第一章「新人研修?!」-5
やってきたのは学園内の特別校舎。
最上階にある誰も使っていない錆びれたエレベーターに乗り、地下へと向かう。
現在時刻七時ギリギリか。
目的地に到着し扉が開く。
開いた先は学園の施設内とは思えないほどのコードの束が蔓延っている。
そんな足の踏み場のない場所で唯一人が座れる椅子に座る白衣を着た少女は船を漕いでいた。
「はよーす、浅葱さん」
「ん…おーハルト君じゃないか。いつ帰ってきたんだい?」
物静かな声音の主は浅葱来夏。
どう見ても中学生にしか見えないこの人の実年齢はその倍。
そして、最も驚くのはガイアの開発課の代表である開発長がこんなところにいることだ。
本当ならガイアに与えられた研究所にいるはずなのだが、自由に研究したいため本部は部下に任せ、一人ここに引きこもっている。
「昨日ですよ。で、預けたやつ返してもらおうと思って」
「あーアレかい。ちょっと待っててね」
大きな欠伸をしながら立ち上がった浅葱さんはコードの森の奥へと入っていき、待つこと数分。戻ってきた時には四角い箱を持っていた。
「前に腕輪型は微妙だと言っていたから、少し改良してみたよ」
箱の中には銀色のピアス。
装飾品の校則はないので問題ないのだが、ピアスか…。
「安心していいよ。穴開けなくても大丈夫だから」
「そうなんですか?」
「あぁ。着けるときは穴が開くけど、外せば元通り」
「どんな原理なんですか」
「一から説明してもいいけど。聞きたい?」
「長くなりそうなんで遠慮しときます」
たぶん、この人寝落ちするしな。
「賢明な判断だ」
「貰うもの貰ったんで。これで」
「帰る前にコーヒーを淹れてくれないかい?」
前に一度コーヒーを淹れてから何かと頼んでくる。
色々とお世話になっているので断れない。が、