ちねー。これも不運なのか。

「げほ、ごほ」

「華~。なんか鼻の頭切っちゃったよ」

「なんで!?」

 泣きやみ苦笑いで出てきた志恩鼻の頭からは血が垂れていた。マジで何でだよ!?

「ぷ・・・あははははげほ!ごほ!ははは」

 そんな志恩を見てお腹を抱えて笑った。志恩はぽかーんとしたあと笑顔になった。そんな志恩の頭をハンカチで拭いていく。

「笑うなんて酷いなー」

 不満を口にしているのに笑っているのがわかる。

「ご、ごめんね。げほ!でもなんかおっかしげほ!くて」

 志恩といると大変なこともあるけどそれ以上に楽しいし心がポカポカする。頭を吹き終わったあとポッケから絆創膏を志恩の鼻に貼る。

「かわいいぞ~!」

「俺男なんだけど」



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