表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

選抜


その日の夜、昼間に橘と話したことを思い出した。話しているときに入ってきた髪の香りがまだ、鼻の奥に残っている。


だが、今回はたまたま行事があって話せただけで、これ程の幸運はもう無いかもしれない。


部活は入ってないと言っいてたから一緒に部活入ろう、と誘ってみようか? などと橘と話す理由を考えた。


そんな事を考えてるうちにかなり深い眠りについていたはずだったのだが、すぐに目を覚ました。


目の前は自分の部屋とは思えない程暗く、天井すら見えない。それから布団の柔らかい感触もなく、浮いているかのように体が軽い。


『相原竜人、お主、代理戦争に参加してみたいとは思わんか?』


聞こえる、というより脳に文字を叩き込まれてそれを読んでいるという感じだった。ここはどこなのか、何が起こっているのかわからない。


「お前は誰だ?」


自分の存在すらも危うい世界で、気が狂いそうになりながらも得体の知らない声の持ち主に恐る恐る聞く


『私は死神だ。今神々の間で争いが起きている。しかし、私達が戦争すると、地球が崩壊してしまう。そこで、かわりに人間に戦争してもらおうと考えた。それで、神々はそれぞれ誰かと契約し、代わりに戦ってもらっている。もちろん強制ではない。それに、勝ったら報酬として願いを一つ叶えてやる。さぁ、どうする?』


一気に沢山の情報が頭に流れ込んできて混乱したが、一度落ち着き整理した。


そこで、細かく質問したいことはいろいろあったが、一番気になったのは、願いを一つ叶えられるということだった。


「願いって、何でもか?」


今までの自分なら「やめておく」と即答していただろう。しかし、今はめんどくさいなんて思わない。


『何でも、というわけでわない。私達でもできないことや、やりたくないことだってある』


その言葉で希望の光が見える。


欲望に狩られた少年は目を光らせた。


「じゃあ、ある人と一生一緒にいられるとかは?」


この願いが叶えられるなら命を賭けることだって容易いことだと竜人は思った。どうせ橘がいない世界など死んでいるのとさほど変わらない。そう思っているから。


『容易いことだ』


「ならやってやる!」


ためらいの一つもなく参加を宣言した。


普通なら好きな人と一生一緒過ごすためだけに命を賭けれるか? しかもしっかりと知っている人でもなく、単なる片想いであろう恋の相手に命を賭けるようなバカなことは到底できない。


それをこんな簡単にやろうとしているのは何故か。


それは、竜人が心の底から好きだから、橘と一緒にいた時間は始めて楽しいと感じた時間だったから、たったこれだけの理由だった。


自分が相手のことを考えず、欲望だけで願いを叶えようとしていることもわかっていた。


『説明するからよく聞け』


頭に浮かぶ未来は、そう簡単に実現できないものだ。なのにできない気がしない。


『代理戦争とは現世でそれぞれ契約した神の力を授かり、神化して戦ってもらう』


スポーツ万能な竜人は戦いと聞いて闘気が燃える。


『代理戦争のルールを説明する。一つ、敵陣を全滅させたら勝利』


数は分からない。しかし、勝つ未来しか想像できないのは変化無しだった。


『一つ、武器が壊れたら負け』


どんな武器か心が高鳴る。


『一つ、契約は解除できない』


一度参加したら途中では止められない......。


本当なら慎重に考えないといけないが、もう意志は固まっている。


『次は神化についての説明をする。神化してる間は普通の人間には見えなくなるり、身体能力はそのままだ。しかし、それぞれ契約した神の能力の一部が使える。神化した状態で間違ってでも契約していない人間を攻撃をしたら何かしらの罰が下るから気をつけるんだな』


「わかった」


かつて存在していた兄のように誰にでも優しく、みんなの憧れにはなれないことはわかっていた。だからこそ開き直ってしまった方が楽なのだ。


『最後の確認だ。本当に契約するのか?』


圧倒されるほどの勢いが文字に込められており、今にも吹き飛びそうになった。が、


「もちろん!」


覚悟を決め、堂々と答える。


『契約は完了した。その証にお前の左肩に私達の陣営のマークをつけた。神化してる時にこのマークは見えるようになり、これで敵か味方か分かる。神化する時、解除する時はマークに手を当て、心の中でゼファーと言えばいい。最後に武器は壊されないように気をつけろ、幸運を祈る』


補足を言い終わると同時に意識は徐々に薄れていった......。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ