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雨と夕顔  作者: 奈月 空
第一章 デルフィニウムの花
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咲かない人


神宮舞は、小さな神様を祀る神社に生まれ、幼い頃から神社の手伝いをしてきた。

何故か両親は舞に対して過保護で、友達と遊ぶことさえ許してもらえていなかった。

そんな舞の楽しみは、祖父母とお喋りをすること。色々な遊びや話を聞かせてもらうのが嬉しかった。


「おばあちゃん、なんであの人胸にお花つけてるの?」


神社へお参りに来た人を指差し祖母を見ると祖母は悲しそうな顔をしてゆっくりと首を振った。


「舞ちゃん、そのお花は貴女にしか見えないの。だから他の人にその事を言ってはいけないよ」


自分だけにしか見えないとその言葉の意味をよく理解できなかったその当時の舞は、喜んでいた。

しかし、

歳を重ねるに連れあの花の意味を知る


胸に咲いている花で人の感情がわかってしまうのだと。



年月が経ち、舞は高校二年生の16歳となっていた。季節は秋、生徒会選挙が近いためか立候補者の意気込みが書かれた校内新聞やポスターが貼られている。

《望月莉緒、皆さんのよりよい学校生活のため誠心誠意努めます!》

前髪をパッツンにしている黒髪美人のポスターにはそう書かれていた。

それを見つめていた舞は、しばらくすると何事もなかったようにその場を立ち去った。

教室に入るとガヤガヤと友達同士で喋っているクラスメイトの声でうるさい。

自分の席へと向かうと後ろの席に座って読書をしているクラスメイトに挨拶をする。


「おはよう」


クラスメイトは目線をこちらに向けただけで挨拶を返してはくれなかった。これは、彼、鬼山いのりなりの挨拶なのだと近くの席になって気付いたことだ。黒い髪に整った顔立ちの彼は、無愛想ながらも女子たちに人気である。


「神宮、おはよう〜!おら、いのりも挨拶ちゃんと返せよ!」


「・・・おはよう」


舞の隣の席の茶髪の男の子、鬼山ろくがいのりの背中を叩きながらそう言うと、いのりは渋々といった感じで挨拶を返してくれた。


「おはよう、鬼山くん」


舞もろくに向かって挨拶を返せば彼は、ニカリと無邪気な笑顔を返してくれる。

いのりとろくは、親戚同士で昔からの付き合いらしい。その為かあまり話さない、いのりがろくとは良く話しているのを見かける。


「もうすぐで、生徒会選挙だけど神宮は誰に入れるか決めたか?」


「私は、まだだなぁ。んー、でも望月さんには入れないかな」


「望月ってアレだろ、昨年生徒会書記だった奴。優しいし美人だしで評判いいじゃん、なんでだ?」


「な、なんとなくかなぁ」


席に座って舞は携帯をいじり始める。なんとなくというのは嘘だ。望月莉緒を初めて見たとき彼女の胸に咲く花はよくない感情を表していた。そんな彼女が生徒会長になったりでもしたらと考えると嫌な予感しかしなかった。


(あの時咲いてたのは黒いユリの花。花言葉は呪い・・・今は、何の花が咲いているんだろ)


「ふーーん?望月以外に候補者って誰がいたっけ」


「烏丸明人、木村矢恵、秋月雫、小沢奈子。烏丸、望月以外は1年だな」


「いのり、よく覚えてるな」


いのりは、再び読書に戻り、ろくは、腕を組んではうんうんと頷いている。

舞は、そんな彼らの胸を見るが彼らの胸には何の花も咲いてはいなかった。もちろん、花が咲いていない人もいるがそれは一時的でしばらくすると咲き始める。

しかし、彼らの胸に花が咲いているのを見たことがなかった。


(そういう人もいるのかもしれない・・・)


毎回そうやって言い聞かせてはいるが、どうしても違和感が残ってしまう。


「なーなー!いのりー、烏丸ってどんなやつだよー!!」


「うるさい」


ろくがいのりにしつこく絡んだせいか、うざったく思ったいのりが彼の顔面向かってノートを投げつける。

そんな二人を見ながら舞は、1限目の準備をすることにした。


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