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不運は半分こ  作者: セロリとドレッシング
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4

「賢二本当にやるのかい?」

「・・・うん、僕の気持ちはかわらないよ」

「なになに!?何やるのー!?」

 賢二の席で志恩と賢二が神妙な顔をして何かを話し合っていた。私は後ろから賢二の頭をぐしゃぐしゃにし登場した。

「・・・なんだよ華。髪をぐしゃぐしゃにするな」

「チッ、チッ、チッ」

 指を左右に振って目を細める。賢二君は分かってませんな~。

「賢二は分かってないな~。これは女子にやったら重罪なんだけど男子にはやって良いんだよー。」

「・・・良くないよ」

 女子は毎朝髪の毛セットでアイロンやら頑張ってるのに流石にこんなことできない。賢二や志恩の髪は寝癖だけ直したthe自然体だから罪は軽いだろう。

「あ、華髪ゴムが緩んでるよ」

 志恩に指摘されて髪ゴムに触れてみると確かに緩んでいて取れかかっている。

「髪ゴム寿命来たかなー。今日買いに行くわ」

 一度髪ゴムを取りポケットの中に入れていた櫛で軽く髪の毛を梳かし、校則違反のピンク色の髪ゴムをもう一度付け直す。

「で、賢二と志恩は何すんの?」

 この二人は小学三年生の頃に出会ってから何か波長が合うのか良く二人で面白いことをしていた。ときには大人に内緒で電車に乗って山の中に図鑑に載っていた薬草を取りに行ったり、自転車を改造して人力飛行機を作ったりなどなど色々なことをしている。賢二見た目はそんな行動的に見えないのに。

まぁ、山に行ったのは結局遭難仕掛けて親にこっ酷く怒られてたし、人力飛行機は落下して志恩二本骨折ってたけど。それでもめげずに色んなことに挑戦する二人は凄いと思う。そして志恩はいつもそのときのことを行けない私に話してくれる。

 聞くたび志恩って本当に不運だなと実感するけどそれでもその顔はなんだか楽しそうだったりもする。賢二に出会う前までは志恩の友達は私と志恩の部屋にある無数の植物たちぐらいだった。だから賢二には感謝してもしきれない。

 ベッドの中でよく考えてたなぁ。このまま志恩の友達が植物たちだけになっちゃったらどうしようって。そのことが不安過ぎて夜泣いたこともあったよ。

 だから賢二を紹介された時めっちゃ嬉しかった。しかも賢二すごい良いやつなんだもん!!バカだけど!!いや,正しく言えば自分の興味のあることしか真面目にやらない子なんだよね。志恩の不運もそんなに気にしてないどころか不運に対して無関心なくせに、転んだ志恩を助けてくれたりするんだよね。賢二になら私の幼馴染を任せられるよ。

「・・・今回は僕らはヒーローになってみようと思うんだ」

「志恩は何本骨を折るの?」

 賢二の口から出た台詞に反射的に出てしまった。志恩絶対満身創痍になるやつだよこれ。

「俺も忍者をやったらどうなるかぐらい予想がついてるよ、だから今回は援護に回るんだ」

 あんたらは何と闘っているの?二人の顔は真剣そのものでとても今年高校受験を控えた中学三年生だとは思えない。・・・いつまでも少年の心を忘れないというやつか。

「今回は危険が伴うことも多いからいつでも応急処置ができるようにしておくよ!」

「志恩は度重なる不運のおかげで応急処置めっちゃうまいもんねー。救急車乗る時とか褒められるんでしょー」

 実行する山はいつもお世話になっている山らしい。もう山の持ち主には話しつけてんのかよ。なんなのこいつら凄い真面目に作戦会議始めてるして。このぐらい真面目に授業受けてれば絶対成績上がるよ。でも志恩は解答欄を間違えるという不運さえ起きなければそんなに悪くないか。

「賢二設計とかはできるんだから勉強もっと頑張れよー」

「・・・そのうちね」

「それ絶対やらないやつ」

 授業開始のチャイムがなって私達は自分の席に戻った。



「ねぇ華」

「なーに?」

 志恩と歩いて帰る帰り道。いつもの風景だ。

「あのさ、賢二と山に行く日華も来れないかな?久しぶりに華と出かけたいなぁーって思って」

 照れているのか少し俯きながらもこちらの様子を伺っている志恩に笑みが浮かぶ。

「ごめんね。ちょっと無理だわ」

 歯を見せながら笑うと志恩は少し悲しそうな顔をしたあと

「そうだよね、ごめんね」

って言って悲しそうに笑った。私は志恩と向き合う形で前に出て手を握って立ち止まった。

「あんまり遠くには行けないけど今度買い物行こうよ」

 そう言うと志恩はみるみる笑顔になっていった。

「うん!」

 手を繋いだまま歩き出した帰り道は夕暮れのせいなのか暖かくて気持ちよかった。


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