初戦
竜人は家の近くまで来ると爆発音のするところがなんとなく分かった。
「空き地か?」
空き地というのは竜人の家の隣にある空き地で、戦うには丁度いい広さの場所だ。ただ、誰も整備していないので足場は雑草と粗大ゴミで荒れている。
息を切らしながら空き地に到着した。すると、神化している人が2人おり、睨み合っていた。
一方はぼろぼろなっていて棒のような物で体を支えている状態だ。それに対してもう一方は銀色に輝くグローブを着けた手を平然と構えている。
よく見るとぼろぼろの方の肩には星を真っ二つに切られた形の彫刻がある。対して優位に立っている方の肩には三日月のような形が彫られている。
自分の肩にある彫刻と同じ人を仲間と認識するなり神化した。
状況は圧倒的に不利。助けに行っても足手まといになるだけかもしれない。しかし、ここで見ないふりをしたらこれからも見ないふりを続けてしまいそうで怖い。
鎌は案外軽く良い感じで敵の懐に入り横に一振りした。不意討ちにも関わらず鋭い反射神経で、勢い良く後ろに下がる。
刃が硬い殻と擦れ合い、耳を塞ぎたくなるような音が出来上がった。
その隙を狙って味方は武器である棒のようなものを伸ばして敵に当てようとするが、それも避けられる。そして、敵は棒へ手を伸ばす。
手が棒に触れるギリギリで棒は縮んだ。
『触っている物を爆発させる』
『自身を含めた触っている物を爆発させる』
『火を放てる』
という3つの文が脳内を横切る。それと同時にこれは相手の能力だと直感的にわかった。
能力の存在を思い出す。しかし、自分の能力がわからない。
もともとこういう仕様なのか、自分が特別だからか、そういう能力なのか考える。その間にも敵は隙を伺い、いつでも攻撃できる体勢だ。
少しでも油断したらやられるビジョンしか見えてこない。
「あいつの手には触れるなよ!」
「えっ」
思わず味方に目線をずらしてしまった。その一瞬を見逃すことなく敵は鎌をめがけて手を伸ばす。
雑草が地味な音を立てて容赦なく近寄ってくる。
竜人は持ち前の反射神経を恐怖に押さえつけられ、どうすることもできなかった。
武器が敵の手に触れ、相手の口元が緩む......
「あっ」
気づいたがもう遅かった。柄に触れている拳から凄い衝撃波がでてくる。そして、オレンジ色の空に爆発音が鳴り響いた。