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3/13

ending

気が付くと、前の投稿から一週間以上あいてしまい、何してんだ!って思いました。

 「うごごごごごおごおおおごごお・・・」


 魔王の首に刺さった剣は、刀身が中程まで入った所で、止まった。

 それから魔王は叫びとも、呻きともわからない声を、地響きのような声をあげて、ばったりと倒れて、もう動かなかった。

 「・・・うええ・・・」

 俺は魔王の首に刺さったままの剣から手を離し、その場に座り込んだ。魔王の返り血を顔に浴びていた。口の中が鉄の味がして、気持ち悪かった。

 「ぺっ・・・ペっ・・・」

 しかしいくら吐いてもいくら拭っても、その血の味、匂いは消えることがなかった。


 「・・・終わりだ・・・」

 俺は倒れたまま動かない魔王を見て、そう思った。

 「・・・終わりか・・・」

 このために。


 これを行う為に、俺は今まで、勇者としてここまで旅をして、戦い、敵を倒し、殺してきた・・・。


 「やった!」

 と、そう言って喜ぶべきだった。


 「これで世界は平和になる!」

 と、叫んで、喜ぶべき所だった。


 しかし、

 「・・・」

 なんだろう・・・なぜか、喜ぶことが出来なかった。

 それに、全身の力が抜けてしまっていた。もう立つことも出来ない。


 「はあー・・・」

 口からはため息のような声が漏れた。

 もう一生、立つことが出来いないのではないか、そう思える。立てない。体のどこにも力が入らない。


 いつの世もまず魔王が生まれる。

 魔王は世界を恐怖に染める。

 人間の驕りや、自尊心をボコボコにするために。

 そして、もうどうにもならなくなってからやっと、勇者が生まれる。

 やっと。


 その勇者が、魔王を倒せたなら・・・。


 それが、同時に、勇者の終わり。


 そうだ。


 二度活躍する勇者なんて存在しない。


 「・・・」


 勇者は一度だ。


 魔王一人に対して、勇者も一人。


 魔王を倒せば勇者は終わり。


 終わり。


 そうでなくては・・・。



 眠い。


 「・・・うっ」

 突然、激しい眠気が襲ってきた。目眩がするほどの眠気。暗い穴に落ちていくような眠気。

 俺は、


 疲れていた。


 とても。


 俺は魔王を倒すために、今日まで生きてきた。

 勇者だ。

 どれだけの人間に「必ず魔王を倒します」と、そう約束してきただろうか?

 そうしてどれほど、眠れない夜を過ごしてきただろう?

 どれほどのプレッシャーがあった?

 どれほどの人の想いを背負っていた?


 「うえええええ!!おかあさあああーん!!!」


 「どうなんってんだ、おいこれ、どうなんってんだよ!」


 「勇者様、ここはお任せ下さい。決して奴らをここから先には行かせません」


 「お願いします、必ず、必ず魔王を倒してください」


 「お前らが、もっとしっかりしてれば!こいつは死なずに済んだんじゃねえのかよ!」


 「死んじまった終わりだ・・・終わりだよ」


 「アームス、俺達はお前のことを信じている」


 「あなたに神の御加護がありますように」


 「アームス」


 「勇者様」







 「勇者を名乗る者よ、どうしたというのだ?」


 「まさか、貴様は・・・」






 今日、魔王を倒した。

 俺は・・・約束を果たした。

 魔王が生まれれば勇者を名乗る者も、数多生まれる。

 しかし、本当に魔王を倒せるものは・・・そう多くは無いだろう。

 俺は、魔王を倒した。



 これで、


 背負っていたものを下ろす事もできるだろう。世界は平和になる。これから復興していくだろう。俺の役目は、終わりだ。ここで終わり。俺は役目を果たした。果たしたぞ。

 それにしても眠い。

 起きていられない。

 その場に仰向けに寝転がる。魔王の死体が横にあろうとも、もう構わない。もういいだろう?俺も眠って構わないだろう?

 疲れているんだ。

 動くことが出来ない。

 こんなに疲れている。

 魔王を倒して、疲れているんだ。


 そこは魔王の間、敵の本拠地、ラスボスのいるところ。床の材質は硬かったが、俺はまったく気にならなかった。


 気持ちよかった。


 ああ・・・気持ちいい・・・。


 こんな気持ちは何時ぶりだろうか?

 こんなに安心して寝れるのは。



 俺が住んでいた村が魔王の一団に襲撃された、あの時ぶりだろうか?


 父さん、母さん、それに・・・、


 「・・・」


 今まで多くの人間を救ってきた。多くの人間に感謝なんてものをされてきた。

 様々な人と出会い、様々な体験をして、様々な事を行い、様々な事を学んだ。

 生まれ故郷のあの村に一生いたら、絶対に体験できなかっただろうと思う。

 それでも、

 ふとした時、

 例えば、こんな時、

 真っ先に思い浮かぶのは・・・、













 気が付くと、俺は自分の生まれ故郷の村に帰ってきていた。魔王の一団による攻撃で壊滅したはずの村は、平和な頃の風景に戻っていた。


 「おーい」

 そしてその村の入口の所には・・・嘘だろ・・・死んだはずの・・・、


 「・・・お帰りなさい、アームス」

 「・・・た、ただいま・・・エノク・・・」

 「どうだった?」

 「うん・・・」

 「アームス、どうしたの?」

 「・・・うん・・・何でもないよ・・・」

 「・・・ねえ、アームス?」

 「ん・・・」

 「頑張ったね。アームス、すごく頑張った。頑張ったでしょう?」

 「・・・」

 「よしよし」

 「う・・・うう、うええ・・・」

 「お疲れ様、アームス」








絵コンテ


炉久井紙塚

羽生河四ノ

和委志千雅

秋口高瀬



演出


羽生河四ノ

和委志千雅

炉久井紙塚




出演


勇者 アームス


魔王 サンドレード




勇者の幼馴染 エノク




騎士 トライデント

弓使い スキャン

魔法使い サインズ

僧侶 イースター




国王 

王妃

戦士長

執事

門番





村長

村人A

村人B

村人C

踊り子

女の子


占いおばば

盗賊

森の精霊



鍛冶職人(友情出演)


神父


シスターA

シスターB


吟遊詩人

塔の主


偽勇者A

偽勇者B

偽勇者C

偽勇者D

偽勇者E

偽勇者Ω



魔王親衛隊隊長 カスグル



玉座から出てきた奴 羽ノ上五ノ井






原画


炉久井紙塚

羽生河四ノ

和委志千雅

秋口高瀬

田島岬塔台


東海林風海林





動作検査


淡路谷倉



動画


チームいっさいがっさい

秋口高瀬

弱心弱子



仕上げ


なろう館

羽生河四ノ

新山久喜子

夏弥りんね

信田かなえ



背景


即興クラブ

和委志千雅

四谷篠擬木子

多々良智浩



コンポジット撮影


ぴくハザード

炉久井紙塚

加々見折秋祈ハ

御賀槻奏芽



特殊効果


北上八三



CGI


星空文彦



音響制作


新池畑堂諸島気団



音響制作


灯台守

田島岬塔台

合歓木ジラフ

御手洗花

岡部ふゆひ子



DOLBY

Digital



オープニング曲

『ふがいないや』

歌 YUKI


エンディング曲

『COSMIC BOX』

歌 YUKI





制作 


なろう館

羽生河四ノ

小説家になろう






監督


羽生河四ノ









おします










 ・・・ん?








 おしまい


 じゃないのか?









 それに・・・、


 誰だ?羽ノ上五ノ井って・・・。


 あ!


 俺が目を開けると、白いモヤのようなものが顔にかかっており、そして何か聞こえていた。


 「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意無色声香味触法無眼界乃至無意識界無無明亦無無明尽乃至無老死亦無老死尽無苦集滅道無智亦無得以無所得故菩提薩埵依般若波羅蜜多故心無罣礙無罣礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜多是大神呪是大明呪是無上呪是無等等呪能除一切苦真実不虚故説般若波羅蜜多・・・」



 なんか薄気味悪い呪文みたいなやつだった。それになぜか少し顔が痛い、なんだ一体・・・。


 「ぺっ、ぺぺっ!なんだこれ!」

 顔には白くて四角い薄っぺらい紙が乗っており、俺はそれを払って起き上がった。

 「わあ!」

 俺のすぐ脇になんか女がいた。そして手を合わせて謎の呪文を唱えていた。






・・・





 どうも、羽ノ上五ノ井ですよ。いますよ。ちゃんと。


 私が般若心経を唱えていると、突然勇者っぽい人が起き上がり、こちらを凝視しました。

 「起きた・・・死んだかと思った」

 マジで。っていうか死んでた、さっきまで。

 「お前誰だ?」

 その勇者っぽい人は、そう言うと、腰から短剣みたいのを取り出して私に向けてきました。すげえ!異世界っぽい!この最初に疑われる感じ!ちょっと異世界っぽいんじゃん!異世界ってこういうもんでしょ?うひゃー!なろう最高!


 「誰だ!誰だお前!魔王の眷属のやつか?」

 勇者っぽい人は、そんなことを言うと、短剣を構えてすごいギラギラした目をしました。それはもうすごいギラギラでした。さすが勇者っぽい人は違うなあって思いました私。ええ。異世界だなあって思いました。


 あ、でも・・・、

 「あー、あいきゃんのっとすぴーくいんぐりっしゅ・・・」

 「あ?」

 「ん?あれ?違うかな?・・・あー、あいのっときゃんすぴーくいんぐりっしゅ?じゃぱにーずおんりー」

 ええと、大変に恥ずかしい話ですが、私は英語を知りません。このグローバル社会に。お恥ずかしいですけど。英語も知らないし、異世界語も知りません。こんな風にある日突然異世界に行こうって思わないで、前から行こうって思っていたらきっと私だって、駅前留学とかしたかもしれないけど・・・。


 NOVAとかに。


 NOVAの異世界クラスに。



 「・・・お前、何なんだ?」

 あれ?でも聞き取れるな・・・。

 「え?知ってる言葉でしゃべってますか?」

 あら?異世界って、日本語なの?ジャパニーズなの?え?異世界なのに?

 「お前、何を言っている?」

 やっぱり聞き取れる・・・ちょっと異世界!もっとちゃんとしてよ!私の異世界!これだったら最初にキスされて言葉がわかるようになる『天は赤い河のほとり』システム導入すればよかったのに!


 「おい!」

 あ、やべ、そろそろほんとに刺されるかも・・・。


 「私は・・・臀部トレスギです」

 嘘です。

 だっていきなり初対面に相手に本名言ったりして、相手がデスノートとか持っていたらどうするつもりなんですか?死んじゃいますよ。


 「・・・お前は・・・なんだ?どっから来た?」

 「あの、その前にあなたは勇者ですか?」

 質問返し。

 相手が相手なら多分もう速攻で殺されるでしょうね。

 でも、その人は大丈夫じゃねえかなーって思いました。私の肌感ですけど。殺されたらやばいですけど。殺されたら死んじゃってもう大変ですけど。


 「俺は・・・」

 すると、勇者っぽい人はフィクションモノのように「俺は・・・」って言ってきたので、

 「勇者ですか?」

 私はそう言いました。それに大体そうなんですよ。こういう場合は。そもそもエンディングの前に勇者だ勇者だって言ってたし。


 「・・・ああ・・・うん・・・まあ・・・」

 勇者の人は短剣を下ろして、なんか人見知りみたいな感じで言いました。・・・が多いよちょっと。って私は思いましたが、でも私も存外人見知りなので、その点に関しては少し好感が持てました。


 「うわーすげー」

 やっぱり勇者なんだー、ゴイスー!私はショルダーバックから携帯電話を取り出すと、勇者の人に向けて、写真を撮りました。カシャって言いました。異世界で、異世界初カシャ。


 「なんだ今の!」

 勇者の人は、カシャって言ったのが驚いたらしく、一度下ろした短剣を再度私に向けて、勇者っぽい感じで言いました。


 「あ、記念撮影です」

 ええ。異世界記念で。ええ。


 「お前、何を言っている?」

 勇者の人は、ぽかんとしていました。まあそうでしょうね。でも私は私でやりたいこともあるし、それはもう仕方のないことです。


 「異世界の写真をたくさんとって、帰ったらInstagramやりたくて」

 はい。Instagramはまだやってないからさ。やりたくて。本当に一回、やってみたくて。


 「・・・さっきの呪文はなんだ?」


 「あ、あれは呪文じゃありません。般若心経です。まあ・・・死者を弔う言葉・・・かな?」

 浅田次郎先生の『琥珀』っていう短編で、般若心経はどんな方にでもイケる。みたいな事が書いてあって、それで覚えたんですよ。まあ、意味は知らないけど。


 「・・・さっきから顔がいてーんだけど、お前何した?」


 「あー、やっぱりボディシートは顔への刺激が強すぎましたかね?」

 異世界に行くってんだから、ボディシートとかフェイスシートとかいるでしょ?私は顔も体もボディシートで行けますけど。刺激もなれましたけど。


 「・・・」

 勇者の人は、もう何がなんだかわからないみたいで、黙ってしまったので、


 「とりあえず、顔の血を拭いたほうがいいと思いますよ」

 私はそう言って、もう一枚、ボディシートを取り出し勇者の人に渡しました。優しい私。私優しい。超優しい。気遣いの人。


 「ああ・・・」

 勇者の人はそう言うと、素直に顔を拭き始めたので、


 「じゃあ、私帰ります」

 そう言って私は立ち上がりました。


 「ちょ、おい!なんだ!何なんだお前!」

 勇者の人は、まだ混乱しているみたいでしたけど、でも、こればっかりはねえ。




 私、明日歯医者だからさ。


 異世界よりも歯医者。

勇者と、幼馴染と、魔王の名前は、ピクシブ百科事典の『まおゆう』のページを見ながら考えました。考えましたっていうか、そのまま差し込んだだけなんですけど。ちなみに魔王は作者、ママレードサンド・橙乃ままれ氏のママを抜いた部分ですね。他は適当です。思いつくカタカナを入れただけです。


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