エチオピア バドメ争奪紛争
エチオピア軍の情報少なすぎワロタ\(^o^)/
褐色のアフリカの大地。
大自然とは程遠い2機の攻撃ヘリコプターが、煌々と輝く太陽を背に受け飛行している。
「また、か。」
エチオピア陸軍の戦闘ヘリ・Mi-28の操縦士であるネガソ・ゼナウィが呟いた。
「CAS(近接航空支援)の要請ですね。
地上部隊の連中、付近の対空砲は叩き終わってるんですかね。」
副操縦士のメレス・トゥーレが疑問を呈す。
先日、僚機が落とされるのを目の当たりにしたばかりの2人は、敵の対空戦力に過敏になっているのだ。
「お、位置が来ましたね。3…じゃなくて2番機にも知らせてやらんと。」
「…彼らは残念だったな…」
だが、クヨクヨしてられない。
散ってしまった前2番機に報いねば。
以前からエリトリアと帰属問題が生起していた町「バドメ」。
住民のほとんどが自らを「エチオピア国民」と考えており、エチオピアが管理していた。
しかし2日前、エリトリア軍が侵攻を開始したのだ。
「味方が見えました。そろそろですな。」
味方の歩兵部隊や、BMP-3歩兵戦闘車が見える。
途端に、100mm低圧砲を発砲していた味方のBMP-3が吹き飛び、辺りが火炎に包まれた。もちろん、付近の兵士達も。
「RPGか?兵装解除する!兵装システム送った。」
操縦士のネガソが令した。
「了解…、と、RPG兵じゃなかった。正体は戦車です。
9K114ミサイルを使用する!」
…9K114ミサイル。
NATOコードネームはAT-6スパイラル。ロシアの対戦車ミサイルである。
副操縦士のメレスが続ける。
「あの戦車は…Type85…中国からの輸入か。クソッタレめ!」
…85式戦車。中国の第2世代戦車である。武装は83式51口径105mm砲と12.7mm機関銃・7.62mm機関銃だ。
「目標捕捉!発射!」
スタブウィング(短翼)から発射された9K114ミサイルが、白煙を噴き出しながら戦車へ向かう。
そして…
「命中!!目標は…」
突然、大量の光の玉が機体を掠めた。
「機関銃だ!奴め爆発反応装甲か!?
クソ!回避運動!」
グンと機体が傾き、敵の対空砲火を避ける。
「次こそやってやれ!」
任せろ!という返答と共に再度ミサイルが発射された。
後退し、民家の陰に移ろうとする戦車目掛け、ミサイルは飛んでいく。
轟音と共に戦車は吹き飛び、近くの民家が崩れる。
「また、この町は壊されるのか。いや…俺たちが壊すのか?」
機体の中で、そうネガソが吐き捨てた。
戦車の破壊を確認し、1度その場を離れるMi-28。
後方で待機していた2番機が、地上部隊の援護のため前に出る。
戦車の破壊を受け、味方が進軍を再開した。
T-72主力戦車の姿もある。
「来るのが遅すぎたな。…まったく、この戦争には文句しか出ない。」
「全くですなぁ。この町の人らも気の毒に…と、通信だ。」
『…注意…れたし……近に……闘機…』
「急にノイズが出始めたな。聞き取れん。」
「注意と言っているのは聞き取れました。…何か来るのでは?」
突如、警報が鳴り響いた。
「ロックオンされました!フレア!フレア!」
連続的な発射音と共に、火の玉が機体から吹き出す。
近くで対空ミサイルが爆発した。凄まじい衝撃だ。
激しく機体が揺れた。ネガソが必死に機体を立て直す。
メレスが片目を閉じ、血を流れている頭を押さえた。
「直撃は免れたか!やってくれたのは…あいつか。」
「戦闘機ですな。あぁ、くそ、痛え!ありゃSu-27ですかね。」
「J-11じゃないか?奴ら戦闘機も中国から輸入したと聞いたぞ。
きっとこの戦争の為だったんだろうな。」
反転し、再度狙って来るかと思ったが、彼らの主目標はエチオピア空軍機であった。
今回の攻撃は「ついで」だったようだ。
「ついでで殺されるのは御免だな。
メレス、大丈夫か?」
「ええ、なんとか。」
少し無理をしている。ネガソはそう感じた。
『1番機!そこから700m東へ向かってくれ。CASの要請だ。』
「了解。これを終わらせたら、帰投して手当てを受けよう。」
機体を傾け、東へ向かわせる。
眼下には、黒焦げの乗用車や瓦礫と化した民家が点在していた。
ネガソは、思わずため息を吐いた。
◇ ◇ ◇ ◇
「ロケットポッドはおれが担当しよう。
メレスは正確に機関砲を撃ってくれ!」
そう言って、ネガソは3発のロケット弾を発射。エリトリア軍のWZ551装輪装甲車が爆発炎上した。
周りの兵士は無意味にも小銃を発砲するが、メレスの放つ30mm機関砲によりバラバラになる。
この辺りも低い民家と舗装されていない道があるだけ。
そう難しい地形ではない。
『1番機!そこから50mの赤い屋根の民家に民間人だ!!』
「了解、救出の援護を?」
『ああ…だが彼らは自分達をエリトリア人だと…』
それを聞き、メレスは思わず
「それじゃあ俺たちが助けなく「やろう。」
ネガソが割って入った。
「誰だろうが民間人なら助けなくては。壊すばかりは御免だよ。」
ネガソの言葉を聞き、メレスは自分を恥じた。
たとえ敵国人だとしても…助けるべきだ。
大切な心を失うところだったと気付き、メレスはネガソに感謝した。
「行きましょう!」
『民家周辺には敵軍の装甲車3輌と歩兵部隊が展開しつつある。
救出部隊に近づけさせるな!』
「「了解!!」」
少し高度を上げ、目的地周辺を確認する。
「装甲車2輌発見!あいつらから叩くぞ!」
「了解!!」
ネガソがミサイルを放ち、メレスは機関砲で掃射を行う。
多少の対空砲火を上げたものの、ヘリを捕捉する前にBTR80装甲車は吹き飛んだ。
「あんまり地上に近づき過ぎない方が良いでしょう。
機関銃とはいえ、侮れない。」
「そうだな。気を付けよう。
もう一両はどこだ…?」
民間人救出のためにも、早く終わらせなくてはならない。
高度を上げたその時、
「RPG!!」
機体の左側から2発のRPGが飛んできた。
咄嗟に機首を上げ、回避を試みる。
そのまま左に機首を向け、RPGを躱した。
「やってやれ!」
ネガソに応え、メレスが機関砲でRPG兵を木っ端微塵にする。
「このまま右に旋回して、最後の1輌を片付ける!」
筈だった。
突然の衝撃に顔面をぶつける。
途端に機体が回りだす。
被弾したんだ。どこから?
周りのスピードが遅くなるのをネガソは感じていた。
背後…にあるのは防護目標の民家…
まさか助けるつもりだった民間人に?
「ハハッ」
メーデーメーデーという、メレスの必死の叫びを聴きながら、ネガソは諦め混じりに嘲笑した。