表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

文才無くても小説を書くスレ参加作品

落ちない線香花火

 文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:線香花火

「それ、最後は落ちるタイプ?」

 僕がそう聞くと、彼女は「うん」と答えた。

「ノスタルジックなタイプが好きなんだね」

 そういう場合はそう言いうのが決まり文句みたいなもんだ。

 だってほら、その証拠に「線香花火ってそういうものでしょ」とか言いながら浴衣姿の彼女はクスリと笑うんだから。

 だからそういうことを言ったんだ。

 実際、郷愁(ノスタルジー)をそれに覚えているのだろうかという疑問はあるものの、これが夏の定番だということには異論はなくて、だからこうして恋人二人っきりの場所でもムード作りに使われる。

 それが途方もなく寂しくて、口を開くこともできずにいると、結局はノスタルジーに浸っているようなしんみりとした風情の中にいる。

「落とさないように頑張りたいね」

 かつてがそうであったと聞いて、それを知りたいと僕は思う。

「頑張ったら落ちないようなのは、もうないわよ」

 けれど彼女はロマンを演出しつつもどこか現実的で、ムードを守りながらも、常識的な答えを出す。

 挑戦を楽しみに線香花火というコンテンツを選ぶ者なんてもういない。

 そう言われているようで悲しかった。

「残念だよ」

 そう僕が言うと、彼女はごく自然に「そう?」と疑問気な声を返してから、少し考えてまた別のニュアンスでまた「そう」と言った。

「そうね。決まってしまうのも空しいものね」と言いながらも、彼女は笑顔で、その空しさすらも楽しんでいるように見えた。

「風も、もともと吹かないしね」

 夕凪は夏の季語だったという。けれどそれも言葉だけが残る。

 いや、まだ夕刻に陸風と海風が釣り合って風が凪いでいる浜辺があるのかもしれないけど、僕らはそれを実感するには遠すぎる場所にいて、こうしてその語感からの風情を真似事で演じるばかりだ。

「じゃあ、風を吹かしてみる?」

 その声と共に彼女姿を映したアバターはパタパタとうちわを仰ぐ。

 うちわの面積的にありえない風が、室内の空調装置から送られてくる。

 僕が投影しているヴィジョンにも風の影響は出るけれど、落ちないタイプのコンテンツを選んだ僕の線香花火は、風に揺られる姿を映しつつも落ちる気配を見せない。

 ただ髪の毛が目に入ったので、僕は風に手をかざしつつ言った。

「やめろよ」

 彼女はそれを聞くとクスクスと笑い、「ごめんごめん」と言いつつ3Dヴィジョンの外に手を伸ばして、こちらへの送風指示をストップさせた。

 そうとは分かっていても、それはとても自然な動きで、かつての恋人たちもこういう風にじゃれたのかなと思えた。

 もう、その頃を覚えている人もいない。

 それでも、文献と物品とサンプルデータばかりのかつての習俗に、勝手に故郷を思い浮かべつつ、僕らはこうしてまた次の世代へと恋と文化を継いで行くのだろう。




 変にひねらずに、素直に書けたかなと思ってます。


---------------------------------


390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/18(日) 07:23:42.92 ID:2+dlzNWy0

もう少し、いくつかお題下さい

392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/18(日) 08:44:00.03 ID:Q25xs2RAO

>>390

線香花火

399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/19(月) 00:55:01.78 ID:Oit7IsLn0

>>391-392

把握しました


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ