悪役令嬢から日本の女子高生に転移
数話で終わる予定です。
第1話
「ここは………どこなのかしら!?」
私、メルリー・ラドワーネスは現在異国の地にいますわ!
灰色の硬い謎の素材でできた地面の上に。
これは転移と呼ぶのかしら………?
先ほどまで、ランスワー王国にいたはずですのに………ここは高い建物が並ぶばかりで、私のお屋敷のような建物が見られないのですが。
流れ行く人々は見慣れない服装ばかり。
な、なんですの!あの短すぎるスカートの丈はあれでは太ももが見えてしまうではないですか。それにあの人は女性なのに見たことのない素材の青いズボンをお履きに。
皆様お顔が整っているのですから、もっと高品質なドレスを着るべきなのでは?
………あ、あれ?なぜ私もあの青いズボンを?まあ、動きやすいですけれども。
そして手にはまたまた分からない鞄がありました。
とはいえ、ここはどこなのかしら?
私はランスワー王国でも一二を争う公爵家、ラドワーネス家の長女、16歳ですわ。
一応水属性の魔法が使えますわ。魔法が使えるので国の都市部にあるオーテスクス学園に通ってまして、そろそろ第四学年に進級する頃でしたの。
ちなみに元婚約者(訳あって元と付きますが)は国の第二王子のクテユス様でしたわ。それはもう、容姿端麗で私では手が届かないほどのお方で。
そんな私は、ここに転生される少し前にクテユス様に婚約破棄をされましたの。(こう言っては失礼ですが)見た目だけが美しい平民の女性を隣に連れて。
ここにくる数時間ほど前はクテユス様や他の最高学年生の卒業式で、その場で先ほどいった婚約破棄が。例の平民の女性(私と同い年)がクテユス様の恋人らしいです。あの感じですと、クテユス様は彼女とご結婚するおつもりなのでしょう。
先ほど見た目だけが美しいと言いましたが、なんと彼女はあの場でデタラメを私に申し上げました。
「貴女が裏で糸を引いて、数日前に私を池に落としたのは分かっているのよ!」
「私の一番お気に入りのスカートは破いちゃうし。あれは、クテユス様にプレゼントしてもらった物なのに………」
「それに、この前なんて貴女の水魔法で全身びちょびちょになったし」
などこんな話が数十分後続きました。全て見覚えはございませんが、いくら否定しようとクテユス様は私の事は信じてくれませんでした。
正直私は、幼少期からの王妃教育にうんざりしていました。クテユス様は第二王子ですが王位継承権は第1位らしいです。私は反抗の意味を込めて皇太子とは呼ばず第二王子と呼んでおりました。私に王妃は荷が重すぎます。
しかし、クテユス様は嫌いではありませんでしたの。恋愛感情を持っていたわけではございませんが。憧れの意味で好意を抱いていたのでしょう。そんな人に目の前で婚約破棄をされては少しばかりショックを受けましたわ。その後、私は卒業式の会場から逃げ出しました。
そして、気がつけば異国に。
とりあえず私は気を取り直して、手持ちの鞄の中を見ました。中身には長方形の形をした入れ物だけが入っていました。
と、私の目の前に何かが止まらました。な、なんですの、これは!すごく大きくて黒いわ。硬そうなもので作られているみたいです。
と、思考を巡らせていると、一人の男性が後方ドアのところから出てきました。黒髪で、すごくお顔が整っていますわ。年齢は私とあまり変わらないでしょう。
そして彼は私の目の前に来て言いました。
「初めまして。君が海女咲 瑠璃ちゃんだよね?」
「あの、私はメルリー・ラドワーネスですわ。その………アマサキ ルリ様という方はここにはおられませんわ」
「えーと、こういう子を厨二病って言うんだっけ?」
最後の方は何を言ってるか分かりませんでしたが、まあきっと気にしないでいいのでしょう。
出会って、すぐに「別人です」と否定するのはあまり良い気もしませんが、人違いなら仕方がないですわ。
「あれ?人違いなわけないんだけどな。だってここで待ち合わせをしたから。………ね、僕の義妹ちゃん?」
私は待ち合わせではなく、事故でここにいるような。
って、え?義妹?
「あ、あの………義妹って………!」
「あれ?もしかしてお母さんから聞いてない?今日から瑠璃ちゃんは僕の義妹だよ?とりあえず、車に乗ってから話をしようか」
お、お母様!そんな事は一言も言っていただけなかったではありませんか!
「さあ、車に乗って。僕の家、いや僕たちの家に帰ろうか」
私は男性に背中を押されて、その"クルマ"という黒いのに乗せられました。中は座りやすい大きな椅子が前側と後ろ側に。私と男性は二人並んで後ろ側を席に座りました。
「わあ!すごいですわ!」
急にその"クルマ"というのが走り出しました。どうなっているのでしょうか。きっと、何か高度な魔法でも組み込まれているのでしょう。
「これは、なんの魔法が使われているのでしょう?」
「え、魔法?ははっ、車は魔法では動いてないよ」
魔法ではないなんて………この国を舐めてはいけませんわね。
「そういや、まだ言ってなかったね。僕は浅賀 真斗。よろしくね」
と、男性が言いました。
アサガ・マサト………
家名がマサトですか。ずいぶん珍しいですわね。
「えーと、マサト家のアサガ様ですか?」
「ふははっ、そこまで細かい設定なんだ。えーと、瑠璃ちゃんの言い方に合わせるとマサト アサガかな」
きっとこの国では家名と名前は逆に言うのでしょう。
なら、私はラドワーネス・メルリーですね。少々違和感はありますが、この国にいる以上は慣れなけれいけませんわ!
「それより、私はメルリーですわ!………もしかして、愛称として私をルリと呼んでいましたか!?」
それならずいぶんこの国の人々は距離が近いですね。初対面の人に愛称で呼び合うなんて………
なら、私もそうしなければなりませんわね。えーと………なら、マサ様とお呼びしましょうか。
「もしかして、瑠璃ちゃんはこれも見込んで名前をメルリーにしたかな?かなり考えられている設定だな………」
「意味がわかりませんが、何も見込んでませんわ」
「本当に瑠璃ちゃんは、いやルリは面白いね」
きっと、マサ様にしか分からない笑いの種があるのでしょう。
マサ様が私の義兄になって早二週間が経ちました。私もだんだんとこの世界の生活には慣れてきました。
マサ様は日を重ねるどこに、私に対して甘くなりました。これでは私がダメ人間になってしまいますわ。
そして、衝撃的な事にこの世界では魔法が使えないのです!
ちなみに、私は自室をもらったのでそこで好きな事をして、毎日を過ごしていますわ。どうやらこのアサガ家は良い家柄らしく、すごく美しいお家ですわ。
ちなみに、食事は常にフォークとスプーンを使ってますわ。あの"ハシ"という二本の棒には未だに慣れませんわ。この国の人々はどのようにしてあれを使っているのやら………
嬉しいことにこの国はランスワー王国で使っていた言語と同じなのです。ランスワー語ですわ。こちらでは"ニホンゴ"というのですが。ここはどうやら"ニホン"という国で、ランスワー王国は存在すら知られていないらしいですわ。
そして、この"ニホン"での私の名前はアサガ ルリというらしいですわ。
「ルリ、いる?」
トントンと、ノックの音がしてマサ様の声が聞こえました。
いますわ、と返事をしながら私は自室のドアを開けました。
「ルリは今16歳で今年で17歳だったよね」
「ええ、そうですわ」
「なら、学校に通わないとね」
学校………
学校といえば、私の通っていたオーテスクス学園のようなものでしょうか。
オーテスクス学園は魔法学校でしたが。
「そうなると、高校二年生か。僕の一つ下の学年になるね」
「なら、マサ様と同じ学校に通うことができるのですわね!」
「ああ、もちろん。じゃあ早速明後日からにしようか。もちろん僕と一緒に登校してくれるよね?」
「も、もちろんですわ」
私は学校に行くことが決まりました。
そんなこんなで私の学園生活が始まりましたわ。