表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三題噺集

裏切られた彼

作者: シュウ

ツイッターで募集した三題噺です

「涙、影、玉砕」

「俺と付き合ってください!」


夕日の照らされた放課後の教室で、二つの影が浮かんでいた。

その影の正体は、一人の男子生徒が意中の女の子に告白をしていたところだった。

彼はキチンとネットに書いてあった通りに、腰を90度に曲げて、その曲げた腰と同じ角度で手を彼女の前に差し出す。

あとはその手を握ってくれれば告白成功、なのだが……


「ごめんなさい」


そう告げられて彼女は去っていってしまった。

教室に腰を90度に曲げた男子生徒が一人。

彼はピクリとも動かずに、腰を曲げたまま目を見開いていた。

なぜ振られたのか。

なぜネットに書いてあった通りに実行したのに振られたのか。

グーグル先生は嘘つきだったのか。

安価がいけなかったのか。

いろいろなことが頭をよぎっていた。

そんな彼の元へ、さきとは違う女子生徒が一人近づいてきた。


「まぁ。気にすんなよ」


軽く声をかけたのだが、彼はぴくりと動いた程度で、体勢は変わらなかった。

彼女は小さくため息をつき、近くにあった椅子に座った。


「このご時勢、告白して玉砕なんて珍しいもんじゃないって。だから気にしない方がいいと思うよ」

「君にはわからないだろう」

「何が?」

「俺はこの一瞬でいろいろなものに裏切られた。ネットの掲示板の人たち。人生の道しるべとしていたグーグル先生。『これで恋愛成功率100% マル秘テクニック教えちゃうぞっ!』の特集。これから何を信じていけばいいんだ……」


そう言うと彼は直立姿勢へと戻り、真顔で涙を流した。


「振られたことに泣いてるの? それとも裏切られた方に泣いてるの?」

「どちらもだ。でも後者のほうがダメージは大きい」


なんだこいつ、と彼女は思いながらも、それとなく自分の想いを打ち明けてみた。


「そこで提案ってわけじゃないんだけどさ、そんなに辛いんなら、よかったらその、私と付き合ってみない?」


彼女が頬をポリポリとかきながら言うと、彼は涙をピタッと止めて彼女の方をクワッと見た。


「……それはどういうことだ」

「そのまんまの意味だけど……どう?」


頬を赤くして彼女が言うと、彼はスマートフォンを取り出して何やらブツブツと言った。


「これはなんだ。『告白したら友達から告白された事案が発生』? いや、『玉砕直後に告白されたんだが』? なんて書けばいいのか……」

「はいやめー」

「何をする!」


いきなりスマートフォンを取り上げられたことにマジギレをする彼。しかし彼女はそんなことはおかまいなしに、彼のスマートフォンの電源を切った。


「今さっき裏切られたものに助けを求めるの?」

「ぐぬぬ……」

「私はあなたの言葉が聞きたいの。どうする? 付き合う? やめとく?」


彼は顎をポリポリとかきながら小さく言った。


「付き合いたい、です。彼女、欲しいです」

「それでよろしい。じゃあ付き合おう。よろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」


自然に差し出された彼女の手を、彼はドギマギとした想いで握り返した。





おしまい

なんだこれ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ